やることが多いと人がどうなるか
・焦燥。急ぐつもりで速さを上げ、結果雑になる。ケアレスミスが増える。クオリティが落ちる。
・逃避。変な悟りを開いてすべてを諦める。無気力になり、何もしない。状況からの逃避。
・硬直。すべてやらなくてはならないと思っているが、動けない。何も手につかない。
気のせい
・身も蓋もないが、「時間がない」という感覚が気のせいの可能性はある。結構高い。
状況に対しての悪さが、そのまま「やることが沢山ある」という誤解を生む。要するに全体が見えてないから「やることが沢山あるに違いない」と想像し、慌てる。
裏を返せばやること全体の可視性を上げることが、そのまま対策になる。実際にやることが多いとわかってから、改めて絶望しよう。
・もっと身も蓋もないこと言うと、「自分は他人より忙しい」と思ってる奴ほど動いてないってデータもある。 この時、主観としては「時間がない」となる。
社会学者のジョン・ロビンソンの研究によれば、多くのアメリカ人は週に60~64時間は働いていると思っていたが、実際には平均44.2時間だった。自称忙しい人ほど、この誤差がでかかったそうな。ロビンソンは他の国でも同様の結果になったと述べている。
・時間飢餓と呼ばれる概念がある。時間が足りないという飢餓感。この飢餓感が焦燥を生む。さらに「時間がない」と思わせる。結果バタバタ動いてなんにも終わらず実際に時間がないみたいな感じになるため、一種の予言の自己成就だな。
やることが多い原因
・欲張り。あれもやろう、これもやろう。優秀に見られたいのが動機の場合もある。
・断れない。タダ乗り野郎が仕事や責任を押し付けてくる。
・緊急中毒。やることが多いし時間もない状況を自分で作っている。それを切り抜けることの中毒。
・遅い。一つ一つをやるのが遅い。着手までが遅いことと、過剰達成(やりすぎ)で終わるのが遅いのがいる。
・安心。忙しいほど「自分には価値がある」と感じられ、安心する傾向を持つ者も居る。忙しい=充実しているというイメージを持っていることも。これらにより、隙間不安シンドロームや空白恐怖症は、自分からスケジュールをギチギチにする。
「状況」を整理したらどうか
・通常この手の悩みはやること書き出しましょう、優先順位をつけましょう、アイゼンハワーマトリクスとかいいよ、みたいな話になる。だいたいそれで落ち着くだろう。
そもそもこの状態は、状況が不明であることの錯乱に近い。つまり「何をやったら良いか」がわからない。やることが多すぎて、どれを選んでも間違いな気がしてくる。だから本来なら間に合ったのに着手が遅れることもある。
このため優先度や緊急度に従い解決することは道となる。緊急度に従えば「時間切れ」を防げるし、やることが片付く度に時間を稼げると思えるだろう。
「やること」の処理
・自分がやらんでも良いことはやるべき奴に任せる。ちゃんとお礼は言うように。
・まとめられるものはまとめる。タスクのジャンルが異なるものを消化しようとすると達成率が25%落ちるという話もある。まとめてこなせる物は1グループにする。
忙しいという気持ちが忙しさを生む
・人間は作業量が一定を超えると、生産性がガタ落ちすることが確認されている。
例えば週35時間の作業をこなす人の生産性が、週20時間の作業の人の半分しかない。この場合、週20時間作業の方が生産性が高いことになる。生産性の低下状態での作業は、対時間効果が相当悪い。「忙しいから休めない」のではなく、「休まないから忙しい」可能性はありえる。
ちなみに週30時間以上の労働で認知機能がマイナスに、60時間以上だと普段全く働いていない人と同じくらいに認知機能が落ちるそうな。
・ジョン・ロビンソン曰く、マルチタスク(複数同時作業やながら作業)が 多いほど、時間へのプレッシャーが増す。ただしこれは「割り込まれる」というケースの話で、決まった時間で予定通りに行動を切り替える(タスクシフト)ならば問題ないとされている。
これには「次の予定が決まっている」という安心感が得られるメリットも有る。その分専念できる。
やらないことを決める
・全部やろうとすれば誰だって時間が足りない。順番を変えるだけでもいくらか捗りはするが、「やらない」と決めることも重要になる。一見真面目なやるべきことでも、それ以上に終わらせるべきことの前ではやはり邪魔になる。
結局の所、決めたとおりに達成できないのは、決めたとおりに動いていないからと言うのが大きい。サボりもそうだが、無駄な勤勉さもあり得る。オーバーアチーブ(過剰達成)は、不安感から来ていることも多い。時間が足りないという焦燥や不安は、自分から余計なことをやって時間を潰すという逆説を発生させうる。
・「今はやらない」という判断はできたほうがいい。世間的に先延ばしは悪いこと、情けないこととされがちだが、戦略的な先延ばしは効率に貢献することもある。
「今からやること」を目に入れる
・やることがいくらあろうが、どうせ片付くのは1つずつだ。マルチタスクは「忙しい気分」を尚更高め、自分から余計なことを始めるようになるためよろしくないとされているし。
このため手をつける順番が見えてきたら、視界を広く持ち全部を常に意識する必要はなくなる(これは意識リソースを浪費する)。一つが片付くまで、そのために脳みそを使えばいい。
・ポモドーロテクニックを始めとした集中法は、殆どが1時間未満の比較的短いサイクルだ。 特に休憩の重要性が理由だが、時間を短くすることで「集中していい時間」を認識できるのも大きい。
逆を言えばやること多くて手がつかないのは「集中する=それ以外は見えない、または放置する」ことが怖いから。集中時間を決めることは、「それ以外のことを忘れていい時間」を設定している意味もある。だから集中できる。