選択的注意とは
・特定の対象に注意を向けること。
代表的なのがカクテルパーティ効果。雑然として一つ一つの音はとても聞き分けられない中でも、隣のグループが自分に関係ある話をしていれば、自然と耳に入るだろう。
このように不要な情報を拾わず、必要な情報は拾うという選択をしているから選択的注意。
・選択的注意には2種類ある。カクテルパーティ効果のような自然と注意が向く「不随意的な選択的注意」と、自らが意識して注意を向ける「随意的な選択的注意」。外発的注意、内発的注意とも。
・コンプレックスや恐怖症にも見られる。体重を気にしている人間が、他人が太ってるか痩せてるかやたら気になったりなど。
両耳分離聴の実験
・基本的に意識した部分は印象に残りやすく、記憶もしやすい。
心理学者のエドワード・コリン・チェリーは1953年に以下の実験を行った。
・左右の耳で別々のメッセージを聞かせる。
・どちらかの耳を指定し、そちらに注意を向け、その内容を声に出すように指示。
・無視している側を変化(男から女の声、英語からドイツ語など)させ、無視している側のメッセージの理解や変化への気づきなどを測る。
結果として、「意識をしていない側」のメッセージは全くと言っていいほど聞き取れなかったようだ。
物理的な特徴は検知できたが、意味的な特徴は検知できなかったとのこと。細かく言うと、
男→違う男の声:気づかない
男→女 :気づいた
同一人物で使用言語を変化 :気づかない
400サイクルの機械音 :気づいた
・これは、音の質の変化が目立つと不随意的な選択的注意が働くとも取れる。
ちなみにカクテルパーティ効果を提唱したのがチェリー。
・ここでの知覚は二段階ある。物理的刺激の段階と、意味的な段階と。
音自体は聞こえている。耳は働いている。だから質的な変化には気づけた。それでも男から違う男への変化程度では気づけないあたり、注意力としてはかなり弱いだろう。
言葉、つまり意味的な変化と理解にはかなり鈍かった。そちらは意識している側に向いていたから。
つまり「音としては聞こえているが、言葉としては聴いていない」という状態。
・どうも「意味」を処理する部分は、基本的には一つの対象にしか向けられないようだ。これはマルチタスクが効率が悪いという話とも繋がる。
アポロ・ロビンズのトークでこれは「体験」できるだろう。
注意力と情報処理
つまりは彼の言うところの「フランク」が意味を理解する機能も司っていると考えられる。
言葉だけではなく「変化」が、つまり「何が起きたのか」が、動画を見れば分かる通り目の前で行われても気づけないこともある。
・またアミシ・ジャー曰く、注意力とは増幅装置のようなものとされている。
言葉は一種の符号であり、「これはこういう意味だ」という事前に定められた知識群だ。さらに複数の解釈の余地があるのが大体であり、文脈的に正解を選ぶところまでを私達は無意識に行っている。
「増幅」とは、これら連想、想起などの「分析・把握・理解」を含めるだろう。
チェリーの実験からは、これらがある程度の意識リソース(つまり注意が向いていること)が必要であることが推察できる。
メモ
何かに気が向いている時は、それ以外が疎かになるということ。
意識して何かに気を向けることもできるが、何かに気を「取られる」こともあるということ。
これは時に、信じられないレベルの行動をその者に行わせる。
例えば高所作業中に道具を落とした。それを「つい」拾おうとして、自分が落ちたという例すらある。高所に居ることを忘れたということ。
集中できない、というのは大抵の場合、対象にフォーカスが当てられないと言うよりも、対象以外の何かに勝手にフォーカスが当たってしまっている状態が多い。
ポモドーロ・テクニックのシリロ、if-thenプランニングのグラントなども、自身の内側からの思考、感情、思いつきなどを大きな障害になるとして警戒している。
これらは今回で言うところの不随意的な選択的注意であり、何かに集中しようと言うよりも、余計なものに気を取られないような工夫も有効となるだろう。
実際集中法の一部として環境構築は挙げられることがある。例えば気が散りそうなものを避けるなどの、基本的なこととして。
関連ページ:
_25分集中 5分休憩:ポモドーロ・テクニック
_if-then プランニングと習慣化
参照:
https://psychoterm.jp/basic/cognition/03.html
https://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/kaihodic.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/コリン・チェリー
https://ocw.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/Psychology-2009-Note-09.pdf