出社拒否症:会社に行きたくない/行けない

  • 会社に行こうとすると体調が悪くなるよ
  • 泣いたり吐いたり失踪することもあるよ
  • ある時急に、会社の玄関をくぐろうとすると身体が動かなくなった例もあるよ

・出社拒否症は、何らかの原因により出勤することができない、あるいは困難になった状態を指す。
精神的症状としては意欲の低下、集中困難、不安や緊張感などがある。

出勤困難症、出社困難症などとも。

出社拒否症の自覚症状

・出社拒否症は適応障害(後述)にかなり近い。つまり「特定の状況や出来事」に関連してのみ症状(うつ状態)が出る。

出社拒否症はもちろん、「出社しよう」と思ったり、出勤時間になることが該当する。

例えば

  • 仕事に行きたくないと思って涙が出る
  • 出勤前に吐き気がする

など。タイミング+症状の形。

・身体的な症状としては、仕事前に動機が激しくなったり呼吸困難になるなど。

他には過敏性腸症候群(腹具合が悪い)があるが、元から10%ほどの人間がこれだとされているため、決め手にはならないだろう。

他にも吐き気や涙が出るなどがある。これらの症状はストレスが原因であることが多い。

・早めにストレスが溜まっていると気づいて対処するのが望ましいとされている。

これらの症状に気づかない、あるいは症状が出ないこともある。その時はいきなり「出社したくない」「会社に行けない」といった状態になる。

珍しい話でもないのだろう。ある時急に「仕事行けなくなった」といった形の話も多い。

精神的な症状では、急に限界が来る例は珍しくない。

例えば燃え尽き症候群にある。それまでモチベーションが高かったが、急にやる気を無くす。

昇進により出社拒否

・会社に行きたくない理由が「嫌なこと」、つまりわかりやすいネガティブなイベントがあったからとは限らない。

・生来気の弱い頑張り屋で、昇進して係長になった。思ったよりも成績が上がらなかった。次第にうつになり、全身の倦怠感と不眠の症状が出た。

そのうち出勤途中が頭痛がするようになった。会社に近づくほどに酷くなる。これが毎日続き、休息を取りながらじゃないと会社にたどり着けない。

検査を受けても異常なし。

ある日、いつもどおり出社し、そのまま行方不明になった。

4日後に1000km離れた別の県で発見される。海岸でぼーっとしていたらしい。

当人はそのことをよく覚えていない。

「会社に行かなくてはと思ったらいつもどおり頭痛が激しくなった。その時なんとなく遠くへ行ってみたくなった。そう思ったら頭痛も吐き気もなくなった」

「とにかく現実から逃げ出したかった」

その後1ヶ月休職すると症状はなくなった。だが本人と相談の上で倉庫管理に配置換えをすると、その後症状は出ていない。

https://kokoro.mhlw.go.jp/case/671/

会社の玄関に来ると体が動かない

・その人は妻に車で会社まで送ってもらっていた。ある日、会社の玄関まで来ると、体がびくともしなくなった。それ以来、玄関まではこれるが、玄関をくぐることが出来ず、自宅へ引き返す日々が続いた。

以前、会議の場で上司に激しく叱責されたことがある。それをきっかけに眠れない日々が続いていた。
こちらも検査では異常なし。ただし4~5年前からうつ病を発症していた。

半年ほど玄関前で硬直することが続き出社が出来ず、有給も使い果たして引きこもりの状態に。

・当人の仕事ぶりは「非常に優秀」だったとのこと。

・産業医とは違う医者に見てもらい、薬も改めて処方され、症状が緩和した頃にこうアドバイスされた。

「会社にはとにかく行くだけでもいいし、座っているだけでもいい。途中で早退してもいい。」

もう一つ、「いつもの3分の1くらいの力で働きなさい」とも。

初めはかなり渋っていたらしいが、やってみると次第に玄関前でも顔が強張らなくなってきた。

https://diamond.jp/articles/-/8316

メランコリー親和型性格

・この2例はどちらも元々の性格が生真面目で、責任感が強い。知ってる人は知っているが、これはうつ病になりやすいメランコリー親和型性格と呼ばれているものに該当する。

詳しく言うと、

 ・35から50歳ごろに多い
 ・仕事熱心
 ・他人のために尽くす
 ・規則を重んじる
 ・真面目
 ・几帳面

など。ひっくるめると「燃え尽きやすい」+「細かい」性格と言っても過言ではないだろう。

逆にこれらの要素が全くないと反社会的と言ってもいいくらいになるので、まぁ加減の話だが。だからこそ「やればやるほどいいはずだ」という狂信的努力家は、やっぱり燃え尽きやすくはある。

・ただし今回は、症状が出る場面がかなり限定的になっている。「会社に行こうと思ったらこうなる」という形で。このような場合、うつ病というよりも適応障害と呼ばれることが多い。

適応障害は「ストレスで悪化し、そのストレスから離れると改善する」。つまり「会社がストレスだから調子が悪くなる」。

前述の例の「なんとなく遠くへ行ってみたくなった。そう思ったら頭痛も吐き気もなくなった」というのはまさしくこれだろう。

職場不適応症

・出社拒否症は国際分類では適応障害の一種だとされる。厳密に言えば職場不適応症という病に該当するが、日本特有の疾患概念ともされる。

・環境や環境の変化に個人の適応が上手く行かず、日常生活に障害が生じた状態を指す。

『アメリカ精神医学診断と統計のためのマニュアル(DSM-Ⅳ)』では「仕事の停滞を伴う適応障害」。

『国際疾病分類(ICD-10)』では適応障害の範囲に入るとされる。

・「環境の変化への対応」だが、これはリストラもそうだが「昇進」も入る。
ポジティブだと世間に評されるものがストレスというのは珍しくない。マリッジブルーもそうだし、休日にやることがないと自分が無価値に感じられてくる人もいる。


・職場不適応症の具体例(重症例)として以下の話がある。

当人の性格や職場環境としては以下。

  • 性格は真面目、努力家、融通がきかない
  • 昇進したから、期待に応えようと努力した
  • 今までとは別の、初めての仕事だった
  • プレッシャーを感じる仕事内容
  • 他の部署との対応や調整が複数同時に起きていた
  • もっと気を楽にして仕事するよう上司に助言されたが「性分としてできない」
  • 休日出勤をして頑張るが思うように行かない。

症状としては、こうなった。

  • 不眠が続き、食欲がなくなり、会社にいるのに仕事が手につかなくなってきた
  • 本社ビルを見ると動機が激しくなり、冷や汗が流れ出した
  • 前に進むとうすると恐怖で足がすくむ
  • 一週間後には出勤できなくなった
  • 妻に付き添われて精神科医に受診。うつ病と診断されるが、3ヶ月経っても出勤できないまま

参照:https://kokoro.mhlw.go.jp/case/704/

話ではうつ病と診断されたが、これは実際には職場不適応症だとされている。

紛らわしい話だが、適応障害もまた「うつ状態」である。逆を言えば、うつ状態だからといってうつ病とは限らない。

・これは重症例であり、薬物療法の後にカウンセリングを経て、復職したそうな。

ストレスは当人の考え方や価値観、性格によっても作られる。環境そのものではなく考え方や価値観が病因であることもあるため、それに当人が気づく必要はある。じゃないと再発するだろう。

この例では当人が過剰に自己批判的で、すぐ自分が悪いと思いこむ性格であったこと、会社人間であったこと(他に価値基準がない)、白黒思考であること(スプリッティング:認知の歪み)など、自分の性格への気付きによって整理できたという。

不調の理由

・出社拒否症も真面目な完璧主義が多いとされる。
「立派に仕事をしなくてはならない」が、「立派に仕事ができてない」ため、苦しむ。このジレンマがストレスを生む。

・しっかりやろうとすればするほど、不安感が強くなる。ビッグファイブという性格分析の「神経症的傾向(ネガティブへの反応性)」がまさにこれで、強ければネガティブな予測が強くそれに対処しようとする。結果、仕事の精度は高いが、うつ病にもなりやすい。

反対に神経症的傾向が低すぎると、トラブルメーカーになる。ストレスには強いがリスクを軽視するため、事故や事件を起こしやすい。

まぁ「繊細すぎる人」と「繊細さが欠片もない人」との比較だからこういう構図にはなる。

同様に悲観主義は悪い予測を立て、それに対応しようとする傾向が見られる。要するに慎重で用心深い。真面目なところには向いているわけだ。

・真面目にやろうとすると不安感が強くなる。この不安感のおかげで真面目にやれる。

度が過ぎると常に気分が落ち込んで、不安を感じる余力すらなくなる。このため「会社に行きたくないが自分で理由がわからない」ことはあり得る。体だけが反応しているんじゃなくて、自分の気持がわからないほどに疲弊していると言える。

「しっかりやらなければならない」という気持ちが強いほど、同じだけ不安感も強くなる。会社に行かなくてはならないと思えば思うほど、身体の不調も強くなるだろう。

・余談となるが、「やる前のやる気」が出ないのはこれが理由なことが多い。

さっさと手を動かせばその内終わるものに手を付けられず、かといって気にはし続けるかのようなことは多くに共通する話であって。

出社拒否症ならぬ「着手拒否症」とでも言えようか。これが目立つのが完璧主義で、「完璧にできないからやらない」となる。部屋汚いとか。どうも厳密には「完璧じゃないならやってはいけない」あるいは今回同様にもう「できない」って感じだが。

つまるところ、「しっかりやろう」とするのが裏目に出る。それが過度なら緊張を生み、硬直させる。先延ばしもこの緊張感から来ることがある。

メモ

・「会社に行きたくない」という気持ちとセットで検索されるキーワードには、なんとなく会社に行きたくない、死ぬほど会社に行きたくない、朝会社に行きたくない、どうしても会社に行きたくない、会社に行きたくないが理由がわからない、などがある。

もちろん「嫌なことがあったから」というケースもあるが、特定のタイミングや理由不明で異様に強く会社に行きたくないと思うことも多いようだ。

・今回の話は、ヴィクトール・フランクルの逆説志向がかなり当てはまるな。構造がかなり似ている。

例えば書痙。字を綺麗に書こうとすると手が強張りまともにかけない。これを「俺の書き殴りを見ろ」みたいな下手くそな字を見せつけてやんよってノリで書くよう指導したらとっとと治ったなんて話がある。で、やっぱり「人前で綺麗な字を書きたい」と思いすぎだったようだ。

・似たような話で発汗恐怖の例もある。汗っかきで「人前で汗をかいたらどうしよう」と不安に思うあまり、想像しただけで汗が吹き出る。

これまた「今度は人前でどれだけ汗をかけるか見せてやろうと挑戦してみて下さい」なんつってたら治ったという。

素直に信じた患者は毎度「発汗の新記録」に挑戦してみた。結果、4年続いた発汗恐怖が4週間で治ったそうな。

緊張を伴ってしっかりやろうとして裏目に出る
・緊張は適度なら良いが、過度なら実力が発揮できなくなる。ここまでは珍しくない話だが、その緊張をどう和らげるかにおいての、珍しい話。 不安と恐怖 ・不安と恐怖は明確に分けられる。具体的な対象がないのが「不安...

・これらも「緊張」が身体的症状に現れている。だがそもそもその「緊張」は「しっかりしたいから」発生したという皮肉な形となっている。

このような状態を「過度の自己反省」や「過度の自己観察」と呼ぶ。この状態になると以上のような「逆説」の状態になる。

・ちな、全くの正反対に「家に帰りたくない」という帰宅拒否症もある。こっちはこっちでそこそこいる。

出社拒否症/出勤困難症チェックはあるか

・ないね。まぁ正式な病名じゃないからな。職場不適応症が一番正式な呼び方だが、これすら住友病院によれば「日本特有の疾患概念」とされている。まぁどこかの病院がその内作るでしょう。

住友病院の職場不適応症の検査では、ロールシャッハ・テスト(インクの染みを見て何を連想するかなど)、WAISⅢ(発達知能検査)、脳波測定(職場不適応症とうつ病の区別のため)をするとしている。

・出社拒否症は国際分類としては適応障害の一種に数えられているため、そちらの切り口でわかるだろう。質問の中に「会社や学校に行きたくない」というのがあるし。

適応障害チェック (適応障害テスト)

・もっと単純に、会社に行こうとする時「だけ」症状が出るなら大分怪しいとも言えるが。このように特定のストレスに触れる/意識する時だけ症状が出るのは適応障害の症状。
ただし、出社拒否症と呼ばれる中には日常生活が全部うまくいかなくなるタイプも確認されている。

過剰適応の対象

・適応しすぎて自分がないような状態を過剰適応、さらに悪化して自分を犠牲にしてでも適応しようとするのを自己破壊的同調と呼ぶ。

出社拒否症の内、「きっかけが思い当たらない」というタイプは、過剰適応/自己破壊的同調の果てに燃え尽きたのかもしれない。

人に合わせすぎる心理:過剰適応/自己破壊的同調について
過剰適応とは 一言で言えば「自分を犠牲にして周りに合わせる/期待に応えようとする心理」。無理をしてでも周りに合わせすぎること。周囲の評判は良いが、当人は辛いという形になりやすい。 研究においての過剰適応の定義はまとまってお...

・「適応の異常」は2種類あるともされる。一つは「適応できない」もう一つは「適応しすぎ」。

適応障害や今回の出社拒否症などは一見すると「適応できない」という状態だ。しかしそこに至るまでのエピソードを見ると、それ以前は「適応しすぎ」の状態が長く続いていることが多い。
決め手となったトリガーはある場合でも、前段階として既に緊張やストレスが身近な状況が続いていることはある。

ちなみに仕事関係での過剰適応の対象は「課題・業務」か、上司・同僚・部下などの「人」の2タイプがあるとされる。後者は例えばイジメてくる相手と良好な関係を築こうとするなど。

・別の説では「所属する組織への過剰な自我の一体化(同一化)」がある。これは頑張りすぎの理由となるだろう。対象を喪失するとうつ、不安、恐怖感に襲われる。
このタイプ(要するに会社人間)は一見すると一人前の振る舞いをするが、過剰適応しているからそう見えるだけだとされる。実際には自我が未熟なため、一体化の対象がないと不安定となる。

出社拒否症の対応

・誰かがうつや出社拒否症になった時、周囲の人間は「自分が原因の一端ではないか」と思いやすい所がある。中にはその考えから逃れるために仮病だと決めつけたり、本人の心の弱さが問題だとしたりはある。この場面で根性論を謳うタイプは、客観的に見て「犯人」あるいは「共犯者」であることも多い。

兎に角、冷静な対応をしやすい案件だとは言い難い。

・出勤は従業員の基本的な義務とされており、原則としては出社拒否は許容されない。ただし出社拒否の理由に応じた対応が、会社には求められるとされている。

例えば「体調不良」を理由として仕事を休みたいとの申し出に対しては、会社は原則として応じる義務がある。休みを遅らせる場合は安全配慮義務違反に該当する可能性もある。

今回の場合、出社拒否症は適応障害の一種だと国際分類でされており、病気である。このため病気を理由とした出社拒否と考えられる。

企業側の正しい対応としては、診断書で休職の必要を確認した上で、それを命じるという形だとされる。理由が不合理な場合は解雇も検討できる。

・一方で、トラウマとなるようなきっかけがある場合の出社拒否症は、パワハラや職場環境の問題を理由とする出社拒否とも解釈できる。
この場合、会社はハラスメントの有無を調査する義務がある。事実だった場合は加害者への懲戒処分など、再発防止策を何かしら行うことが求められる。仮にハラスがなかった場合は出社拒否は認められない。

参照:https://news.yahoo.co.jp/articles/a8984569f7de4e2c42da77cdcc6d384625c4df7d

出社拒否症の治療

・病院での診察では、他の精神的な病の可能性を排除するための問診やテストをいくらかすることになる。例えば不眠、パニック症状がある場合にはうつ病などもまだ可能性が残る。

・適応障害の一種であるため、ストレッサー(ストレスの原因)を取り除くことが有効になる。多くは出世での立ち位置の変化や人間関係が多い。このため配置転換したらその後症状は出なかったという話がよくあるパターン。

・病院からの治療法としては、処方された薬の服薬、十分な休養、カウンセリングでの精神療法などが施される。

・焦って自分を追い込まないことも重要だとされるが、出社拒否症になりやすいタイプは大体自分を追い込むことで頑張ってきたタイプが多い。主観としては頑張ってきたというよりも必死だったという方が近いのかもしれない。

このためそのような価値観や認知(物事の見方や考え方)の修正も視野に入る。はっきり言ってしまえば認知の歪みであり、これの修正。認知は誰も彼もが何かしら歪んでるのでそんなに気にしなくていい。問題があったから治すってだけで。意見交換の時は注意が必要だけどね。

・多くの場合、自宅に引きこもるため、生活リズムが崩れやすい。就業を意識した生活リズムを整えることは、復帰には必要になる。

出社拒否症の診断書

・出社拒否症は正式な病名ではないので、「出社拒否症」と書いてある診断書は無理だろう。
書くなら適応障害と診断して、その方向となるだろうか。
一例としては、適応障害の診断として一ヶ月弱の自宅安静の指示をすることが多いとのこと。

適応障害自体が仕事や職場が原因なことが多い。治療のための会社での休職に診断書は必要になるため、手慣れている病院もあるようだ。当日発行などに対応しているところもある。

なお、復職可能な場合は復職可能の診断書を作ることもある。これは会社によって要不要が違う。

・どの道、医師が休職や作業量を減らすことが治療に有効であると診断したらの話だ。案外「思った通りの診断結果をしてくれない」とか言う患者が精神科の方面には多い。
診断書を貰うのが目的での診察は、まぁ気が早いだろう。普通に症状を見てもらい相談するつもりで病院に行きましょう。

参照:https://www.kokorotokarada-yokohama.com/service/stress.html

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