学習習慣の7タイプと先延ばしと後回し

・ある程度の自主性……というか自分でペース管理しなきゃならない分野というものがある。夏休みの宿題から仕事のプロジェクトまで色々と。この分野においては先延ばしは大きな問題となりやすい。

・締切がある課題に取り組む姿勢は、7タイプがあると見出されている。最も、その大半は先延ばしをするグループだが。

・ただし長期かつ継続的な計画の実行は、授業時間や仕事時間のような限られた時間だけの話でもなくなってくる。他の予定との衝突/摩擦は発生し得る

加えて締切がまだ先ならば、その前に他のことをやっても何ら不思議はない。

このため先延ばしと「後回し」は区別されるべきだと思う。

学習習慣の7つのタイプ

eラーニングにおける学習行動の分類より。自己管理が特に必要なeラーニングに於いて、学習者の特性に合わせた支援をするための基礎調査。

・これは意識して実行している/身につけた習慣というよりも、「なんか自然とそうなる」っていう性格や行動パターンの方が多い。 ぶっちゃけて失敗(期限に間に合わない)のリスクが高いパターンもある。

・教養英語科目を履修している大学2年生441人が対象。15週間のeラーニングの学習進捗の分析。 全ての課題終了で100%とし、1週間で6.7%(±5%)の進捗があれば「順調 」、それ以下が「進捗が遅い」、それ以上を「速い」 としている。

・まぁ、ピンとこなけりゃ夏休みの宿題にでも置き換えればいいと思う。ギリギリまでやらないとか、毎日等分こなすとかあっただろう。

その結果が、7タイプに整理された。1

1:締切重視タイプ

・441人中の331名、75.06%が該当。これに先延ばしは含まれている

あまりに数が多すぎて、他が全部レアになっている。

学生の70%以上が先延ばしをする、とする研究は他にもあり、それを裏付ける形になっている。

締切間際まで学習を始めない、先延ばしする、締切直前で慌てて駆け込み授業を行うなど。 これを「効率性重視」と表現されている。

・結果でさらに2つに分かれる。

1a:締切内に課題を終了:メタ認知の調整ができている。

1b:締切内に課題が終わらない:メタ認知の調整ができていない。

・メタ認知って言葉は「認知の認知」または「認知の知識」で、文脈次第でその意味も結構変わる。

論文内では説明がされてないので困るが、文脈的には「自分を客観視できている」「自分の思い込みや脱線や油断などに気づいて行動を修正できる」などに近い意味でいいだろう。

今回の論文は自己調整って分野になるんだが、そこでのメタ認知は「予見」「遂行コントロール」「自己省察」のサイクルに深く関わるとされる。2

2:学習習慣(コツコツ)タイプ

441人中の20名、4.54%が該当。学習する習慣を持っているタイプ。学習効果は高いと考えられている。

動機で2つに分かれる。

2a:学習課題に関係なく学ぶことが目的(内的動機)

2b:締切を意識し、学習課題を学習期間で当分した量を着実に行う(外的動機)

生涯学習や学習効果という観点からは、2aの方が良いとされる。課題(外的理由)じゃなくても勉強したいってこと。

3:先行逃げ切りタイプ

・441人中の7名、1.59%。レア。

その名の通り早めに課題を終了する。逆を言えばこれ以外のタイプは割りと期限ギリギリである。

優秀過ぎて他に何も書かれてない。他と違って更に分かれたりもしない。

・以上から、「夏休みの宿題を早めに片付けた」と自己申告する奴は、怪しい。クラスに数人は居たがそれだと数が多すぎるためレッキングを疑う余地がある。親だって等分にやらせようとするだろうから、親にやらされた線も薄い。

冗談で言ってるが。

・冗談は置いといて、「先延ばしする自分が嫌いすぎて(実際自己嫌悪の原因となる)」今度は先行逃げ切りタイプを目指して挫折、ってパターンはよく見かける。

だがこの割合を見る限りは高望みなのだろう。コツコツタイプを目指したほうがよろしいと思われる。

4:ランダムタイプ

・411人中の8名、1.81%。レアその2。

・気分ややる気にムラがあるタイプ。または外的な要因(他の用事や授業設計)に影響されやすい可能性がある。気を散らしやすい感じ。

・これは2つに分かれる。

4a:学習量にムラがあるが、最後にはノルマを達成する。

4b:学習量にムラがあり、ドロップアウト。

5:やる気減退タイプ

・411人中の23名、5.22%。最初はやる気があるが、それが続かない

・2タイプ。

5a:U字型:最後にはノルマ達成. ある程度、自己調整ができている。

5b:三日坊主型:最初だけ学習量があるが、その後はやらないままドロップアウト。

・モチベーションの問題だとしたら、5aは回復していることになる。このあたりもやっぱりメタ認知や自己調整の話になる。

燃え尽きた可能性を考えれば、「最初張り切りすぎた」のが原因になっている可能性が一番高いだろう。やる気のせいで失敗した可能性。そのようなことはいくらかある。

6:山形タイプ

・411人中の29名、6.58%。中盤から頑張るんだけど、最後までは続かない。

・結果で分かれる2タイプ。

6a:最後にはノルマ達成、ある程度、自己調整ができている。

6b:中盤で頑張るが、最後まで頑張りが続かず、ドロップアウト。

7:中盤追い上げタイプ

・411人中の23名、5.22%。中盤から学習量が増える。

・改めて説明しておくと、今回の話は15週間というかなり長い期間のものだ。このため、ペースが上がってから結構長い間、それが維持されたことになる。

・スロースターター。山形タイプと違い、最後まで学習量が維持される。

自己調整の必要性

・先延ばしをするグループが締め切り重視と名付けられているのは面白い。

「意味に偏りがないように」とのことで締め切り重視と名付けたそうな。(出来はともかく)自分で優先順位を付け、必要時間も考え、計画をしているため、メタ認知能力を使ってはいると判断できるため。

このグループの中でも課題に間に合う者はいた(1a)。この違いがメタ認知の調整(自己調整)の有無とされる。

他にも全ての失敗した小グループ(b)は、自己調整を養成するような支援が必要であると考えられている。

・自分がやりたくてコツコツ勉強するタイプ(2a)以外は全て、「課題を終えることが目標となっている」と指摘される。このため学習の意義付けを自分でできるような支援が効果的ではないかと考えられている。

・総じて「やり遂げるため」には自己調整、自分のモチベ管理やまともな計画を立てる、計画の修正などが必要と言える。

先延ばし、割り込み、脱線、憂さ晴らし

・この研究では「課題に取り組む」という文脈で見ているし、先延ばしという言葉も「なすべきこと」と当人の行動という範囲での視点になる。先延ばしの文脈で見れば、これらは確かに先延ばしではあるのだが。

・人間としては他にやること/やりたいこともある。課題が最重要だとしてもだ。期間が無駄にある場合、先んじて着手する理由が別にない。

先延ばしの話は、どうも優先順位や計画の話とごっちゃになっている様に思える。
アイゼンハワーマトリクスではタスクを「緊急度」「重要度」で分け、緊急なタスクから手を付けるが、先延ばしの話は「重要度」を重視している印象を受ける。
最終的に締め切りが近い(緊急度が上がる)という形で手を付け、失敗あるいはぎりぎり間に合うというシナリオが多い。

そして人が自然と着手するタスクも、緊急度由来であることが多い。「大事だから」ではなくて「急ぎだから」で手を付ける。
締め切りという外的な理由以外で着手する理由を、2aは「自分がやりたい」という形で持っているが、それ以外は持っていない。
つまり「自分からは着手しない」。 外的な動機だから、外的な理由(締め切り)で始める、と言う形。

別に悪いとも思わないけどな。殆どの用事は外的だし。外的な動機のものを内的に変換することは可能だが(例えば自分なりのやるべき理由や利点を見出すなど)、現実的に「いちいちやってられんのかそれ」とも思うし。
クッソ嫌がりながらも、先延ばしせずにちゃんと終えれる所がゴールでいいんじゃなかろうか。

・ここから見ると、スタートダッシュで燃え尽きる「やる気減退タイプ」が、一番先延ばしからの卒業が早いのかもしれない。自分から着手しているため。モチベ管理が課題か。見通しが甘いから気楽に初められたって可能性もあるけど。

・先延ばしで語られる対象は「緊急ではないが重要」であることが非常に多く、これはアイゼンハワーマトリクスで言うと優先度は3番めになる。まだ期限があるならそうなる。

4番目はゴミ扱いされているので実質的な優先度は最下位だ。つまりこの文脈で先延ばしを語ると、「なぜ優先度が3番めのことを3番めにするのか」という何言ってんだお前はという形になる。

裏を返せば「もう余裕はない」というタイミングを見誤り「まだ時間はある」とすれば、やらかす。で、先延ばしと楽観主義は関連していると言われている。

・先延ばしをしないための技術的なスキルとしては、計画性と優先順位を決めるノウハウは必要になるだろう。

結果として、緊急度が高い物の方が優先度が高くなる。計画的に「後でやる」ことをスケジューリングする。後回し。

先延ばしと期日遅延は別物だ、と元から結論付けられているし、「明日できることを今日やるな」という言葉もある。

・長期的で継続が必要であるほど、毎日等分にやってくのがやっぱり一番良いと思うが。つまり習慣化は先延ばし防止となるのではないかと考える。身についたらの話だが。

・これらを実行するためにはメタ認知能力はほぼ必須になる。自分の客観視、厳密には状況認識と感情のコントロール(衝動性は先延ばしの原因の一つ)か。脱線してることに気づかない、このままじゃ間に合わないことに気づかない、なんて状態じゃ話にならない。

・一方で、マインドフルネスが先延ばしを低減させるという話がある。
先延ばしの理由が衝動性、不安感、先延ばしへの問題意識のなさがあるのだが、これらが解消する。

マインドフルネスは自分がやってることに意識を向けることであり、逆を言えば意識が別のとこ行ってると先延ばしが出る。つまり先延ばしとは(衝動によるものは)無意識の産物であり、ここにも「自分に気づく」、つまりメタ認知と先延ばしの関連がある。

先延ばし癖がマインドフルネスで改善するという話
・まず初めに言っておきたいのは、先延ばしの原因は複数あるということだ。先延ばしの因子とされているのは、興味の低さによる他事優先先延ばし肯定・容認課題困難性の認知がある。今回は、課題困難性の認知、つまりやろうとしてい...

メモ


・ストレスからの憂さ晴らしで何かの先延ばし(リベンジ夜更かしが代表例)はあり得るだろう。これは「割り込み」とか「脱線」といった形で「余計なこと」をする形になる。

・自発的に動くきっかけ(トリガー)の有無が気になる。
スタートダッシュするタイプは内発的な動機、あるいは「課題を与えられた」こと自体がトリガーになっていると考えられる。

反対に締め切りが近づくに連れてペースが上がっていくタイプは締切の存在=「もう時間がない」という焦燥がトリガーになっている可能性がある。

時間意識で動くのは別に悪くないと思うが、締切を意識するタイプは内的な動機(「やりたいから」とかそういうの)でアクセルを踏むことは少ないだろう。

まぁ、プロの小説家でも仕事外で趣味でやってるものは数年未完成で放ったらかし、なんて話を最近見かけた。そういう人も多いというか、「締め切りの力」がそれだけ大きいのか。

感情論や根性論ではなく、トリガーの設定などの工夫や仕組みづくりでの習慣化の話も多い。

・無いものねだりをせずに、自分なりの「締切との上手い付き合い方」を学ぶのもいいのかもしれない。

「自分がまだ大丈夫だと思ってたらもう危ない」みたいな。
冗談抜きで「まだ行ける」は「もう危ない」とか言うしな。3


・先延ばし関係のまとめ

先延ばしについて 目次
先延ばしの理解多くの大学生が先延ばし傾向がある75%がギリギリまでやらないタイプ効率性重視の方略の一種だとされるこの上で期限に間に合わない場合は、自己調整能力が必要とされるここでは期限に間に合えばとりあえずセーフ扱...
  1. 厳密には110パターンが抽出されたが、類似しているものをグループ化して7タイプ。
  2. 自己調整学習とメタ認知 一それぞれの研究成果を互いにどのように生かしていくべきか一
  3. 出典不明な上にゲーム関連でやたらと見かける。ウィザードリィや世界樹の迷宮など比較的厳しいタイプのダンジョン探索や、ローグライク系で。登山家の言葉として聞いたこともあるが。
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