習慣化の失敗の原因から改善点まで

・目標達成と習慣化とは結構違うのだが、混同されやすい。目標達成のノリで習慣化を試みるとコケやすくなる。

・習慣化の目標としては、日常の一部とすること。決まったタイミングで決まった行動を取る、という条件反射の作成となる。

簡単にするつもりがない

・人の脳みそは野生が残っているため、いつもと違うことは、ただそれだけの理由で警戒し、避けようとすることがある。

「やろうと思えばできるはずだ」と思ったことがそうでもないのはこれが理由であり、実際の行動の難易度に加えて脳みそが邪魔をしている。

逆に脳みそがそれに慣れることが習慣化の一つの目的となる。このために手始めとしては「やるべきこと」を無味無臭に限りなく近づけることが望ましい。つまりは、抵抗感をなるべく感じないレベルに。

「繰り返せること」が肝要となる。だが習慣化の計画は、そんなこと欠片も考えてないものとなりやすい。

・人が自己目的的な習慣化にしくじりやすいのは、楽にするつもりがない点が挙げられる。自分に対しての期待が高く、それが理由でインフラ整備をしていない。

これらは一見すると自惚れだが、恐らくはそうではなく「仕事」をするつもりの気構えなのが原因だろう。

プラスの表現をすれば「必要なことをやるつもりでいる」あるいは「頑張るつもりでいる」のだが、その分楽に手軽にしようという考えは思いつかなくなってくる。
「ノルマ達成が目標」になっているのが良い証拠だ。継続を通して慣れたり、長い期間を通して成長したりが目的とするべき場面で。

習慣化がだいたい失敗する要素

・習慣化の失敗の原因は、大きく分けて3つあるとされることが多い。

  1. 大きな変化をしようとする
  2. 何でも自力でやろうとする
  3. すぐに成果を求めたがる

この原因3つを盛り込むと、大体出来上がる行動計画が、

  • 極端にでかい目標
  • 早期達成が目的のためノルマが異常に多い
  • ゴールに繋がっているのかが怪しい道筋
  • 全部自発的、意識的、能動的に初めなくてはならない

みたいな感じになる。特に「何でも自力でやろうとする」のは、言い方を変えれば勉強しない/調べないことでもあるし、全部気合と根性で済ますつもりとも言える。総じてものすごくコスパが悪い計画となる。

総じて計画というよりも「頑張ろう」ってだけである。

・一方で習慣化の最大のコツは「続けるためにハードルを下げる」である。このための要素が全く含まれていない。どちらかといえば「日を追う毎に嫌になってくる」ための計画に見える。

もっと簡単に言ってしまえば、計画段階でだいぶ「ノリと勢いに頼っている」。次の日にやる自分にはそんなもんはない。初めから挫折か苦行かの二択になる。

この上で達成できちゃうのが時々いたりして。それは根性論的世界観を強化し、なおさら無茶振りするようにもなるのだが。
是非は置いといても、これは習慣化が上手いのではなく、当人が気合と根性で頑張ったってだけで、方法論としては汎用性が低い。

・世間一般では、深く考えない限りは「やる気があるのは良いこと」だとしがちだが、「やりすぎによる自爆」は特に自主的な分野において元から多い。オーバーワークによる自爆や、道を間違えたまま戻ってこないなど。

・習慣化の目標を持つ時点で、その達成により得られるものには「実需」がある。この時点で人は、焦る理由自体は大体持っている。

あるいはよりよい未来を思い描き希望を持つことは、人を浮つかせる。まぁ大体は結構なことではあるのだが、その分すぐに過剰に動きたがる傾向は増す。計画能力や知恵というよりは、心理状態が悪さをする。

プライベートな目的だと失敗しやすい

・外発的な動機か内発的な動機かという話。人が動けるのはむしろ外発的な動機だ。

平日の朝と休日の朝と、同じ時間に起きることがどちらが難しいか。学校や会社など「外側」に起きるべき理由があるからこそ、相対的に平日は起きられている。だから休みの日になにかやろうとしてもやる気が出ないという話は多い。

よく引きこもりになると夜型になると言うが、人を避けたい心理もあるのだろうが、単純に朝起きる理由がないのも大きいだろう。

・習慣化、というのはどちらかといえばプライベートの属性を持つ。大体は自分にとって何らかの恵みを与える「良いこと」であり、自己都合であり、外部はそれを強制させるギミックとはならないことが多い。

つまり習慣化自体が多くの者にとって「苦手分野」であり、この上で背伸びして外発的動機の時以上に実力発揮できると思ってるのはもう、だいぶアレとなる。

2つの「実力」

・全力と継続力。計画段階に於いて、この2つを区別しなくてはならない。

習慣化を「その行動を日常の一部とすること」と定義するなら、当然必要なのは継続力となる。

より正確に言うなら計画にはサステナビリティ(持続可能性)があるべきだ、とした方がいいか。

・人は素で自分の実力に対して正直じゃないため、持久戦でメッキが剥がれる。

マラソンでの性能を推論する時に短距離走のスピード参照してるようなものだ。

習慣化、つまりは頻繁に毎回やることが前提にあるのだから、「継続」を最も重視しなくてはならない。

この上で、長期的な話になればなるほど推測の余地が増える=バイアスがかかりやすくなる。これはどうしようもないので、進みながらも定期的に見直す、という計画に対しての基本からは逃げられない。行動ではなく目標の修正が必要なケースも有る。

トリガーについて

・習慣化が達成された場合、特に意識することなく毎回手を付けることが出来る、という状態になる。

逆を言えばそれまではどうしても意識的に動かなくてはならない。

・人は自発的に動くのは苦手な方だ。なんらかの「きっかけ(行動トリガー)」があったほうが動きやすい。

よく採用されるトリガーは、まず時間。特定の時間でそれを行う。小学校からやらされてるから、大抵の人間は意識すればできる。

次に既に日常の一部となっている習慣の前後に追加すること。食前食後、入浴、就寝前や起床後など。

最後に場所。場所や雰囲気でスイッチが入る、という話は多い。図書館で勉強、だとか。安眠のためには寝室は寝るだけの場所にしろなんて話もある。

・トリガーの工夫はすべて「自発的に行動する」というコスパ最悪なことへの節約に近い。

今日の成果よりも明日またやることを優先する

・そうするべき理由としては2つある。

・1つ目はバーンアウト(燃え尽き)を避けるため。「なんとか今日はやり遂げたが、次から嫌になる」ことを避けるため。

集中、特に過集中である話だが、すごく集中できたが、その後ごっそりやる気が無くなったあるいは動けなくなったという話はある。

ポモドーロテクニックの開発者であるシリロは、心構えの一つとして「バーンアウトを避けること」と明言している。
特に今回のように走り続けることに於いては、「煙を出しながら走っている感覚」があってはならないだろう。

・2つ目は今のやる気を明日に回すため。

アーネスト ヘミングウェイは、まだやる気が残っているあいだに作業を終わり、続きをやりたい気持ちを「なんとか翌日まで我慢していた」という。

また、次に始める時にどうすればいいのかわかるタイミングで作業を終えるようにもしていた。

これはサステナビリティを意識した長期運用の考え方だと言える。その場限りの頑張りには頼らない。
今のやる気を有効利用するよりも、明日またしっかり手を付けれる方が良いという判断だろう。

ヘミングウェイ方式について
・作家であるアーネスト・ヘミングウェイが行っていたとされる仕事スタイル。 執筆や勉強など、長期に渡り数時間の作業をするなどに向いている。短期的なタスクでも可能ではある。 ・効果:学習性無力感や苦手...

・また、コピーライターであるユージン シュワルツの33分33秒のルールもかなりゆるい制限で、「席を離れてはいけない」「本来の目的以外のことをしてはいけない」以外に禁止令がない。これも着手の容易さと、継続性に貢献する。

シリロ、ヘミングウェイ、シュワルツ、3名とも継続することを意識している点は興味深い。「次から嫌になる」ことに警戒しているように見える。
「止まることの難しさ」への心構えと言っても良い。ポモドーロも33分33秒も、休憩は「作業を中断してでも取る」というルールになっている。

逆に我々の、張り切って苦行を初手で選ぶようなノリは一体なんなんだろな。逆だろうか。自惚れるのが普通で、彼らは現実を知り、その様な幻想から目覚めたのかもしれない。

習慣を通して成長を期待することの矛盾と解決

・一般的な習慣化計画は、習慣化+成長を狙ったものになっていることが多い。例えば勉強とか。筋トレとか。「変化」とするなら、ダイエットのための行動などもこれに含めることが出来る。

習慣としたいなら無理はしないほうが良い。成長をしたいなら(現状から変化することだから)無理をしたほうが良い。詰んでる。

・これは対象となる行動をコンフォートゾーン(居心地のいい領域)に取り込むのが習慣化で、ストレッチゾーン(頑張らないとできない領域)として背伸びするのが成長だからだ。

ただ、今までの自分にとってはちょっと意識して行う行動という意味では、対象の行動は、初めはストレッチゾーンにある。
コンフォートゾーンを拡大して取り込む、という形になるため、習慣化自体が成長とも言える。

・元より継続による成長/変化を狙うため、なおさら定着させなければならない。だが定着と成長はやはり温度差がある。

何より本気でベイビーステップなどの「教科書を開く」なんてレベルの目標でその日一日終わって良いのかといったら、気分的にはまぁ大体よかないわけで。

(巷で言われるベイビーステップの話。スキナー提唱のベイビーステップ/スモールステップの場合は着実に一歩ずつ進むためのカリキュラムの最小単位であり、意味が違う。)

2つのゴールを持つ

・ヘミングウェイリスペクトの肯定的ダブルバインドもどき。

・何も一つの行動に対して、狙いが一つじゃなきゃいけないわけでもない。「定着」と「成長」の2つを同時に狙えばいい。

第一に習慣化を意識して「着手すること」そのものをゴールとする。その後のことは問わない。

第二に成長を意識して規定の作業量/成果の達成をゴールとする。

これにより、第一のゴールである習慣化のための行動はほぼ果たせる。

ぶっちゃけて言えばこれをすれば、「元々の計画のままで」今から運用できる。既存のままでは「やりもしなかった」というリスクすらあるのだから、だいぶマシだろう。

第二のゴールは元から無理があることが多いから、実力次第だね。どの道「明日、嫌にならないように」を優先したほうが良い。

・一方で、着手すらせずに習慣化の目標が立ち消えるのは、いきなり「やり遂げること」を意識しているからなのが大きい。まずは毎回「始めること」を意識した方が着実だろう。

一度初めてしまえば今度は「やめるほうが難しく」なってくるため、まず着手を意識することは第二のゴールへの貢献ともなる。

・「着手(始めること)」と「量(成果を求める)」の2つの狙い。同時に狙うが、別々のもの。特に量は元から適量を間違えやすい(実現可能性や持続可能性よりも結果を求める)ため、計画頓挫のリスク回避としても別々にした方がいいだろう。

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