サイコパス特性を持つ者自体は多い。遺伝的な要因、脳的な要因も疑われている。
非犯罪的サイコパス、成功したサイコパス、向社会的サイコパスなどにカテゴライズされる者たちがいる。要は社会とある程度親和性があるサイコパス特性を持つ者。
ではなぜ、一部は犯罪を犯すのか。同じ特性を持って、犯罪を犯すものとそうでないものとの違いは。
■ジェームズ・ファロンの三脚スツール理論
サイコパスの研究をしており、自分の脳がサイコパスの特徴と一致することに気づいた科学者ジェームズ・ファロンの理論。この3つを満たすことでサイコパスが成り立つとした。
■1:脳機能の異常:前頭前野から扁桃体へ繋がる機能の低下
前頭前野は人を人たらしめる脳の最高中枢であると考えられている。反応抑制、計画実行能力、高度な動機づけ、社会的行動、報酬に基づく選択など。
サイコパスはドーパミン中毒であるともされる。特定の刺激で過剰に放出され、加えてそれを求める気持ちが強い。
ドーパミンを出すのはドーパミン神経系(A10神経系)だが、これは扁桃核(扁桃体)と前頭連合野(=前頭前野)を通っている。
扁桃体(=扁桃核)は情動(心理学では急激で一時的な感情)処理、記憶に関わる。
■2:MAO-A遺伝子などいくつかの遺伝要因
MAO-A遺伝子は「MAO-A(モノアミンオキシダーゼA/モノアミン酸化酵素)の産出を司る遺伝子」であり、MAO-Aそのものではないようだ。色々読んでみたが、この辺りの使われ方がごっちゃになっている。
結論だけ言うと、少ないと凶暴になる。MAO-Aそのものは「酵素」。
この遺伝子は短形・長形があり、短形型は攻撃性と関係し「戦士の遺伝子」とも呼ばれている。が、名前のせいで大げさに取られているとの指摘もある。似たような働きをするのは他にもあるのに、と。
1993年オランダで、とある家系の遺伝子が発表された。その家系の男性は、放火、性犯罪などの犯罪を犯すものが多かった。その家系はMAO-A遺伝子に異常があり、MAO-Aが機能していなかった。
MAOはAとBがあり、Aはノルアドレナリンとセロトニンのバランス調整、Bはドーパミンの調整を司る。調整と言っても酸化させるわけだが。酸化した神経伝達物質は機能を失い、排出される。
ジェームズ・ファロンによれば、セロトニンの過剰分泌と関係があるらしい。MAO-A遺伝子は母親から受け継がれ、胎児が子宮内にいる時に「セロトニン漬け」になるために、生まれた子供はセロトニン(不安・怒り・恐怖などに対して鎮静作用がある)に対して「鈍くなる」のだとか。
これが機能しないということは、攻撃的になっても不思議ではないだろう。
つまりサイコパス当人のMAO-A遺伝子ではなく、子宮に居た頃にセロトニン漬けになったかならないかの話になる。
この遺伝子は誰でも持っている。多いか少ないかの話。
「いくつかの遺伝要因」とか言われてるが、MAO-Aについてしか情報が見当たらない。
■3:幼少期の身体的、精神的虐待
ジェームズ・ファロンは、自身が上記のような特徴を持っており、家系に殺人者が7代に渡って居たこともカミングアウトしているわけだが、その上で自分が「そうではない」のは、彼が両親に愛情を持って育てられたからだ、としている。それでも双極性障害、強迫性障害、パニック発作などがあるらしい。
MAO-A遺伝子と絡めて一つ。1972年4月から翌年3月にかけて生まれた男子を対象に、ニュージーランドで研究が行われている。
MAO-Aの高活性群279名、低活性群163名にまず分け、反社会的行動と虐待経験を調べた。
高活性群では相関なし、低活性群では相関が見られた。つまりMAO-Aが低活性な「体質」の場合には、虐待されると高活性群と比べて高確率で反社会的になっていた。
虐待経験の有無を問わない場合、MAO-Aの活性の高低に関係は見られなかった。要はMAO-A活性の高低=グレるかどうかではないってこと。
逆を言えば、「虐待されたら反社会的になりやすい」という体質が存在する可能性があるということ。
■メモ
あんまり遺伝子の話したくないんだけどね。運命論・宿命論、つまりは自分や自分の人生に対してのレッテル貼りにつながりやすいし。
反社会的にならないからと言って、虐待されて平気なわけでもなし。既にされてしまって、もう大人になった人々もいるわけで。やはり自分で自分を癒すというのは必要なことなのだろう。
■credit
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E5%89%8D%E9%87%8E
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E6%A1%83%E4%BD%93