やらないことリスト やらないことを決める

 時間があったはずなのに、タスクを消化しきれなかった場合。あるいはできたはずなのに目的を達成できなかった場合。

これは、ほとんどが「余計なことをやってたから」だ。計算が合っていても、その通りに動けなければ意味がない。

 「一見すると真っ当な余計なこと」が多いことが厄介だ。種類もかなり多く、どれもがそれなりに「やっておいた方がいい」と思わせる。

やらないことを決めることで、達成率は上がる

 「やらないこと」を考えることにより、自身の目的を別の角度から見ることができる。

自分の目的をよくわかっていないケースは多い。または自分が何やってるかがよくわかっていない。思いつきレベルの目的は、裏にもっと大きな意図がある場合が多い。根源的なものへの達成や解決。

「行動目標」を立てる時は、それが個人的なものであるほど勢いで決める傾向がある。目的や方針を熟知するより先にやることを決めてるので、非常に効率が悪かったり、意味がなかったりもある。

虫歯とプロスポーツ選手

問題。
アスリートと、普通の人と。どちらが虫歯が多いでしょうか。

ヒント。
調査対象のアスリートたちの内、94%が一日2回以上歯磨き、44%が定期的にデンタルフロスでケアしている。
一般人は、75%が一日2回以上の歯磨き、21%が定期的にデンタルフロスでケアしている。
加えてアスリートたちの殆どが定期的に歯医者に通っている。

正解は、「アスリートのほうが虫歯が多い」でした。
アスリートの49.1%が未治療の虫歯があり、大多数が初期の歯肉炎を患っている。

理由は簡単で、

競技中に飲食しているドリンクなどが原因だと見ています。というのも、前述のアンケートでは、アスリートの87%が習慣的にスポーツドリンクを飲み、59%がスナックバーを食べ、70%がゼリー飲料を摂取していることも判明しているからです。

https://gigazine.net/news/20190901-athlete-damage-teeth-energy-drinks/

まぁ彼らはカロリー=エネルギーだろうから、単純にシュガーレスに置き換えりゃいいって話でもないだろうが。後は激しい運動で口呼吸が多い=口内が乾燥することも理由ではないかという説もある。

・この話から「プラス行動だけ見てても、それ以外のマイナス行動がでかけりゃマイナスだ」との教訓を得ることができる。

何をやらないか考えることは、マイナス行動に気づくための重要な機会を作る。「やる気」だけではマイナス行動に対してノーマークな状態。

「やらないこと」を考える時は、時間を浮かせよう、集中しようなどが前提となりやすいが、「目標を達成するためにやらない方がいいこと」を考える視点も持ったほうが、成功率は上がる。

経営者や成功者、企業の「やらないこと」

ウォーレン・バフェットの25:5の法則

バフェットは投資の世界で有名な人。彼がある時、知人の達成計画についてレクチャーした話。

  • キャリアで達成したいことを25個書き出す
  • その中から5個、重要なものを選ぶ
  • 選んだ5個と、選ばなかった20個に分ける

その5つの目標達成の計画を話し合った後、残りの20個もそのようにする、と言った相手に彼は「だめだよ」と言った。

「間違っているよ。丸をつけなかったものは『絶対やらないリスト』に入れるべきだ。なんであれ、5つを達成するまでは、一切考えてはならない

以上の経緯から、この「やらないことの決め方」は25:5の法則とも呼ばれる。

 彼はビル・ゲイツにも「重要なことを選び、それ以外にはNOと答えることも大切だ」と教えことがあるとか。この言葉はビル・ゲイツ自身の言葉としても伝えられていることがある。

 25:5の法則をレクチャーした相手だが、ウォーレン・バフェットの自家用機のパイロットだったマイク・フリントだとされる。その後どうなったかはこちらでは不明。元から歴代大統領を乗せて飛んでたという話だが。

スティーブ・ジョブズの問い

 ジョブズの言葉として、以下が伝えられている。

なにをしないのかを決めるのは、なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。会社についてもそうだし、製品についてもそうだ。』

『集中力というのは、集中しなければいけないことに「イエス」と言うことだとみな思っている。

しかし、そうではないんだ。真の集中力というのは、他の多くの良いアイディアに対して「ノー」ということなんだ。

取捨選択は注意深く行わなければいけない。

わたしは、やらなかったことに対しても、達成したことと同じように誇りに思っている。イノベーションというのは、1000のことに「ノー」ということなんだ。』

またスタンフォード大学の卒業式での講演では、やらないことをリストアップすることを勧め、「自分が本当にしたいこと、それ以外のことは二の次で構わない」と語ったそうな。


 元々彼の気質がかなり「合理的」と言われている。
彼は毎朝、鏡の前で「今日が人生最後の日だとしたら、私は今日する予定のことをしたいと思うだろうか」と問うていた、というのは有名な話だろう。

裏を返せばこれは「今日やることが本当に重要なのか」「本当にやるべきことなのか」という問いだ。

「時間がない」という状況下であると、人は余計なものを削ぎ落とし、本当に必要なものにリソースを注ぐ傾向はある。ジョブズの問いは、自分が「やりたいこと」から「やるべきこと」を抽出するフィルタ機能を果たす。

 ジョブズ自身は服の仕立ての際に、その道具は何のためか、どのようにして使うのかなど質問してうるさかったエピソードもある。好奇心自体は高いように思えるが、実行に於いてはこのように「絞っている」面がある。

 ジョブズとゲイツが互いを意識しあっていたのは間違いない。この両者がNOと言うこと/やらないことを決めることの重要性を把握していたのは興味深い。

企業の経営方針

 経営者がそうなのだから、マイクロソフトもアップル(当時)もそうだったことは想像がつく。では他はどうかと言えば、やはり何に専念するか決める=やらないことを決めている企業はある。

例えば、顧客満足度No.1の米サウスウェスト航空(Southwest Airlines)はどんなにもうかっても「遠距離や国際線の運航はやらない」と決めている。

任天堂だって、潤沢なキャッシュを背景に多角化戦略も可能だが、「ゲームや遊びビジネス以外はやらない」と決めている。

1000円カットの理容チェーン、QBハウスだって、断固として「シャンプーはしない」方針を崩さない。

不況期に強い企業は「何かに集中する」前に、「何をやらないかを決めている」点が特徴だ。

https://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0908/11/news012.html

 ちなみにユニクロは野菜を取り扱おうとして1年半ほどで26億の赤字を出し、撤退している。その後に初めたのがユニクロと同じく服を扱うGUであり、これは現存している。

 それぞれ思惑はあったのだろうが、やらないことを決めることのメリットは2つ挙げられる。

  • 1:限りあるリソースの有効活用(当たり外れがある「やってみたいこと」よりも堅実な方へ振り分ける)
  • 2:自らの専門性を上げる(ブランド化も含める)

このためには無駄な丁寧さ、幅広さや、出来心での変な努力(的外れな方向への「やりすぎ」)などは取り除かなければならない。

 尚、今回は計画実行についてである。閃きや挑戦が重要な場面では、今回否定しているようなことはむしろ必要なこともある。動く時と考える時と、分けたほうがいいのだろう。

リソース集中の必要性について

 人のリソースは色々ある。金と時間はもちろん、やる気もそうだし、普段何を気にかけるかもアイデアが湧く湧かないに関わるのでコントロールはしたい所。

思うにウォーレン・バフェットからスティーブ・ジョブズまで、彼らの「やらないことを決める」というのは、純粋な行動管理ではなく、一種のマインドセットではないだろうか。

「それは考えない/気にしない」と予め決めることで、今やっていることに無意識レベルのリソースも割り振る。アイデアの「ハズレ」の数はこれで減らせる。思いつきは邪魔ではなく、追い風になる。


 企業の方針もそうだ。やるかやらないか決めてない「良さげだったらやる」スタイルだったとしたら、良さげに見える話が出るたびに調査、会議、研究、シミュレーションをやる必要が出てくる。後手後手に回るだろう。その手間を本業に注いだら、立ち位置はより確固としたものになるかもしれない。

競争社会を前提とするのなら、取り柄が一つもないなら埋没する。生き残るためには「取り柄を育てる」必要がある。「良さげだったらやる」のは損得勘定であり、同じものを見たライバルも同じ判断をして殺到する。結果レッドオーシャン、酸欠で心中。

 人はチャンスに弱い。魅力的なチャンスほど人が殺到することになるのでパイの奪い合いになる。大抵は労力に見合わない。ゴールドラッシュで一番儲かったのはスコップやツルハシ、ジーパン売ったやつだなんて話がある。

実際に一番儲かったのは鉄道会社だったそうだがいずれにせよ、金がより多く埋まってたのは鉱脈よりも、人の流れの中だったということだ。今うまいこと言った。

 要するに、誰もが飛びつくチャンスに自分も飛びつくのは損なことすらある。この上でいちいちチャンスなのかトラップなのか見極めるよりも、「それはやらないともう決めている」とした方が早いかも知れない。

 やらないと決めていることがある方が、専門性も高く見えるだろう。リソースが拡散している様を他者から見た場合、「何やってるかわからん」とはなる。リソースを集中させているなら○○に専念している、とわかりやすい。

プロに見えるか、真剣に見えるか、本気に見えるか。実力が同じだとしてもやってることに一貫性があるか、片手間の出来心でやってるように見えるか。信頼性もそうだが、期待度が違ってくる。


 もう一つ、こちらは抽象的な話となるが、例えば沸点に至るまでは水は沸騰しない。氷点下にならなければ凍らない。水蒸気と水と氷は、同じH2Oだが別物として我々は認知する。

こんな感じで、努力も練習もある一点を超えると急激に変化が現れる、ということはある。ある時急にできるようになることがある。いわゆる「世界が変わる」というやつ。

 一方で人の心が折れるのが、進捗や成果が見られないからが多い。これに対しては、すでに達成した者から見ると「後もうちょっとだったのに」ということも多い。

タネが発芽したらまず「根」が出るように、土の中での進捗はあり、そして結果が(芽が)出るのはそれよりも掛かる。複数の目標を少しずつ並行して、というスタイルでは最も辛い「芽が出ていない期間」を長く過ごすことになる。

 というわけでリソースを集中させないと、損をするかしんどいことになるかも知れない。最終的に全部やるつもりだったとしても。

25:5の法則から見る「やらないこと」の考え方

 やらないことを決めるのは、大抵2つの段階に分かれる。

第一段階は無駄を削る。これは比較的やりやすい。

第二段階は、未練があるがより優先するべきもののために一度諦めること。こちらは難しい。

 「やらないことを決める」ことにおいて、既存の提案されるようなアイデアは殆どが第一段階止まりであり、「無駄を削る」方面が強い。露骨にタスクの断捨離とか言ってるところもある。

これだけでは穴がある。これで出来上がるのは「やめたいことリスト」「やりたくないリスト」だ。

「やりたいが優先順位は相対的に低いもの」は野放しになる。「いつかやること」としていつまでも残る。ここまではいい。

 問題は、どうせいつかやることだからと、当人的には価値あることであるが「計画的には余計なこと」を始めることだ。この時点で関心も注意も拡散している。これで遅延するし、最悪全ての目標が、卵から孵る前に腐って死ぬ。

ウォーレンバフェットの教えが上手いのは、「やりたいこと」を書き出させてから5つを選び、残りを「やらないこと」にそのまま流用したことにあるだろう。

初めから「やらないことリスト」を作ろうと思ってできるものとは全く違う、未練があるが今は我慢するべき「やらないことリスト」がこれで出来上がる。というか、こうしないとまず出来ない。

この助言の真意は、「残りの20項目は、肝心の5つのゴール達成の妨げになる」ということであるわけです。

https://www.lifehacker.jp/2021/05/234081book_to_read-752.html

他の20の「やりたいこと」は、やり遂げると決めた5つにとって「障害である」ということ。25をやろうとするとリソースを取り合いカニバリゼーション(共食い)の状態になる。この20を塩漬けにできるかどうかの話。

 ウォーレンバフェットの方法は、実際のところ目標を一つも切り捨てていない。「今はやらないこと」としているだけだ。デリートではなくグレーアウト。カットではなくフィルタリング

やらないと決める決断力の話ではなく、どちらかと言えば「優先順位を決める」という話に近い。別に他の20は未来永劫諦めるってわけでもないので、先延ばしにできればいいだけとなる。


 長期的視野で見て、目的達成のための一貫性のある行動と、その日一日頑張るだけの行動とはやはり違うものだ。やらないことを決めていないと、ここがブレて、後者になる。

これは「真面目さ」のようなツラをする。あるいはこうした方が得だ、この方が効率がいいと嘯く。つまり完璧主義か効率主義の皮を被っている。このためまず間違いなく頑張った気分になる。忙しく、充実し、達成した気分になる。なんだったら周囲の人間も認めてくれるし尊敬してくれるかもしれないね。脱線してるのに。最悪だ。

別にやってはいけないというわけではないから、5つのために副産物的に他の20が進む程度は構わないだろう。

まぁ要するに、何か「これも●●のためになるから」とか言いながらやってる時ってのは大体脱線してるだろうねという話。それでも良いかも知れないし、そのせいで重要な目標はダメになるかも知れない。遅延は蓄積もする。


一日のタスクで考えても、やはり四方八方に同時に手を伸ばすというのはよろしくない。マルチタスクは100%悪いというわけでもないのだが、結局の所「終わらせてから、次に行く」というのが充実感としても、長期的なパフォーマンスとしても、よろしいのは間違いないだろう。

一定の区切り、例えばポモドーロ・テクニックでの25分以内にやること(=それ以外はやらない)、タイムブロッキング(時間割)による時間内で終わらせるべきこと(=それ以外はやらない)などなら気軽に始められるだろう。

プロジェクトとしてもタスクとしても結局の所、やらないことを決めることは「何にコミット(専念)するか決める」ことが要となる。

todoリストがゴミ溜めになってる人は、可能なら今は手を付けるつもりがないものはグレーアウトしたほうがいい。集中できるから。フィルタやフォルダ分けにすると「全体が見えない」ことが気になってよろしくないから、グレーアウトのほうが良いだろう。

全部やろうとしない

 さっきから言ってるが、「やらない」というより「今はやらない」という判断ができれば十分であり、むしろ本懐は「何にコミットするか」である。

目的は「予定や計画をやり遂げること」だ。その邪魔になるのが「それ以外のことをやってしまうこと」。言い方を変えれば、行動も時間的リソースも「拡散」すると間に合わない。

2つの目的があり、時間効率的にトータルでは掛け持ちした方がよくても、片方は予定に入っていないのなら、余計なもん混ぜて計画を遅延させたことになる。この場合の間違いは「一気に全部やろうとしているから」だ。

一気に全部やろうとすると、全部終わるのは最後の最後になる。当然だが。で、それはいつになる。今である必要があるのか。

例えば今日中にやらなきゃいけないタスクの最中に、一ヶ月後に締め切りのタスクの足しになることを初めたら、例え「ついで」でもリスクが大きい。それは時間や手間の「損得勘定」ではあるが、リソースの「運用」ではない。

 加えて人は、なんぞ閃いたりチャンスっぽいのが目の前を横切ったりすると、割と正気を失いやすい。「今やったほうが効率がいい」という発想にも弱い。しかし計画通りに物事が進むのが最も良いとするならば、降って湧いたささやかな機会を真顔で踏み潰す必要はある。

 ウォーレンバフェットが「NOと言える必要がある」と言うのも、このあたりのことだろう。彼は投資家だ。チャンスも、チャンスに見えるものも、一般人より機敏に察知するかも知れない。

しかし彼自身の投資スタイルは相当に堅実なものだ。要は安い時に買う。値が上がりそうな時に慌てて追いかけて買ったりはしない。必要がない限りは売却もしないという。

これらは「自分のペースを乱さない」「自分で判断する」ことを守っているように見える。彼は決して運の良いニワカの一発屋ではなく、「堅実さ」で日本円にして8兆だかの財を成した。相当に理性的なのかもしれない。

他人に対してもそうだが、自分自身に対してもNOと言えなくてはならないだろうな。


 ウォーレンバフェットはこの上で、毎日マクドナルドでハンバーガー食ってコーラ飲んでるらしい。年考えろとは思う。

ただ冗談抜きで、堅実タイプの成功者は「つまらないこだわり」を強く守っている印象はある。その分他が非常に合理的な傾向も。何らかのトレードが発生しているのだろうか。

重要な局面で「つまらないこだわり」が出ないように、日常のどうでもいい形でそれを「ガス抜き」しているのかもしれない。知らんけど。

何処までやるか

 人間は結構、真面目な方面ならルール破っていいと思ってる。日本人の病気としてよくある「始業時間は守るが終業時間は守らない」なんてのはわかり易い例だろう。なんだったら始業時間も30分前に来て当然だみたいに、まぁ守っちゃいないわけだ。

結果、真面目な方面での「やりすぎ」が多発し、リソースが浪費される。真面目は真面目で穀潰しな面がある。
一部では完璧主義は自分勝手だ、との言がある。「もういい」っつってんのにまだ拘るからとかそんな理由で。このような必要以上のこだわりは、やはり遅延の原因となる。

まぁその分いいの作ったりで、クリエイターとしてはやっぱり適正なのかもしれないが。個人的に遅筆な物書きの方が気にいる作品は多いし。

ただまぁ、予定通りにできるに越したことはないわけで、こだわり過ぎると問題になる。レオナルド・ダ・ヴィンチも完璧主義だったらしいが、仕事を受けたら注文してたのと違うものが出来上がったことがあるとかなんとか。いい出来で。でも客は思っただろう。「違うそうじゃない」と。

方針と期限はまぁ、意識したほうが良いだろう。

 周りは良いと言うが自分が納得行かないなら、「今は」ここまでやる、としても良いかも知れない。終わるのではなく切り上げる。

「今はやらないこと」を決める

 人によるが、選択や決断は苦手分野な人はいる。頭の回転が良く「最終的にどうなるか」まで考える人は特に慎重な分、決断は苦手。責任感の強さも、人によっては苦手意識につながる。

前にちょっとやったが、判断と決断は別物だ。判断は複数並べて良いものを選ぶ。決断はそれを「選ぶ/選ばない」という決心をしなくてはならない。基本的には人は決断を避け、判断でなんとかしようとする。いちいち覚悟なんてしたくないわけだ。

この時判断の基準となるのは色々あるが、損得勘定は大きなウェイトを占める。どんなバカでも損すると思うことよりは得をすると思うことを取る。「やりたくないタスク」と「もっとやりたくないタスク」を並べると、前者は比較的まともに見えてくるという研究もあるくらいだ。

一方で、決断は覚悟がいる。「これよりマシ」じゃなくて「これを選ぶ」ってことだから。バカの方がスパッと決めれるのは、あんま先のこと考えないからだ。周りも見えてない。それがプラスと出ることもある。

今回の話では、損得で判断をしようとすると非常に難しくなる。全部やろうとする「長い目」で見れば、機会は全部拾ったほうが良かったりもする。

やり遂げることを決め、それに専念するのはある観点から見れば効率が悪く、愚かですらあるかも知れない。そういった見方ができるのは確かだ。

しかし今までのやり方で大して成果が出てない「現実」があるのなら、「やり遂げること」を意識した方針に切り替えてもいいだろう。


 一部の人は、選択をした瞬間に「自分の未来が確定する」かのようなイメージを持っている。このせいで迂闊に何かを選べない。

 めんどくさいから選ぶのやめよう。決断ではなく先延ばしのつもりで「今はまだやらない」としたほうがいい。25:5のルールを使うならば、実際その通りだ。

先延ばしって言葉もイメージが悪いが、「喜びを先延ばしにする能力」がある人はやり遂げる力が高い、なんて話もあり、必ずしも悪いとは言えない。

要は何を先延ばしにするかであり、「今やるべきではないこと」を先延ばしにすることには遠慮も警戒もいらないだろう。

作業中に思いついたナイスアイデア(笑)について

 アイデアが湧く量は人にもよるし、分野にもよるのだけど。
敵。すげぇ邪魔。これを全部拾ってると寿命が足りない。
閃くのは一瞬だが、それをやるのはそこそこ時間がかかるのだから当然だ。

 最悪なことに、ひらめいた瞬間というのはかなりの興奮状態になるという説がある。
簡単に言えば浮かれる。すごいアイデアに見える。重要度が高いように見える。今やっていることよりも。つまり邪魔。

そんなわけで、後回しにしたほうが良い。言い方がアレだが、ひらめいた時はそのアイデアに対して正気じゃない。どうもこれ、「欲」の感情に近く、衝動性がある。

 「当たり」だったらもったいないから、メモを取る。下手に我慢しても気が散るから、書いたほうがいい。そして忘れよう。一時的には。
一段落した後で読みなおす。

大抵は「ゴミだこれ」となるかもしれない。当たりだったとしても、「作業の邪魔」だったことには変わらない。基本的に無意識下で発生するあれやこれやは「空気読まない」という一点で、ものすごく邪魔になる。

 手紙やメールでも似たようなことを言われている。
曰く、書いたら一晩置け、時間を置け。その後で読み直せ。大体テンションおかしいから、と。つまり思いついた時は、判断には向いていない。

目的への専念

 「ついでにこれも」というのは、割と最悪だったりする。余計なことをやってるのに正当で賢い判断だと思って満足する。脱線していると思わない。免疫が働かないウイルスのようなものだ。

 この「余計な真面目さ」は「効率」という言葉に隠れていることもある。

調べ物の最中、別の気になったことを調べようというケースで言えば、たしかにブラウザを開く手間や、ワーキングメモリにある自分がそれを調べようという記憶=意識などを有効活用するという点から、「思いつきの目的から見たら」効率は良い。

「本来の目的」から見ればロスにしかなってない。理解を深めるなり、調べたことを何かに活用するなり、そちらの方向でまだあっただろうに。

脱線とは、行動の文脈から見て場違いなことだ。だが脳内では新たな刺激に対しての正当なひらめき、反応に感じられる。

 元から長丁場に専念できるようには頭はできちゃいない。それどころか明らかに集中しすぎないような、何かに夢中になりすぎるとブレーカーが落ちるような機能があると思っている。普通は過集中状態に滅多にならないのはそのためだろう。集中している感覚を嫌う人が一部はいると、論文で見たこともある。

達成よりは生存に、本能的な能力の伸びは傾いている。だから索敵に準じる「気になること」には結構人は弱い。

 別の見方をすれば、脳の作り自体が「目的意識が薄い」とも言える。目的のための行動を取るべき場面で、無関係な(それがたとえ別の場面で役に立ってもだ)ことを行いたがるのだから。
本来はここまで厳しくなくていいと思うが、今回は「できると思ったのに時間切れになった」という話だし。

加えて、何らかの正当性がある場合には「脱線」だとすら思わないこともある。最悪、予定とは全く違う「ためになること」を頑張った、なんてこともあるかもしれない。

 めんどくさいことに「今しかない」とか思うと人は正常な判断が難しくなる。マーケティングでよく使われる手法だろう。初回限定とか。これと「ひらめいた時の興奮」とが重なると、脱線しやすい。結果として「今やるのが一番早い」と無関係なことを初めそうだ。


 ウォーレンバフェット曰く、アインシュタインは知能を5段階に分けたそうな。利口、知的、優秀、天才、最後に「シンプル」。

世間は結構、複雑なら頭良さげで、シンプルなのはバカ向けだと思ってるフシがあるが、そうとも限らない。

何かを説明するとして、短く、わかりやすく、つまりはシンプルにする方が頭使う。マーライオンみたいに垂れ流すこのブログみたいな場合はそんなに頭使わない。

何より「物事をシンプルにする」センスがある成功者は多い。出来ないことは出来ないと割り切っていたり、やらないことを決める企業だったり。やるべきことをシンプルにする仕組みづくりの能力が高い、と表すのが妥当だろうか。

では凡人は。ついでにあれも、もったいないからこれも、と手を伸ばし、リソースを拡散させ、何も為せない、何も成れないかもしれない。ただこれは持って生まれた物の差ではなく、スキルとして認識してなきゃ気をつけようもねぇだろって話だが。

 やることをシンプルにして余計なことをやらないのは、結果的に自身の専門性を高め、企業だったらブランド化にもなるのは間違いない。

「マクドナルドで何売ってる?」と聞かれれば大抵ハンバーガーと答えるだろうが、これが「100円ショップで何売ってる?」と聞かれたらまぁめんどくさい。

100円ショップは商品じゃなくて値段で専門化している。100円のものを売ることで。

ダイソーはまぁ、うん。そうね。油断してると300円とかだったりするね。


やらないことを決めるための死亡前死因分析

一種のシミュレート。ゲームオーバーになったところをイメージし、その理由を考える。今回は特に使えるだろう。

embryo-nemo.com/1841/

はい、死んでみよう。すなわち「時間切れでタスクが片付いていない」という状況「なった」という、既にゲームオーバーになったつもりにまずなる。

次に、その「死因」の分析。つまりなぜそうなったのか。

何を「やったこと」を後悔するだろうか。「あんなことに時間を使わなければ」と後悔するタスクがリストの中にあるとしたら、どれか。自分はどんな「脱線」をしやすいか。

それらは、手を付けるべきではないことになる。少なくとも最優先ではないね。

それがわかったら、現在の時間帯に戻る。はいリスタート。

メモ

 面白いことに、企業の社長なんかがコンビニ店員の仕事を「自分には無理だ」と言ってる場面を何度か見かけたことがある。ああいったマルチな立ち回りは、彼らには苦手分野らしい。

専念、没頭をしないというのも一つの才能ではある。過集中はよろしくないことなわけで。

専門的な仕事の正反対に「雑用」があるが、あれだ、自分が猛烈な腹痛になって、なんとかトイレに駆け込んで一息ついてから、トイレットペーパー切れてる所を想像してみると良い。

雑用って大事だろう。誰でもできそうってだけで、重要度は決して低いものじゃない。で、全てを十分な状態に維持するように立ち回るのは、それができるかできないかだけじゃなくて、全体に注意を払うセンスが必要なのも確かだろう。

 専念せずに手広くやるのが向いてる人も多分いる。ただしその場合でも、思いついたこと全部やろうとするなら寿命は足りない。今回の主な目的は「リソースを拡散させることで達成できない」という問題の処理であり、この点は変わらない。

ウォーレン・バフェットの方法で、一つに絞らず5つ選ばせたあたりが、ここで活きてくる。これで脱線や気が散る先を5つの範囲内にコントロールできる。彼がそのつもりで5つにしたのかどうかは知らんけど。ただ、英語の勉強に行き詰まったから気分転換にドイツ語勉強するとか言ってるハイレベルなのがいるのも事実では有る。



2ちゃんねるのひろゆきは、自分はなにやっても65点くらいしか取れない、としている。70点、80点を目指す努力を諦めて、「打率を維持して勝負しよう」とした。だからしっかり寝るようにしてたそうな。

2ちゃんねるも、作って一ヶ月くらいの当人曰く「誰でも作れるレベル」でスタートしたのだとか。後からアップデートすればいいやって。

https://r25.jp/article/805294907139064104

 結果はご存知のとおりなわけだが、このように何かを早々に諦めて、別の方向にリソースを注いで成功、という話はそこそこ見かける。

一般的には努力や練習が大切とされる。自分が65点だったという場合は、ほとんどが「もっと勉強しないと」と自他共に思う。初手が努力、勉強、練習。どうせ最後までそのままなので、「それしか思いつかない」と言ったほうが正確だろうな。

一方で、要領のいい人などがわかりやすいが、彼らはほとんどが「攻略」するつもりで物事に当たる。どころかそのタスクを嫌っていることすらある。これは裏を返せば練習する気がない/したくないとも言える。

 RPGでボスに勝てない場合、レベルを上げるのが順当な対応かもしれない。ただ、弱点を積極的に突く、攻撃に対策をする、あるいはまだ勝てないと早々に諦めて、後回しにして別のクエストを消化するなどもプレイスタイルとしてはある。

あるプレイヤーにとっては、レベルが高いことは「汚点」ですらある。その者にとってレベルは積み重ねた努力ではなく、攻略法が見つからずにそうせざるを得なかったというものとなる。
これはそのゲームをレベルを上げて物理でぶん殴るゲームではなく「パズル」として見ていることを示す。つまり見方・遊び方=視点・アプローチから違う。

 大抵の場合はそれこそRPGのレベルみたいに「やってりゃそのうち勝手に上がる」的な無計画な成長イメージを無意識にでもいくらか持っている。

経験の量によって実力の期待値は変わる。例えばパイロットの実力は「総飛行時間」で表されることもある。確かに慣れによる成長はある。

これを一切期待していないかのような、「今できないならもうできない、だから別の方法考える」みたいな非常にクレバーな人種がいる。割と好み。

ただ彼らは勉強嫌いかと言えばむしろ逆で、相当な読書家であることが多い。「取り組んでいる間の成長」に関しては期待していないようには見える。やはり論理的に詰めていくタイプではある。

 今回の話も成長にまつわる話はほとんどなく、自分の「運用」の色合いが濃い。むしろこういう時に「ほっといても次はもっとうまくなってるはず」みたいなガバガバ成長イメージは邪魔になるだろう。スピードも効率も求められる場面では、「成長」を織り込むのは無理がある。

シェイクスピアのハムレットに、「習慣にしなさい、習慣に。昨日より今日は楽に、今日より明日はもっと楽になれる」みたいなセリフがあった気がする。

いい言葉だとは思うが、こんな感じで日頃のルーティンに対して自分が成長し、次はもっと楽になることを期待してしまいがちだ。しかしその期待こそが足を引っ張ってる可能性はないだろうか。特に初めに無理な計画を立てがちになるかもしれない。初めは辛くてもそのうち楽になるから大丈夫、と。これは人が運動習慣を身に付けようとして失敗する大きな原因だったりする。

「効果的・確実な手を選ぶつもりが元からない」と言える。初めから、努力や練習や慣れという「勝ち方」を決めていると言える。勝ち方にこだわれば、勝率は下がる

 成長への期待感は、間違いを繰り返す大きな理由になるかも知れない。次はもっとうまくいくはず、今度はできるはず、と。「だから同じようにもう一度やってみよう」と。

やらないことリストに「これが終わるまでに自分が成長することを当てにしない」と入れといたほうが良いのかも知れない。まだはっきりしないが。

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