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先延ばしによる気分の変化と、結果の3パターン

投稿日:2022年8月2日 更新日:

  • ずっと嫌な気分だけど勉強に影響はないよ
  • 甘く見て失敗するけど人を見下すことで自信を保つよ
  • 計画的に先延ばしてしっかりこなすよ

・雑に言えば、先延ばしが向いてる人と、向いてない人と、論外とがいるよと。

同じ先延ばしでも面白いレベルで心境も結果も違う。やはり一括りにするべきじゃないだろう。

概要

参照:先延ばしのパターンと学業遂行および自己評価への志向性

・先延ばしの前、中、後の3つのタイミングで感情状態を調べ、それぞれの学業遂行について検討した論文。結果、3つが見出された。

  • 否定感情パターン:最初から最後まで、否定的感情が一貫して生じる
  • 楽観的パターン:最初は楽観して先延ばし、後悔する
  • 計画的パターン:計画的に先延ばし、気分を切り替えて取り組み、達成する

加えて仮想的有能感(偽りの自信のようなもの)や達成目標(3種類)との関連についても検討されている。

・否定感情パターンの先延ばしは、学業遂行に悪影響を与えないとされた。正確にはプラス要素とマイナス要素があり、それが拮抗するためそれほど悪いことにはならない。

ただし、失敗を避けようとする状況に限ると悪影響が出る可能性がある。

・楽観的パターンの先延ばしは、学業遂行に悪影響が出る。加えてこれをよくする人は、悪い結果に依る自己評価の低さ無意識的に他人を見下して優越感に浸ることで補っていると推察されている。

・計画的パターンの先延ばしは、いくつかで見られた「良い先延ばし」の例となる。学業成績には良い影響を与えている
この先延ばしは「気晴らし機能」を持つとされる。なんか別のことやってから「よしやるか」って先延ばししたことに取り組むため、目標が明確化し、捗るとのこと。

先延ばし傾向は本人の特性によるとみられる説もあり、対象を限定せず全体的に先延ばす例も多い。
要するに「そういう性格」って扱いをされることがあるし、この話もそちら系だとの印象を受ける。

だが一応は「この先延ばしはどのパターンか」、といちいち考えたほうがいいだろう。
「教科によって違うんじゃないの」とも言われてるし、苦手意識は先延ばしと関連する大きな因子であるため、好き嫌いの影響は受ける。


・事前情報。

・学業限定の研究であることには注意。
また因果関係が逆、つまり成績が先で、その後の先延ばしパターンが変わることも考えられる。

・先延ばし行動の「生じやすさ」とは無関係。先延ばしした時に「どの気持ちが生じやすいか」の調査。息を吐くように先延ばす人と、そもそも先延ばししない人との篩分けをしていない。

例えば楽観的パターンは色々と問題があるが、そもそも先延ばし自体を滅多にしないなら、大して気にしなくていいだろう。

・「有能感」は4項目ある。仮想型、全能型、萎縮型、自尊型。
この内、仮想型と全能型は地に足が着いていない、仮想的有能感だとされる。

・達成目標は詳細を省くがここでは3つ出てくる。

  • 学習目標(習得目標):自分の能力を伸ばしたい、新しいことを理解したい、身につけたい
  • 遂行接近目標:他者よりもできることを目指す
  • 遂行回避目標:他者と比べてできないことを避ける

学習目標は自分の現在の能力への自信の高低に影響を受けない。自発的な動機。
遂行目標2つは、見りゃ分かるだろうが「他人」を意識している相対的なものなので、自信の高低に影響を受ける。承認欲求の称賛獲得欲求と拒否回避欲求に似ている。

否定感情パターン

  • 最初から最後まで否定的な感情が続くよ
  • それほど学業遂行に影響はないよ
  • プラス要素も持っているから、そっちが伸ばせるといいね

・先延ばし前に「否定的感情」が生じるパターン。最後までずっとその気分は続く。学業遂行に支障が生じる。

・否定感情パターンの先延ばしをする者は、学業遂行が低くはあったのだが、はっきりとしたレベルではない。「やや低い」くらい
有能感に対しても目立った特徴はなかった。また達成目標は習得目標と遂行回避目標の2つが高い。つまり成長したいが、恥をかきたくもない

習得目標は学業遂行を間接的に向上させる。遂行回避目標は学業遂行を悪化させる。この2つの拮抗により、「やや低い」程度で落ち着いていると考えられている。

・先延ばしは「低い学業達成及び自尊心、不安と強く関連する」と定義されることもある。自信がない、失敗経験があるなど元から苦手意識があることが「この先」に待ち構えている場合、まぁ気が晴れることなくずっと否定的感情が続いてもおかしくはないだろう。

・「気晴らし」についての研究では、気晴らし行動中に「自分の内面や過去の失敗」に注意が向いてしまい、全然気晴らしにならない人が見出されている[efn_note]気晴らし方略の有効性を高める要因[/efn_note]。これでは気分は晴れない。

このような気晴らしに対して自信がない状態にもかかわらず先延ばしするタイプが否定感情パターンで、結果として時間だけが過ぎるから先延ばしが裏目にでる。
これは気晴らしに集中できないことが原因とされる。と言っても集中力の話じゃないだろう。気にし過ぎとかそっち。

この場合むしろ「苦手だから前倒しする」とかの方が気が楽になれそうだが。時間が一番多く残ってる状態だし。

・シャイというか、失敗恐怖の系統に見える。根は真面目そうなので心理的安全性を担保できれば伸びそうだが。
心理的安全性で言えば、楽観的パターンの先延ばしをする者が敵になり得るか。害される可能性が実際にある。

楽観的パターン

  • 割りとフォローの余地がないよ
  • 学業遂行に支障が出るよ
  • なくした自信は他人を見下して補うよ

・先延ばし前に「状況の楽観視」が生じるパターン。先延ばしたあとで否定的感情が生じ、学業遂行に支障が出る。

否定感情パターンよりも学業遂行に支障が出る

・先延ばし中は肯定的な感情が生じているが、その後否定的な感情が生じるパターン。
依存的に気晴らしを行うため、状況によっては精神的な不適応を招くとされる。

・勉強量を増やすことに元から価値を感じない。このため「そんなにやらなくて良い」という楽観視が生じ、そこから「まだ余裕がある」と先延ばしをして、「一夜漬け」のような状態で課題に挑む。このため学業遂行が低い

学業遂行が低いんだから自己評価も低いはずなんだが、「そこで自らの評価の低さを認識しないために無意識に仮想的な有能感を持っていると考えられる」とされている。
この方法として、無意識に他者軽視を行い、相対的な有能感を保つと考えられている。

ちなみに仮想的有能感の質問票って「他人の仕事ぶりを見ているとイライラしてくる」「自分のほうが手早くできると思う」とかそんなん。

さらに「自らの学業遂行の低さが露呈せず仮想的有能感を維持できる状況を望むため、価の正負がどちらであれ、自身の遂行を評価される機会を避けようとする志向性を持つと考えられる」となっている。

まぁ、「本気を出せばできる」って言いながらなんにもやらない感じ。

・これは、楽観主義で言うなら非現実的楽観主義に入るだろう。非現実的楽観主義は実際先延ばしをする。他の楽観主義の要素の場合、自信がつくためそれほど先延ばしはしない。

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・性格の5大要素であるビッグ5の勤勉性(誠実性とも)が低い傾向がある。これは物事を責任を持ってやり遂げようとする素質で、これが低いということはあんまりやり遂げるような性格ではないと言える。

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・有能感に対しては、楽観的パターンは「全能」が少なく、「仮想」が多かった。偽りの有能感。
仮想型は物事に対して、指示されたり義務感からいやいや取り組む感じだとされている(萎縮型はもっとその傾向が高いが)。

・仮想的有能感が高い場合、イジメの加害者と被害者の両方になりやすい。[efn_note]高校生における仮想的有能感といじめとの関連[/efn_note]

・ちなみに有能さの評価基準には絶対的(課題に対してクリアできるかどうか)、個人的(過去の自分と比べてどうであるか)、相対的(他人と比べてどうであるか)の3つの次元がある。

どうも楽観的パターンは相対的な有能感らしい。比べる相手が必要

・学業遂行が低い、仮想的有能感が高い、遂行目標が接近と回避のどちらも低い。
楽観的パターンの先延ばしは、「不適応的な先延ばし」と考えられている。

・計画段階での楽観はだいたい足を引っ張ることになる。この時、気を張っていても楽観が混じることが元から多い。つまり計画段階では「楽観」は警戒されるべき対象である側面がある。

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これを拭うために事前に「失敗した」と仮定して「そうなるとしたら何が原因か」を考えるシミュレート法もある。

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・本当は楽観ではなく、恐怖を感じているのだとも考えられる。

フロイトによる防衛機制には「反動形成」がある。これは受け入れがたいものを意識しないために、無意識に正反対の方向を過度に強調する(自覚はない)。[efn_note]https://bsd.neuroinf.jp/wiki/防衛機制[/efn_note]
例えば憎んでいる相手に親切に振る舞うなど。ここで言えば、課題を楽観視することが怪しい。

そうだとすると恐怖の対象は恐らく「評価されること」または「自分の実力を知ること」か。

計画的パターン

  • 問題のない先延ばしだよ
  • 先延ばすことでリフレッシュするよ
  • おかげで必要な行動が明確にできるから頑張れるよ

・先延ばし前に「計画性」が生じるパターン。学業遂行に支障は生じない先延ばし。

・先延ばしは「自分を駄目にする不適応的習慣」なんて断言されてたりもするのだが、一方でなんかいい感じの先延ばしの存在は確認されていた。

・先延ばし前に計画性が生じていればいいような書かれ方をしているのだが、予定があるだけでストレスってタイプの人は、計画的に先延ばししてもストレスかもしれない。
むしろ先延ばすとストレスになるなら計画的に前倒しした方がいいかもしれない。

・否定感情パターンと違い、こちらは気晴らしを成功させるタイプ。これにより目標が明確になり、精神的に適応できる先延ばしと示された。

・性格としてはビッグ5の勤勉性が高い傾向がある。責任感があったり、やり遂げようとする。

・有能感については、「仮想」が最も低く、「自尊」が多かった。健全。

・計画的パターンの先延ばしをしやすい者は、習得目標が他のパターンと差がなかった。これは学業遂行を間接的に促進させるが、それが大差ない。学業遂行の優劣は目標の高さではなく、手法レベルの違いだと考えられている。

具体的には疲れている時に先延ばしして気晴らしができる、その結果「必要な行動」が明確にできる、その後はスムーズ、という話。

メモ

・確かに私は楽観主義者があまり好きじゃないが、今回は別に何もしていない。何もしてないのに壊れた。

真面目な話、恐らく本質的には楽観主義ではないだろう者が無理してポジティブに振る舞ってこんなんなってるのは散見される。

ちなみに悲観主義が無理して楽観主義として振る舞うと、態度は楽観主義者だがパフォーマンスはクソ落ちる。先延ばしの原因がポジティブカルトにある可能性も無いとはいえない。

・否定感情パターンは、気晴らしが成功するなら良いのかもしれないが。性格的には気にしすぎな系統のようだし、そこが難しいのかもしれない。

・楽観的パターンは、「前向きと楽観は違う」というのがとても良く分かる例となった。というか楽観はディスカウント(値引きとか軽視)に近い。本番直前の舞台度胸とかには役に立つかもしれないが。

殆どの楽観の研究では、何かしらマイナス面があったとしてもメンタル的には良いと出ている。ただし「今回の楽観」は、後で後悔するわ性格が悪いわでちょっと面白いレベルでよろしくない。

また、後で不安になってる時点で楽観主義であることが怪しい。このためフロイトの防衛機制を疑った。現実逃避のための楽観視、非現実的楽観主義も疑える。

・否定感情パターンと楽観的パターンは、先延ばし自体をしないようにする方が手っ取り早いと思われる。


・先延ばし関係のまとめ

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