- 一気に全部やろうとすると大体詰む。
- 方向性は多分間違っていない。
- 詰んだ課題はいくつかのパーツに分解して対応。
できないからやらない、というより動けない
N課長から「古川、提案書を書いてみろ」と指示されたのです。
私はどうやってつくればいいのかを聞いたのですが、「自分で考えろ」と厳しく突き放されました。1週間後の納期に向けて、私は何をどう進めたらいいのか見当もつかず、ただ時間が過ぎていきます。
結果的に4営業日が過ぎても何も進められず、意を決して怒鳴られることを覚悟しながら「実は、何も進んでいません」と報告をしました。
その時にN課長から言われたのは、「お前は、表紙と目次案ぐらいつくれないのか?」という一言でした。
「なんで、完璧にできないとなったら何も行動しないんだ。はじめから100%できないことぐらいわかっている。問題は自分にできることを何もしないことだ」と手厳しく自分の姿勢を指摘されたのです。
https://www.lifehacker.jp/2018/09/motivation_habit.html
別に完璧主義じゃなくても仕事なんだから、「ちゃんとできないといけない」とは思うこと自体は無理もないんだけどね。4日間なにもしてないから怒られちゃったと。
この場合、上司は「育てるため」の指示をしたわけだ。だが部下は「仕事」として捉えてしまった。というディスコミュニケーションの要素もある。よくある光景だが。
この件の教訓として「初めから100%の完成状態だけを見ていると一歩も踏み出せなくなる」としている。
完璧主義と言えば性格的なものだとされがちだが、このように対象に対しての責任感とかで比較的容易に「できないからやりたくない/やれない」状態は発生する。
引用元では小さな行動を繰り返すベイビーステップの紹介とかやってる。手法はそれでいいとして、この状態の視点や考え方は大きな2分類であるトップダウンとボトムアップの話になるだろう。
どちらも組織の命令体型や経営スタイルとして語られることが多いが、個人の思考パターンも指す。
「できないからやらない」で言えば、「森を作れ」と言われて一気にやろうとし、途方に暮れている状態がトップダウンで行き詰まった状態。
一本一本植樹し始めるのがボトムアップ。
心理学では概念駆動処理(トップダウン)、データ駆動処理(ボトムダウン)とするものがあるが、これはスキーマなどの認知レベルの話だし、今回はこれとは別物。
トップダウン思考
経営スタイルとしては、わかりやすいのは(悪い例だが)ワンマン。上からの命令で現場が動く。
課題の全体を一個体として見る。まず理想像がある。
「やるべきことをやる」であり、「出来ることを探す」ではない。
今回の例の当人の頭の中で考えれば、「目的」がトップにある。完璧主義の場合は理想像。
今回の「完璧にできないからやらない」となるかどうかは、行動の難易度と実力との対比による。完璧主義の場合は理想の高さにより、行動の難易度にいらないボーナスが付き、こうなりやすくなる。
何より完璧主義の「できなきゃいけない」「やるべきだ」と思いやすいある種の絶対性はワンマン臭い。自分の中の命令モジュールと実行モジュールの不和。
デメリットとしては、現場の声を汲み取っていないものとなるので、思ったとおりにできたとしても大きな損失に成り得ること。これも完璧主義の100点と他人の100点が違うという話に通じる。
他に現場から声が上がらなくなるリスクが有る。個人単位で考えれば、冒頭の引用のように、自分から「出来るところまではやってみよう」とは思わないなどが当てはまる。
このせいでフィードバックもなく、余計に一方的になりやすいとも。
「命令が絶対過ぎる」と、頭が固くなるとは言えるだろう。そうじゃなきゃいけない業種もあるけれど。
ボトムアップ思考
こちらは現場からの声を聞くタイプの経営として語られる。現場からの提案に対しての承認や指示。
課題の全体をパーツの集合体として見る。現在地からゴールへ向かう視点。
「出来ることを探す」であり、「やるべきことをやる」ではない。目標を持った行動というよりは対応・対処的。柔軟ではあるが。
こちらは今回で言えば、「自分でわかること・出来ることからやる」ということになる。
デメリットは、水平線効果だろう。数手より先が全く見えないため、見えている範囲のベターを選ぶが、そこが最終的に行き止まりであるリスク。
『船頭多くして船山に登る』ことも考えられる。色々と気になりすぎて場当たり的な統一感のない行動になったり。このような時にはトップダウン的な「いいからまずこれをやれ」という考えは有効だろう。
根本的な話だが、目標設定がない場合完全に場当たり的な対応になる。最悪やらないほうがマシな行動にもなり得る。ボトムアップ単品では「軽率さ」を含めるのは確かだ。トップダウンと比べて見通しは悪いから。「できないからやらない」という人が恐れているのもこの点だと思われる。
ボトムアップ思考の場合「仕事が遅い」ともされる。無駄な行動が多いから。総じて、目的がとっちらかってるのは否めない。行動は目的に準拠していなくてはならない。
2つを使い分ける
この2つは正反対であり、同時にはできない。ただし相性自体はかなり良い。お互いに欠けているところをフォローできる。
前述の通り、ボトムアップ思考の方が場当たり的で手際が悪い。改めて「できないからやらない状態」を見直してみると、「止まってる」状態がよろしくないが、方向性自体は目標に向いている。ブレてるわけじゃない。道はあってる。
後は動けるようになるだけだ。足りないのは「具体的に何をするか」であり、これはボトムアップ思考に利がある。
必要なのは「トップダウン思考を枠組みとしたボトムアップ思考」だと言える。つまり目標の範囲に限定された効果的な行動。ベースはそのままトップダウンでいい。
多くは課題に対してまずトップダウン、行き詰まったらボトムアップ、という形で乗り越えることが多いように見える。
今回の「できないからやらない完璧主義」は行き詰まってもボトムアップに切り替えていない。トップダウンで行き詰まった、できないからやらない、となっている。
別にやる気は出さなくていいが、ボトムアップ的に「その課題に貢献する今できる小さなこと」のリストアップも手ではある。必要なのは決心ややる気よりも、情報集めと再考だろう。
そもそも「できない」と思うのが、「一気にやろうとしているから」だとも言える。千里の道も一歩からと言うが、千里歩くのと千里ジャンプするのとじゃ難易度が桁違いだろうというか無理。
全体をいくつかのブロックに区切り、「片付けていく」という発想も時には有効だろう。
課題が「一枚絵」に見えるのがトップダウン、ジグソーパズルに見えるのがボトムアップとも言えるか。一枚絵を単純に2つに分けるだけでも、「できない」と思うラインは半減する。
この概念は別に珍しいものじゃなく、マイルストーン(中間目標)の設定、WBS(Work Breakdown Structure)でタスクの細分化など、割と一般的だと思われる。