プロクルステスの寝台と社会規定型完璧主義

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プロクルステスの寝台

・プロクルステスはギリシア神話の強盗。名前の意味は「伸ばす人」。名前でネタバレやめろよ。

強盗と言うよりはサイコキラー。

旅人に「休ませてやろう」と声をかけ、寝台つまりベッドに寝かせる。旅人の身体がベッドからはみ出たら切り落とし、ベッドより小さければ無理やり引き伸ばして殺していた。

実はベッドは可変式で(2つ有ったとされることも)、絶対にサイズが合うことはなかった。プロクルステスは遠目から旅人を見てベッドの長さを調整し、その後声をかけていた。

その後テセウスに同じ目に合わされて退治される。

逸話から派生した概念として

・この逸話から「プロクルステスの寝台」という言葉には「無理やり基準に一致させる」という意味で使われるようになった。

社会規定型完璧主義(SPP: socially prescribed perfectionism)

・完璧主義は3種類に分類されることがある。自己志向型、社会規定型、他者志向型。

自己志向型は自らの高い目標を叶えようとする。

社会規定型は自身が完璧であることが社会への貢献であるとする。

他者志向型は他者に対して自分が望む完璧を求める。ダークトライアド(マキャヴェリズム、ナルシシズム、サイコパス)である傾向が高いとされる。

この内、社会規定型は現代社会で最も多い。

ミレニアル世代の完璧主義者

・ミレニアル世代a)(1980年代以降の生まれで2000年代に成人を迎える世代。この場合ミレニア「ム」ではないが、別にどっちでもいいようだ。)には完璧主義者が増加傾向にあることがわかっている。

1980年代から2016年までの間、米英とカナダで調査をした所、自己志向型が10%、社会規定型が33%、他者志向型は16%の上昇が見られた。これと同時にうつ病や不安障害も増加傾向にあるとのこと。参照

競争主義やSNS等で「見せたい所しか見せない」ことによる結果的なプレッシャーの掛け合いなどが理由に挙げられている。個人個人が思い浮かべる「平均値」のイメージがどんどん釣り上がっていってる。

特に社会規定型が多いのは、「こうであるべきだ」「こうでなきゃいけない」と言ったわかりやすい価値観やゴールを「できて当たり前」として幼少期から設定されてきたせいだと思われる。自分で考える暇もなく。指示待ち症候群やらなんやらもこの辺りだと個人的には思う。

また、これら「平均値」のイメージに対しての異様に強い「そのとおりでなくてはならない」という強迫観念は、義務自己などが理由とされることがある。

義務自己

義務自己はできて当たり前、できてなきゃいけない自分。特に振る舞い。主に性格的な設定が多く見られる。優しい、公正、平等など。もちろん個人の価値観であり、程度の違いなどもある。どうも「躾け」に属するようなものが多いような気がするが。

義務自己の形成には子供の失敗に対して罰を与える親という「予防的態度」と関わりが深いことが挙げられている。

例えば3歳くらいの子供がいたとして、部屋中に灯油をぶちまけた上でライターいじくって遊んでたとするだろう。

親は血相変えて止めさせるよね。トラウマになるレベルでこっぴどく叱るかもしれない。

なんのためにそこまでやるのか、といえば、まぁ焼け死ぬ可能性があるからだ。この部分が「予防」。取り返しがつかないような「最悪」を防ぐために、その前の段階でそれを二度とやらないようにきつく叱るかのような。

実際親の目を盗んで火遊びした挙げ句に火事にする子供がいたため、今のライターやらチャッカマンやらはスイッチ硬いわけだよ。昔はもっと軽かったね。おかげで今度は年寄りが線香に火をつけられなくなっちゃってるが。ままならんね。

大きな事にならないために、小さな事でこっぴどく怒られるという経験。これはこのまま些細なことでも完璧でなければ「不安」になるという社会規定型の完璧主義に近いだろう。

そして実際には経験していない「失敗への恐怖」は未知故に膨れ上がり、とても恐ろしい「絶対に避けなくてはならないこと」に変わる。

強迫観念とプロクルステスの寝台

この例えで言えば、自己志向型は「理想」と言う名のでかいベッドを用意して自分から伸びようとする。

他者志向型は他人を寝かせて切り落とすか引き伸ばすかしようとする。プロクルステスそのものだ。

社会規定型の完璧主義だけが、「普通」と言う大きさの寝台と、自らそれに合わせようと引き伸ばすか切り落とす強迫観念が揃っている。

自分から枠に嵌ろうとすることも時には必要だろうが、そうでもない時にもそうしなきゃいけないと思うのは問題だろう。

完璧主義のみに非ず

・認知バイアスや認知の歪みは殆どがこの構図に通じる。知ってること、望んでること、イメージに当てはめようと引き伸ばすか切り落とすか。

ベッド自体は大抵の場合は常にある。例えば、

『こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。』

この文字列が文章として読めるのは、読んだ者が「自分の知ってる日本語」というベッドに押し込んだからだ。何のことかわからなければ、一文字一文字音読してみると良い。

より一般的な言葉を選べば、自他を測る「物差し」の話。これは無意識レベルなので、修正するのは認知の後となる。

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脚注

脚注
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