楽観バイアスについて

楽観バイアスとは

・バイアスは「偏り」を意味する。心理学でのバイアスとは偏見や思い込みなど「指向や認知の偏り」を指す。結果として判断や結論が偏る

・楽観は事態を明るい向きに見ることとされる。楽観視は先行きが明るいと見ていること。楽観バイアスの「楽観」は楽観視の意味に近い。

・楽観バイアスは予測を楽観的に歪め、失敗や事故に繋がる原因となる。

楽観バイアスの例

  • 教科書を作ろう。長くても2年半くらいで終わるだろう → 8年かかった
  • 戦争なんてしてないでクリスマスを祝おうぜ! → 撃たれて死んだ
  • 保育現場にて「滅多に起こらないから私の周りは大丈夫」と思うことは重大事故に関わる心理的要因として挙げられている。
  • 災害時における「自分だけは大丈夫」という根拠のない確信。
  • 賭博者の錯誤。「次は勝つに違いない」。
楽観バイアスの例
・予測が甘いもんで責任感もない感じ。それで良いのか、それじゃ悪いのかは環境次第か。命がかかってても普通に発生するので、総評としてはよろしくない。・物事を楽観的に予測し、失敗や事故につながる楽観バイアス。客観的に見ると甘く見たツケで...

楽観バイアス概要

・物事の「予測」に対して、楽観的な補正を加える。簡単に言えば、これからやることや起こることに対して、かなり甘めに「なんとかなる」「悪いことは起こらない」と思ってしまう。

(翻訳)楽観バイアスは、自分自身がネガティブな出来事を経験する可能性が低いと誰かに信じさせる認知バイアスです。

これは、非現実的な楽観主義または比較楽観主義としても知られています。 楽観バイアスは一般的であり、性別、民族、国籍、年齢を超えています。

楽観バイアスは、ラットや鳥などの人間以外の動物でも報告されています。

https://en.wikipedia.org/wiki/Optimism_bias

これから起こることが対象。自分の身には、不幸は降りかからない。

面白いことに「ポジティブなことが起こるだろう」という期待ではなく、「ネガティブなことを経験する可能性が低い」と描写されている。

・予測を甘くするため、計画段階でかなり悪影響が出る。費用、納期が最初に思ったより倍以上かかったり、十分間に合うと思っていたら数倍の期間がかかったり。

もっと悪い場合には、「悪いことは自分には起こらない」と考える。つまり何も手を打たない。

・ターリ・シャーロットによれば、80%の人がこれを持っている。強弱の問題もあるだろうが、自分もこんな時があるとは思っておいたほうがいいかもしれない。


・英語だと Optimism bias となる。
オプティミズムは楽観主義を指す。

・楽観主義自体が研究されているが、楽観主義者は良いことは長く続き、悪いことは長く続かないと思っている傾向がある。ネガティブの軽視。

加えて不安になるようなことに対して「怖くなるから見ない」とする傾向を元から持っている。状況把握や情報よりも自分の精神状態を優先する。楽観バイアスもこの傾向に近い。

プレイヤーとしてなら「やるしかない」という状況では有効となるだろう。ただし責任者としては無責任と言う他ない。

ネガティブな人が無理してポジティブにならなくていい理由
認知的方略当人の「問題の見方」としてのネガティブやポジティブを指して、「認知的方略」と呼ぶことがある。問題状況に直面した際に、人が目標や行動に向かうための認知・計画・期待・努力の一貫したパターンとされる。方略と言え...

・楽観主義は性格の話だが、楽観バイアスの場合は無意識レベルでかなり広範囲に掛かる。

主観的なワーストシナリオすら、現実よりも甘いことがある。最大限厳しく見積もったつもりで、まだバイアスが掛かっているということ。

楽観バイアスと正常性バイアスとの違い

・楽観バイアスと正常性バイアスは、一部の辞書でも混同が見られる。「問題を軽視する」という点では同じだが、対象が違う。

  • 楽観バイアス:未来が対象。将来のリスクや計画に必要なリソースの過小評価。
  • 正常性バイアス:現在が対象。目前にある問題や、今時分が身をおいている状況の過小評価。

・「楽観視」というのはこれから起こることに「なんとかなるだろう」と思うことを指す。楽観という言葉自体が未来が対象になっている。

・正常性バイアスは恒常性バイアスとも呼ばれる。恒常とは「一定で変わりがない」こと。つまり「これはいつもと変わらない(対処する必要はない)」と思いこむバイアス。災害時に、これのせいで逃げ遅れたりする。

・バイアスの目的が「動揺しないこと」だと仮定して、やりかた(思い込みの内容)も違う。

  • 楽観バイアス:「自分は大丈夫」と思う
  • 正常性バイアス:「これは異常ではない(日常の範疇だ)」と思う

楽観バイアスには「希望的観測」の側面が強いが、正常性バイアスは「状況の過小評価」の側面が強い。

ターリ・シャーロット: 楽観主義バイアス

  • 脳自体に「そうする部分」があるとわかっただけでも収穫だろう。
  • いいニュースは喜んで取り入れ、悪いニュースは拒絶する傾向があるとも言える。
  • 都合のいい情報だけ取り込み、都合の悪い情報はほとんど取り込んでいない。フィルタリングが起きている。
    • 自分は50%で癌になると思う→平均30%と知る→35%くらいかな
    • 自分は10%で癌になると思う→平均30%と知る→11%くらいかな
    • ただこれは、おめでたい奴でも学習を繰り返せば、「相場」にだんだん近づいていくということでもある。もちろん悲観主義者も。
    • むしろ悲観主義者は学習することにより効果的に認知を改めることができるといえる。
  • 学習していないわけではない。逆を言えば、「その情報が自分に関係あるかないか」、情報の重み付けをどのくらいにするかにバイアスが掛かっていると考えられる。
    (自分に不幸は訪れない、とする誤信念を持っていた場合、悪いニュースはほぼスルーだろう。)
  • やはり「計画性」に於いて問題になると指摘している。
  • 楽観バイアスを知ったところで、その恩恵に影響はない。実感(錯覚を含む)と知識は別物、ということ。
  • ペンギン見ながら思ったが、ライト兄弟とか、楽観バイアスなきゃ有人飛行成功しなかっただろうしな。

楽観バイアスと幸福

おめでたいだけあって、幸福度とは関連している。

  • 楽観バイアスは未来への期待を高め、期待が高いほうが幸福度が高い。
  • 「期待」の状態そのものが幸福である。上記動画ではそれをより味わうための期待の先延ばしの話をしている。
    (これは動物にもあると小耳に挟んだことがある。すぐエサが貰えるより、わざわざ遠回りする手順を好む動物実験の話。)

平日は休日が待ち遠しく、休日はぐだぐだして時間が過ぎ、休日夜には明日が嫌だ、となる話はよく聞く。
平日の休日の待ち遠しさは、楽観バイアスによる期待ではないのか。大抵の休日が「こんなはずじゃなかった」で終わるのは、元からそんなもんなのでは。

楽観バイアスと自己奉仕バイアス

  • 成功は自分の実力、失敗はなんかのせい。度が過ぎれば性格が悪いとなるが、適度なら自信につながるともされる。

>>認知バイアスについて

  • 楽観バイアスとの混同はされていないが、かなり強く関連付けられる事が多い。
  • 楽観バイアスの前提としての、「自分の能力の過大評価」として、自己奉仕バイアスがある。

  • ダニングクルーガー効果とか「自分は他より頭が良い(これを平均以上効果と呼ぶ(above average effect))」みたいなのもそうだろう。
    (これらは自己評価へのバイアスだと言えるが、これを前提として計画立てりゃそりゃアホなことになる。)
  • 正常化バイアスは今起きていることを過小評価し「問題ない」とする点で、楽観バイアスとは違う。
    (ただこれは「状況把握」に対して起こり得る。対応可能なタイミングで問題を見逃したりはあるので、計画実行の邪魔になるバイアスであることは間違いない。)

楽観バイアスと抑うつリアリズム

楽観バイアスないと生きていけないのかもしれない。

  • 抑うつ=うつ状態の人間は、楽観バイアスが働かないとの説がある。
  • ランダムなものを見て、自分の実力だと思うことが、うつではない者ではそこそこある。うつ状態の者は、それよりも正確に事実を認識した。
  • このような「抑うつの者は現実を正しく認知できる」という学説を抑うつリアリズムと呼ぶ。

>>抑うつリアリズム

  • この現象の理由としても、通常の人間には楽観バイアスがあり、抑うつの者にはそれが働かないから、と考えられている。
  • 軽~中度のうつ状態に限った話で、重度だとネガティブバイアスが強くなる。
  • ターリ・シャーロットも楽観バイアスがなければ、人はややうつ気味になるだろうと言っている。
  • トーク内で語られているこの内容も抑うつリアリズムについてだと思われるが、まだ未判明な部分が多い。明らかにリアリズムではないネガティブな認知をする状況などもある。

楽観バイアスと自己充足的予言

  • 予言の自己成就。動画では自己充足的予言と訳されていた。
  • そうなると信じることで、そうなるような行動を取り、結果そうなること。予言が先。
  • どうも世の中、期待を持って自ら動かない限りは、受動的でうつっぽくなるのかもな。期待の質とリアリティにもよるが。

楽観バイアスの扱いについて

  • 付き合っていくしか無いだろう。なきゃないで別の問題が出てくる。
  • 常に疑うしか無いのかと言えば、そうでもないと思う。おめでたい状態で問題ないのなら、幸福度が上がるだけで済む。
  • 自他の命や人生に関わるとかの、失敗が許されない重要ごとに対しては徹底的に疑う。それ以外のコケる程度で済む話は気楽でいいのでは。
    失敗の許容範囲からして人それぞれだけど。
  • 結局の所、真面目と天然のスイッチ切り替えこそ重要であり、適切な切り替えのための適切な視点(メタ認知)を養うのが近道か。
  • 完璧主義と楽観主義は、スイッチの切り替えをするつもりがない点では同じ。
  • ターリのトークも最後は「備えた上で楽観的であれ」という形で終わっている。
  • 人を含めた動物が、認知的ゲームをしているように見える。いかにこの世を楽しく演出するか。そのスキルが高いのなら、そりゃ幸福度は高いだろうが……、それでいいのだろうか。わからんね。

その他楽観バイアス対策

  • 死亡前死因分析がある。これで失敗を30%減らせるという。
  • 簡単に言うと、既にその計画が大失敗したつもりになって、その「死因分析」を行う。
    • これだけで楽観バイアスが外れる。既に大失敗した所がスタートのため、湧く余地がない。
    • 逆を言えば「失敗怖い」から楽観バイアスが湧く。そのせいで失敗しやすくなるため、これも逆説と言えるだろう。
  • リソースの見積もりは1.5倍にする。企業のプロジェクトの場合、これで丁度いいか、ギリギリかになるそうだ。
クラインの「死亡前死因分析」
死亡前の死因分析、死亡分析と表記ゆれが見られるが、死因分析で統一する。プレモータム分析とも。意味は同じ。行動や計画のリスクを炙り出す、一種のシミュレート。なんつか、「走る前に転んどけ」みたいな。やってみると割と楽しい。人に...

メモ

ストックデールの逆説

・ストックデールは捕虜収容所から7年の後に生還した。曰く、捕虜たちの中で耐えることができずに死んだ者は、楽観主義者だった。

彼らは「すぐに出られる」と思い続けた。クリスマスには出られるだろう、イースターには、今度こそクリスマスには、と希望を持ち続た。

ストックデールには彼らが現実から目を背け、楽観視することで平静を保とうとしているように見えた。

彼らの希望は悉く砕かれ、失望に変わり、そして死んだ。

・反対に生き延びた者たちは「すぐには出られない」と予測していた。長く辛い収容生活がそれまで続くと覚悟していた。結果耐えられたのだという。

・楽観主義者が死に、悲観主義者(厳密に言えば現実主義と呼ぶべきだろうが)が生き残った。この話は「ストックデールの逆説」と呼ばれる。

楽観主義と前向きさとポジティブシンキング:ストックデールの逆説
・人によって加減は違うが、特に楽観主義と前向きは別物だと思ったほうがいいという話。ストックデールの逆説・アメリカ海軍のジェームズ・ストックデール中将は、ベトナム戦争で捕虜となった。彼は過酷な拷問の中でもできるだけ多...

・楽観バイアスはストレスに対しての本能的な逃避、あるいは回避の側面がある。不確定要素や明確な驚異に気づかなければ、心は平穏でいられる。

状況への一種の認知的適応、その意味ではストックホルム症候群にも似ている。心の平穏はあった方がいいが、それと引き換えに自分が何に適応や合理化をしているかを見逃せば、危険かもしれない。

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