・クラウンは道化師の意味。その名の通り、おかしなことをやったり、ふざけたりして「暗い雰囲気」をなんとかしようとする。アダルトチルドレンにおいてはピエロ、マスコットもクラウンと同義。
・アダルトチルドレンのタイプの内の1つ。プラケーター(慰め役)の亜種だとされている。
表面的には可愛がられており、「ペット的な存在」だとされる。この時点でどうかと思うが。
本人もその扱いを表面上は歓迎しているように見える。
- 一見いい人であり、みんなが嫌がる仕事も引き受ける。
- 一方で責任があるものは嫌がり、他人に花を持たせるという形で回避する。
- 「大丈夫?」と聞かれるのが苦手(弱みを見せられない)。
- 真面目であるべき場面でもふざけたくなる。
動機は「自分が何かやらないとみんながどんどん不機嫌になっていく」との考えから。
空気が悪くなるのが怖い
・「暗い雰囲気恐怖症」とでも言えば早い。それに対して常に怯えている。かなり敏感に空気を読み取り、常に人の顔色をうかがい、険悪なムードを回避しようと努める。
・「おどけた仮面をかぶって不安を隠してきたタイプ」とも言われる。
例えばホラー映画とか一緒に見てればたまに見つかると思うが、怖さを紛らわせるためにふざけるタイプは実際にいる。
・クラウンは他のACタイプと比べて、過去と向き合う必要が少ないともされている。恐怖や不安の対象が「今感じている/予測している空気」であることから。
張り付いた笑顔と燃え尽き
・誰とでも笑顔で接するというか、まぁ笑顔が顔に張り付いているというか。このため浅い付き合いでは「愛想が良い」とされて気に入られることもある。
・「ポーカーフェイス」って言葉がある。一般には無表情を指すが、本来は感情を相手に読ませないことを意識した表情コントロール全般を意味する。つまり、本音を隠して笑顔で接することはポーカーフェイスの内に入る。
加えてクラウンは意識して空気を壊す。それが悪い空気なら。だから真剣な場面や真面目な人間、いくらか心裡を読める人間からはあんまり好かれないこともある。それ以外には「悩みなんてなさそうでいつでも明るい」と見えるが。
・偉そうな奴には下手に出る、かと思いきや家の中では態度がでかい内弁慶であるなど、矛盾した面を抱えているとされている。
一方で「会社で人気者だったが、ある日突然ふさぎ込んでそのまま休職」というパターンもあり得るとされる。これは感情労働による燃え尽きだろう。
このため突然の出社拒否や登校拒否はあり得るとされている。
・「笑顔の仮面」を貼り付けてて取れないため、感情表現はむしろ苦手だとされている。このため限界が来ても人に助けを求められないし、怒るべき時にも怒れない。
他人から見るとむしろ「悩みなんてなさそう」にも見えるし、クラウンはそれに応えようとして、そう振る舞う。
結果として「自分の気持がわからない」という状態にもなりやすい。感覚としては「問題も不満もないはずなのに生きるのが辛い」という形になる。
このためカウンセリングに来る頃にはボロボロになっていることも多いのだとか。
「ここに居るための条件」:クラウン
・クラウンに限らずアダルトチルドレン全体に言えるが、自尊心や自己評価は低い。怯えたり不安になりやすい。
そして「ここに居るための条件(と彼らが思い込んでいるもの)」を持っている。これを常に満たさねばならないと思っている。
・クラウンの場合はこれが「自分がうまくやらないと誰かを怒らせる(これは失敗するわけにはいかないという完璧主義にも通じる)」「自分が油断しているとみんなが不機嫌になってしまう」などを前提とした、これらへの対処(クラウン的行動)が「ここに居るための条件」になっている。
これらは幼少期の環境に基づいていることが多く、自分が周囲に気を使わないと雰囲気が悪くなる、DVや喧嘩になるなどがあり得た場合が多い。つまるところ家庭内が「緊張状態」の場合。
例えば「離婚の話」を両親がしないように、子供が「話題そらし」を積極的に行うなど。
・「無理をしなくていい」と言われた場合、安堵ではなく「バレた」と思うことも珍しくない。道化が仮面であると見抜かれ、自信がない「素の自分」を見られたと。このため酷くうろたえる。
極端な例としては、この様にバレたり、「空気の維持」に失敗したクラウンは、人間関係をリセットしたくなることもあると言う。
・これまたアダルトチルドレン全般に言えるが、特定の「キャラ」じゃないと生きていけない/愛されない/他の生き方を知らないという認識は持っている。
「素の自分は他者に受け入れられない」と思っている。これが自尊心の低さにつながっている。子供の時から「役割」を演じてきたため、自由に振る舞うとはどのようなことかがよくわからない。やったことがないから怖いと言ったほうが近いのか。
・「周囲の期待を汲み取り応える」という点ではヒーローにも似ている。あちらは成果、こちらは「キャラクター」だが。
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他人の感情との同化、巻き込まれ
・人間は元から他人の感情が伝染する余地がある。そのまま感情伝染と呼ばれ、共感の原始的な形であるとされる。
共感能力が強い場合、ネガティブ面として不安感を感じやすい。この状態では他者の反応に過敏になる傾向がある。この状態は、「他人の感情に巻き込まれているのではないか」と考えられている。
・感情的/情緒的巻き込まれとも呼ばれるが、これは他者との一体化/同一化をしている。相手のストレスや不安感を自分のものとして感じている。
これを解消しようとするが、そのためにはストレス源である相手がなんとかならなくてはならない。だから自己犠牲的に相手に尽くしたり思いやったりする。
アダルトチルドレンは全体的にこの傾向が見えるが、クラウンの場合は空気を先読みして不安になり、その原因となる他者を先手を打って笑わせようとしている状態。
適度なら空気読める人で済むんだが、大体の場合はやりすぎる。ストレスや不安が動機の場合はやりすぎの傾向が高い。
根本的には「自分のことのように感じる」のが原因であり(他にも無関係なのに当事者意識を持つ話が散見される)、相手との同一化/自他境界の弱さが原因の一つと言える。
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『人間失格』に見られるクラウンの心理
・太宰治の『人間失格』にこのようなものがある。
自分は隣人と、ほとんど会話が出来ません。何を、どう言ったらいいのか、わからないのです。
そこで考え出したのは、道化でした。
それは、自分の、人間に対する最後の求愛でした。自分は、人間を極度に恐れていながら、それでいて、人間を、どうしても思い切れなかったらしいのです。
そうして自分は、この道化の一線でわずかに人間につながる事が出来たのでした。
おもてでは、絶えず笑顔をつくりながらも、内心は必死の、それこそ千番に一番の兼ね合いとでもいうべき危機一髪の、油汗流してのサーヴィスでした。
人間失格
・アダルトチルドレンのクラウン(道化)とはかなり似ている。
人間とどう接したらいいかわからない、怖い、かといって諦めることもできず、「求愛」する。必死で。
「この道化の一線でわずかに人間につながる事が出来たのでした」というのも、アダルトチルドレンが持つ「こうしなければ自分に居場所はない」という信念に通じるものがある。
時に、一つしか答えを知らないことは、何もわからないよりも悪い結果を生む。だが人は、何もわからないことをこそ恐れ、一つの答えを唯一としてしがみつく。
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