・他人の世話を焼くことが自分の存在意義みたいな人。おせっかいだったり余計なお世話になったりもする。
・「そうしないと居場所がない」みたいなイメージを持っている。そのためには困っている人が必要になる。
相手の困り事が本当に解決してしまうと役割を失ってしまうため、無意識に避ける傾向がある。世話を焼くと言っても根本的な問題の解決ではなく、表面的なものが多い。単に踏み込めない性格のこともあるが。
・アダルトチルドレンは本来は自覚用語であり、性格判断でも病名でもない。「今の自分の対人関係の変な癖」と「それが身につくに至った家庭環境」の話であり、まぁ未来はこれからです。
アダルトチルドレンの分類におけるケアテイカー
・アダルトチルドレンのタイプであるケアテイカー、リトルナース、イネイブラー、プラケーターは、同一視されていたり、説明内容が混ざっていることが多い。分類自体が複数ある。
・ケアテイカーはASK(特定非営利活動法人アルコール薬物問題全国市民協会)によるアダルトチルドレンの5タイプの一つ。
・クリッツバーグのアダルトチルドレンの6タイプには、ケアテイカーはない。
クリッツバーグの6タイプの内、イネイブラーとプラケーターを一つにしたものがケアテイカーとされる。それ以外はASKとクリッツバーグは同じ。ヒーロー(期待に応える)、スケープゴート(生贄)、ロストワン(いない子)、クラウン(道化)。
ただし、元からアダルトチルドレンのタイプは「1つに留まらない」と言われている。
一口にケアテイカーと言ってもプラケーターに傾いていたり、イネイブラーに傾いていたりもあるだろう。
・リトルナースはケアテイカーと同義とされるが、出典がこちらでは不明[efn_note] アダルトチルドレンのタイプの内、リトルナースとプリンス/プリンセスの提唱者が確認できない。 [/efn_note]。
ケアテイカー/リトルナース
・概要としては、自分のやりたいことを我慢してまで他人の世話を焼くタイプの性格。
・アダルトチルドレンのほぼ全てに共通するが、機能不全家族の崩壊を防ごうとして立ち回ってきた果てに染み付いた性格であることが多い。
このため対人面の問題に対して、表面的な予防や阻止に素早く動くが、本質的/長期的には逆効果になることがある。
・クラウディア・ブラックによれば機能不全家族には以下の3つの暗黙のルールがある。
- 話すな:問題について話し合うな
- 感じるな:感情を素直に表すな
- 信頼するな:人を信じてもろくなことはない
このためアダルトチルドレン全般として人間不信気味だが人付き合いとしては気が利いて我慢強いみたいな性格にはなりやすい。
ケアテイカーの場合は人間不信気味だが、他人に必要とされたくもある。このため表面的なやり取りと解決に終止しても不思議はない。
ケアテイカーの特徴
・ケアテイカーは家族の慰め役。世話役。
一見すると、困っている人を助けようとする。
・先に言ってしまうが、「本当に助けが必要なのはケアテイカー自身」だとされている。
他にもメサイア・コンプレックスなんかもそうだが、この手の世話焼きには大体「人のことよりまず自分を救え」と言われている。
これは彼/彼女にとっては痛いところを突かれた感じになる。自分の問題から逃げるために他人に目を向けている面があるため。
・誰か困っている人がいて、それを助けないと自分の価値を感じられない。
自分の不安感が親切の動機であり、自分に価値があるという「安心」を得ようとする。この結果、過干渉に成りやすい。
・人を助けたがるが、見返りも求める。ただし金品ではなく感謝などの精神的な物が多い。他者に受け入れられたという社会的安心感などが目当てとなる。「人に必要とされたい」と言えばわかりやすいか。
ただしこれは本質的には「依存されたい」に近い。そうなれば捨てられないからね。相手が自立しないでずっと世話をさせてくれたらいいのに、などと思っているとされる。もちろん共依存にもなりやすい。
感謝が貰えないとケアテイカーの側が「これだけやってあげたのに!」と怒ることもあるそうな。
この点は後述するプラケーターにはあるが、イネイブラーにはないとされる。
ケアテイカーの原因
・他者に尽くすことで「居場所」を確保しようとする。この点に執着する。
一番の問題が「気遣いができないと自分に存在価値がない」と思いこんでいる点になる。
これは「自分の人生を生きるつもりがない」ことでもある。自立や独立は恐怖の対象だろう。他人が自立する=自分に依存しないことに対しても。
・こうなる経緯、家庭環境としては、まぁぶっちゃけて親がダメ人間だったからというのが大きい。
- 自分が周りの世話をしないと家が回らない
- 気を使わないと文句を言われる
- 「キレて暴れるような親」の機嫌を取る必要があった
など。そんなのの「相手の仕方」ばかりが上手になって、他の価値観や視点とかはよくわからない。
・社会に出てもこの「キャラ」は気が利いて受けが良いため「強化」されやすい。
このためケアテイカーの振る舞いから抜け出しにくい面がある。
アダルトチルドレン チェック
ケアテイカーかどうかの判断は結構簡単だろう。
ざっと言えば、
- 日頃家族の面倒を見ていた
- ダメ人間や自立してない人間に惹かれる
- 感謝されると強い喜びを感じる
- 付き合う相手に依存されることが多い
- ついおせっかいをしてしまう
- 頼まれたら断れない。断るとすごい罪悪感がある
などなど。
要するに、俗に言う「ダメ人間製造機」かどうか。そうなりそうな家庭環境だったかどうか。
まぁ「甘やかしてくれそうだから」と狙って依存してくるのもいるんで、どっちが悪いんだか知らんが。
・真面目な話、自分の親と同じ「性格の悪さ」を持っている人間に引っかかりやすい傾向はある。相性がいいため。
イネイブラーの特徴
・クリッツバーグの分類の一つ。ケアテイカーの側面の一つ。
・「世話役」。「偽親」とも。積極的な協力。親のように相手の世話を焼く、相手の心配をする。父親や母親の役割のみでなく、配偶者の代わりとなることもある。献身的ではある。プラケーターよりアクティブ。
・イネイブラー(enabler)は本来、他人の目的達成を可能にする、救済者などの意味がある。
ただし心理学では「助けるつもりで相手のためにならないことをする者」「身近な人の犯罪や悪癖を、黙認や放置する人」の意味で使われる言葉。
依存症の人間の天敵みたいな扱いがされる。例えばアルコール依存症の夫に対して「酒がなくて苦しんでいる」として、せっせと酒を与える妻などがイネイブラーの例に挙げられる。
・やりすぎにより相手をダメにする傾向がある。プラケーターよりもダメ人間製造機の面が強調されて説明されることが多い。同情心が強く、甘えてくる相手を突き放すことができない。
・動機は自分の問題から目をそらすためとも、相手の生殺与奪の権利を握っていることに快感を覚えるともされているが。「これでこの人は自分からは離れられない」とかもあるだろう。
本人にあまり自覚はなさそうだ、と個人的には思う。「なんかやっちゃう」とかそんな感じに見える。
・狙い通りに相手から依存されやすい。実質的には共依存関係となる。
プラケーターの特徴
・クリッツバーグの分類の一つ。ケアテイカーの側面の一つ。
・「慰め役」。愚痴聞き、仲裁、カウンセラー。
イネイブラーより保守的。周りの人間関係調和のための維持やガス抜き。
道理よりも相手をなだめることに方向が向いているため、悪いことを肯定したりもする。
・placateは「心をなだめて怒りを鎮める」みたいな意味がある。
消極的/受動的な、寄り添うような励まし。
落ち込んでいたり疲れている家族を慰めたり、気遣ったりする。
そういった一見すると無条件の優しさや愛情のようなものを、多くの人に向ける。
ただし感謝などの形で見返りは求める。ここはケアテイカーと共通するが、イネイブラーとは異なる。
・「パートナーの愚痴を吐く親」がプラケーターを作るとされている。
この時、子供に聞かせるべきでないようなことも言ってしまっているとされる。
これは一種の「取引」としての意味合いがある。自分が愚痴のゴミ捨て場になることと引き換えに「家庭」が機能すると。このためスケープゴート(生贄)みたいな面もある。
・「親に依存される」のは、子供としてはプレッシャーになる。この時点で親が子供に面倒を見られている機能不全家族でもある。
・仲裁をしようとして、母の愚痴を聞いたら父に提案しに行く、そこで父から母の愚痴を聞く、なんて無限ループを味わって割とズタボロになりやすい。
人間関係は大体そうだが、我慢しない馬鹿がいる時点で、別の誰かが我慢しないとその集団が崩壊する可能性は出てくる。
この「別の誰か」を子供にやらせて、親が自分の感情の制御や管理をサボっているような家庭。
・プラケーターは女性に多いとされている。特に「悲嘆に暮れる母親を慰める娘」の形で。
・他者から親切や愛情を向けられると戸惑い、時には逃げる。
尽くすことが存在意義で(一方通行)、立場が逆転すると居心地が悪い。これは自分勝手な奴の相手ばかりしてきた後遺症だろう。
・こちらも共依存に成りやすい。自分から離れてほしくないとの想いを持つこともある。相手が立ち直ったり自立することを、本心では望んでいない。
同様に相手側も依存することが多く、援助や協力といった提案で接点を作りたがる。特に親子関係で顕著で、孫の面倒を見てやろうか、など。
まぁ程度次第では実際助かるだろう。甘えすぎたと思ったらクールタイムを設ければいい。
メモ
・アダルトチルドレンは感情の振り幅が大きいため、それを避けるために例外が起きない規則正しい環境が良いとも言われている。
人間相手も同じことで、ヒステリーや愚痴を吐くマーライオン、熱狂的過剰反応者よりは落ち着いた人間に囲まれた方がいいだろう(熱狂的過剰反応者も親の「人を喜ばすことを強要する養育スタイル」でなるとか言われているため、クラウンに近いが。)。
一応言っておくと、アダルトチルドレンは特に必要もないのにとっさに嘘を付く所がある。こういう面を出さないためにも。AC以外でもこの特徴を持つのはあるし、周りが原因であることも多いが。
・アダルトチルドレンの分類は、クリッツバーグは6タイプ。ASKは5タイプ。
クラウディア・ブラックの分類では4タイプ。
- 責任を背負い込む者(リスポンシブル・チャイルド)
- 順応者(アジャスター)
- なだめ役(プラケーター)
- 行動化する子供(アクティング・アウト)
行動化する子供は、ASKでは「問題児」とルビを振っている。
アクティング・アウト自体は「意識したくない無意識の衝動・欲求・感情・葛藤」が意識されそうな時に、回避しようとする防衛反応を指す。
これは言葉ではなく「行動」として現れ、暴力、自傷、自殺企図が含まれる。
AC克服にかかる時間
・AC克服にかかる時間は意見が分かれる。
そもそもどうなったら「回復」やら「克服」なんだよって所からバラバラだったりする。
そもそもアダルトチルドレンは病名じゃなくて自覚用語だし。
・一例を紹介する程度はしておこうか。この論文では治ったと自認する人が出てくる。
「生きてれば何となく治る」との将来の見通しを立てられるようになった。自殺未遂から「結局死ねない」と強く思い、ここから「じゃあ生きるしかない」と転向したのだとか。
それまで漠然と誰かに何かされて死ぬんじゃないかと思っていたらしいが(虐待経験があった)、「死ねない」と感じてから考えが変わったと。
・また友人にカミングアウトしたり、似たような境遇の集まりに参加したりで「自分だけが悩んでいるわけじゃない」と実感できたことも大きかったようだ。理屈じゃなくて実感。
・アダルトチルドレンは対人面のクセとも言えるし、その根底には家庭から学んだ人間観や世界観がある。
これが問題に見えるが、実質的にはそれしかやり方を知らない世界観の「狭さ」、選択肢の「少なさ(というか1つしかない)」の方が問題になっていることが多い。
これが頭の硬さやしつこさの原因ともなり、ハンマー釘病に近い。
逆を言えば、世界というか「人間に対しての見識」を広げることは、一つの手段ではあるだろう。治す=消すのではなく、薄めるとか、別の部分を育てるとか、そんな感じ。
感情の巻き込まれ
・プラケーターやイネイブラーはとっさに手や口が出る。特に、周囲に何らかのネガティブな感情を振りまいている人間がいるとそうなるだろう。
・この状態は「感情の巻き込まれ」と呼ばれ、他者の感情で自分が不安になり、その不安から逃れようと他者を変えようとする行動が目立つ。これは一種の共感であり、その負の側面。
理由の一つとして自他の境界がしっかりしておらず、他人が自分に流れ込んでくる/広がってくるような状態だとされる。
中でも纏綿(てんめん)状態と言われる家族全員の境界性が曖昧な状態では、互いが過剰に反応しあい、あらゆる問題に容易に巻き込まれ、それぞれの自律性は阻害される。この点はケアテイカー系にかなり似ている。
・中でも過剰な感情表出を示す者(高EE)が家族にいる場合、統合失調症の再発率が上がる。
ケアテイカー系も同様に、この手の「賑やかな人」は本来は苦手だろう。これ系の人間の相手を特にしようとするが、それは感情に巻き込まれているから(自分の不安感の根源がそいつであり、その対処)であり、最も負担を掛けてくる人物かもしれない。
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