ルーチンワークについて

ルーチンワークとは

・内容が決まっている作業。定型的、習慣的な作業。機械的。

イメージがいくらか悪い。刺激がなく、退屈で、繰り返し行われる作業だと。「繰り返しの毎日」の象徴というか、死んだ魚のような目をしてやるものだというか。ただこれはルーチンそのものじゃなくて、「それをやらされる/押し付けられる」所から来ている連想の嫌悪感だと思う。

・一方でスポーツ選手の試合前の特定の「儀式」などもルーチンと呼ぶ。流石に「ワーク」ではないが。ルーチンにより自分のペースを維持したり、取り戻したり、リラックスするなどの効果が期待されている。


一般人で身近な例といえば、入眠儀式か。寝る前に一定の行動パターンを実行すると入眠しやすいという話。もっと身近な例では、制服やスーツに着替えれば気持ちが学生/社会人モードに切り替わるなども含んでいい。このルーチンには古典的条件づけな部分がいくらかある。

「これをやっておかないと落ち着かない」というような習慣。その様な肯定的なルーチンもある。食ったら歯を磨かないとみたいな。

・一部の人は自分の仕事パターンをルーチンと呼び、目的をそこに落とし込んでこなすことを良しとしている。そういった意味で「自分のペースそのもの」だとも言える。

作家には執筆に於いてルーチンやルールを設定している者も多い。書く時間、書く文字量、書く時のルール(執筆と調べ物は完全に分けるなど)など。彼らは自由なイメージを持たれがちだが、その自由を謳歌すると生産性がゼロになる。休日とは違う。生活がかかっていると考えればこれはまずいと嫌でもわかる。

作家はルーチンを自己開発する必要が一番ある職業かもしれない。漫画家の荒木飛呂彦が、デート中に「日課だから」って理由で相手待たせてトレーニング始めたって話もあるな。ルーチンに拘る作家は割と多いように感じる。


ヘミングウェイやスティーブン・キングもそうだし、ポモドーロテクニックの提唱者も本の著述者だし、33分33秒のユージンシュワルツもそうだ。
ライフハックの影響を著しく受ける職業、とも言えるが。

ルーチンワークのメリット/デメリット

・ルーチンワークは私の個人的な考えの一つの答えかもしれない。即ち、「やる気や集中力に頼らない生産性」。自分を自動工場化した上でその生産性の管理に回るというか。

まずやる気や集中力の最大の欠点である再現性のなさをクリアしている(ルーチンが身についたことが前提だが)。スポーツ選手や入眠儀式の例の通り、むしろ「ペースを取り戻す」かのような意味合いすらある。

次に環境構築。そのタイミングでその行動を取る、ということを繰り返していれば、周りの人間にしても邪魔にならないかどうか判断しやすい。またその様に一日をスケジューリングする、場を整えるなどを自然と行うため、それに専念しやすい環境づくりとなっている。

更に「やること」をはっきりさせるため、身につきやすい。何が足りないのかも見つけやすい。ルーチン自体は繰り返される同じことだが、当人のそれへの適応は恐らく早い。

何よりも「手を付けるためのやる気が必要」という忌々しい事態になる必要がないという点がある。やる気や義務感や使命感やらで盛り上がってからじゃないと初められないよりは、「時間だから」「次にやることはこれだから」それだけの理由で手を付けることができたほうがよほどいい。これまたそのルーチンを体得したらの話だが。

ルーチンのような機械的なもの、もっと言えば束縛的な「ルール」は創造性を殺すと思われがちだが、反対に制限付きのほうが創造性が上がるという報告もある。制限付きのほうがアイデアが出やすいなど。

・注意点としては、これは小手先のライフハックではなく、習慣化だということだ。身につけるもの。体得するもの。今この瞬間に脳内設定したところで、流石に無理がある。一朝一夕で効果を得られるかと言えばそれはない。特に初日は、窮屈で疲れるだけだと思われる。朝鍛夕錬でなくてはならない。価値があるのはルーチンそのものではなく、それを体得した自分となる。

このため成長や教育といった観点で行う必要がある。無理を押し付け「耐えてみせよ」では恐らく破綻する。それは乗り越える(=一度切り)の努力の仕方であり、体得する努力とはまた毛色が違う。

・ダイエットの失敗率はかなり高いんだが、いくらかは目標体重に一度到達しているらしい。つまりリバウンドして失敗となっている。これも乗り越えるつもりの努力(=一度達成したらおしまい)の結果だろう。

もう一度言うが、価値があるのは「体得した自分」である。この場合も太らない/痩せる生活習慣を身につけることに同じだけの労力を注げば結果は違っていたかもしれない。

・保守的であることは否めなく、思いつきの挑戦や冒険とは相性が悪い。これらは試みたり経験すること自体にも価値があるが、ルーチンは完遂が求められる。不確定要素は専用に時間を用意した方がいいか。

拡張というか、新規開拓というか、これらもまた必要となる。一生現状の能力でやってけるか、と言えば大抵はそうではないから。

また、ルーチン自体も拡張や整理などの手入れが時に必要になる。環境もまた変化するから。

・総じてスケジュール実行能力が高ければ向いている。衝動性が高ければ苦手分野となるかもしれない。後は予定がストレスになる人も初めはしんどいかもな。

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