フリードマンとローゼンマンによる性格分類
・アメリカの医師、心臓専門医のメイヤー・フリードマンとその同僚のローゼンマンにより定義された性格分類。
それまでも特定の性格が虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)になりやすい傾向にあるとされていた。その「心臓病になりやすい性格」を彼らが明確にした。
注意が必要なのは、彼らはタイプAとBしか定義していない点。CとDはそれぞれ別に、後から追加されたものだ。
・ここでは一概に「性格」としているが、厳密に言えば「行動様式」と呼ぶほうが正しいだろう。特定の集団やグループに見られる共通の反復行動。
・この分類には特に名前がついてないようだ。タイプA B C D とそのまま呼ばれている。
タイプA
・Aggressive(積極的/攻撃的)のA。
「なぜここの診療所の椅子ばかり、前張りが擦り切れるのが早いのですか?」と、椅子職人に聞かれたのがヒントになった。
心臓専門医であるフリードマンの患者たちの多くは、頻繁に立ち上がり、歩き回り、待ってる間イライラしている様子で、座ったとしてもすぐに立ち上がれるように椅子に浅く腰掛ける傾向が高かった。
・虚血性心疾患の患者に特徴的な行動パターンとされる。後述するが、後に虚血性心疾患の危険因子として認められている。
タイプA:A型行動
・心疾患のリスクがタイプBと比べて2.2倍。
A型行動の心臓病への影響を調べた研究では、アメリカのビジネスマン39歳から59歳の健康な男性3154人をA型行動群とB型行動の群で分け、その後8年半にわたって経過を調べました。
すると「図1」に示したように、心筋梗塞や狭心症の虚血性心疾患の発症率が、A型行動はB型行動に比して約2.2倍と高い発症でした。別の研究では、女性も同様の結果でした。
そして、アメリカでは1980年代になってA型行動が独立した虚血性心疾患の危険因子として認められました。日本人でもA型行動と心疾患発症の関連が、高い結果が示されています。
http://www.aurora-net.or.jp/life/heart/kikeninshi/77/index.html
・行動様式は以下。
- 捉えどころのない敵意を持っており攻撃的。この攻撃対象には「時間」や「自分」も含まれる。このせいか「止まるのが嫌い」ともされる。休もうとしない。
- 短気であり怒りっぽい。
- 精力的である。大声で早口、多動であり動きも速い。
- 目標を常に達成努力する。
- 周囲に認められたい欲求が高い。競争的であり、ライバル心が激しく出世欲も強い。過剰に活動的。
- 多忙であり、時間に追われている。
この中で決定的な要素は「敵意と怒り」とされる。
・これらの性格的特性からストレスをためやすく、心臓・血管に負担を掛けやすい。
これにより交感神経が活発、というか戦うか逃げるか反応のような状態になっていると思われる。これは続くと死ぬことがある。ブロークンハート症候群とかたこつぼ心筋症とか呼ばれている。この場合、ついでに癌にもなりやすい。
病気になったら病気になったで、几帳面だから真面目に治そうとするとも言われている。しかし突然死の場合、当然ながら療養する時間はない。
ちなみに、突然死の約半数が虚血性心疾患だそうな。
これだけ並べると「死ぬ性格」にしか見えないが、それほど宿命的でもない。
A型行動の虚血性心疾患患者に、A型行動を修正する治療を他の治療と並行して施した場合、再発率は半減した。
特に男性に於いては、カウンセリングで敵意と切迫感を減らすことが効果的だったという。となると認知療法の領域かもな。
簡単にいえば、世の中に敵意と切迫感を募らせる物事があるんじゃなくて、そう見せている認知の問題。
・ジェフ・コンテ准教授の実験では、一分間をどのくらいの長さに感じるかの計測でタイプAは平均58秒だった。
日本のタイプA
・タイプAの心疾患リスクは、国や文化の違いによる影響はないとされることもある。しかしアメリカと日本では違うとの意見もある。
性格は元からの気質もあるが、それがどのような形で行動に現れるかには生まれ育った環境の影響も受ける。これには家庭や人間関係だけではなく、その国の文化も含める。
つまり、フリードマン達が見た「タイプA」と日本人のそれとは異なる点がある。
文化的背景として協調や連帯感があるため、日本のタイプAは「断ることができずに仕事を抱え込む仕事中毒」が多い。
反面、協調性を保つために敵意や攻撃性は表さないとされる。
ただこれは表に出さないだけで、内面的には敵意や攻撃性は発生しており、身体に良くないことには変わらない。この時点で戦うか逃げるか反応にはなっている。
他にもタイプA研究は行われている。ただ、タイプBと比べながらの方が理解が早いため、後述。
タイプB
・二人の医師が観察していたグループの内、落ち着いた様子で座っていた者たち。
・特に健康面ではリスクはない。
・Being(あるがまま)のBとする説がある。
・タイプAより時間に対して切迫感を感じていない、非攻撃的な行動パターンと定義される。
・注意するべきは、「タイプB」の内容は二通りあること。
1つは「タイプAに当てはまらない人」とだけ定義される場合。こちらは恐らく古い。
もう一つはタイプAと正反対のマイペース、協調的とされる場合。
基本的に「タイプC」がないAとBの話の場合は前者の意味で、タイプCがある場合は後者の意味として使われているようだ。
・穏やか。
・落ち着いている。
・時間にルーズとされる。
・楽観的。
・心臓疾患のリスクはタイプAの半分程度。
・一方、遅刻魔レベルのマイペースとして扱われていることもある。ルールを守らないなどとも。
・タイプAと同じくジェフ・コンテ准教授の実験では、現実の一分間を平均77秒に感じている。
・フリードマン曰く、タイプAの方が出世しそうに見えるが、実際はタイプBの方が出世するとのこと。単純にタイプAが途中でぶっ倒れるからってのが理由だが。兎と亀みたいだな。
時間不安とタイプA
・時間不安とは、時間がない、時間に追われている、時間が足りない、タイムリミットが近いなどの感覚。焦り。
時間の経過そのものが脅威となっている。強迫傾向と正の相関があるとされ、精神的不健康を引き起こす原因ともなる。
そして、タイプAとも強い相関がある。
1分間を何秒に感じるかのテストで、彼/彼女たちは平均58秒に感じていた。タイプBと比べると時間を「遅い」と感じていると言えるが、単品で見てみると「時計の時間」に近い正確な時間感覚だとも言える。
日ごろ時間を意識しているために「時計の時間」に感覚が修正されてきたとも考えることができる。
・タイプBはマイペースで、ともすれば時間にルーズとされる。1分間を77秒に感じる感覚を持っている。これは時計の時間より「早い」時間間隔を持っていると考えられる。
少々ややこしいかもしれないが、簡単に言えば60秒で77まで数えるためには1秒より早く数える必要があるだろとか言えば伝わるだろうか。
これは相対的に時計の時間がゆっくりに見えるということだ。これだと時間不安は感じないだろう。
タイプAは時間感覚が正確だからこそ焦り、タイプBは時間が「伸びて」感じるためマイペースでいられるということも考えられる。少なくともタイプAはタイプBと比べて「切迫感」があることは確実だ。
いろいろ調べてみても、別にタイプBが特別に優れているようには見えない。タイプAとの差はタイプAの「自爆」が原因に思える。
決定的に違うのは、「時間不安」があるかないかだ。
・Winnubst(1975,1988)により、時間不安が強い場合には以下の強迫的な行動を示すと結論付けられている。
- リラックス能力の低さ
- 時間の自己制御感を好む
- 作業が遅れることの嫌悪
「仕事人間」って言葉が思い浮かぶね。
・時間不安は当人の性分として扱われてきたが、それだけでもないようだ。「場面/状況」によって変わるのではないか、という研究もある。
まぁ簡単に言うと、「こういう時によくテンパる」という「弱点」ってあるんじゃないのみたいな。
そこで見つかった因子は注目に値すると思われる。
第一因子 経過意識
- このまま年をとっていくのかと思った時
- 自分の人生が過ぎるのが早いと感じる時
- 時間が過ぎるともう戻れないのではないかと感じた時
- 休日を過ごしていてすぐ終わる感じがする時
- 休日の夜、明日から学校だと思った時
- 過去を振り返ってみた時
総じて「時の流れ」を意識した時に感じる焦り。タイプAは特に経過意識が強いそうだ。
第二因子 予期懸念
- 待ち合わせで相手がなかなか来ず、何かあったのではないかと感じる時
- これから嫌なことに立ち向かわなければならない時
- 周りに取り残されているように感じる時
- 授業や待ち合わせに遅れそうな時
- 親しい人との別れが近づいている時
- 授業などで自分が発表する順番を待っている時
これは、「今のまま時間が流れたらよくないことになるかもしれない」という焦りだろう。そこからの「自分は今、何かしなくてはいけないのではないか」という。
第三因子 目的未達成
- やらなくてはならないことがまだ手つかずで、何もできずに一日過ごしてしまった時
- 予定をうまくこなせていない時
- 課題の締切が迫っているのに、それがまだ完成していない時
- 試験があるのに勉強していない時
やるべきことがある/あったが、間に合っていない時。
「明日学校」ってのが予期懸念じゃなくて経過意識に入ってるのも興味深いな。
これらの因子とタイプAとの相関も研究されたのだが、経過意識のみが強迫性とタイプAを強化し、予期懸念や目的未達成はそうではなかった。第二、第三因子の不安では強迫性やタイプAには影響を及ぼさないと考えられた。
参照:https://www.kurume-u.ac.jp/uploaded/attachment/2371.pdf
タイプC
・癌になりやすいとされる性格傾向。
さらなる研究で後に定義されたとされる。このため、タイプCが話に出てこないパターンがある。
・Cancer(癌)のCとされる。これは心理学者のリディア・テモショック、科学担当記者ヘンリー・ドレイア。
両名は150人以上の患者と面接を行い、四分の三にこの傾向があったとされる。
・わかりやすく「(都合の)いい子」。
・おとなしい。控えめ。
・自己主張をせず、自分を抑える。
・自己犠牲的。周囲に気を使い、譲歩する。つまり他人を優先し、自分のことを後回し、或いは放置。
・我慢強い。感情を押し殺す。あるいは「怒りに気づかない」とされる。他の感情も同様。
・真面目で几帳面。
・権威や外界に対して従順である。
・癌発症後、進行が早いらしい。慢性的なストレスを溜め込みやすく、それが免疫を下げると考えられている。
タイプD/タイプD気質
・初耳なんだが。なんかあった。
・岡山大学がこれについて論文出してるため、少なくとも都市伝説ではないだろう。オランダでも研究されていたようだ。
・うつ病と心疾患、肥満のリスクが高いとされる。
・distressed(動揺して、酷く苦しんで、行き詰まった、などの意)のDとされる。
・否定的な感情、考えを抱きやすい傾向。
・他者からの否認や批難などを恐れるため、否定的な感情を表現できない傾向。
・人見知り。人と関わりたくない。社会的な能力由来の心配性。
・打たれ弱い。落ち込みやすい。
・内心はイライラしやすい。
・オランダの研究に依ると、欧米では全人口の20%がタイプDとされる。
・岡山大学の研究に依ると、日本人は46.3%がタイプDとされる。ただしこれは65歳以上の高齢者が対象の研究だった。
調査票を送り、回収した13,929票がサンプル。
この分析で更に、心理的苦痛を感じるリスクが4~5倍、自分は不健康だと感じるリスクが二倍であるとされた。
さらに気分障害などの重篤な精神疾患のリスクが9.92倍。高齢者のみの調査とは言え、他の年代でも無関係ではないだろう。
・心血管疾患のリスクが3倍。これだとタイプAより酷いってことになるのだが。
ストレスを非常に受けやすく、ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により体調が崩れるとされる。これは血糖値、血圧などに関わっている。
メモ
・タイプCについて。彼/彼女らは感情を認めない・気づかないよう心がけているように見える。
ただ、知覚していないだけで感情やストレスは「発生」自体はしているため、やはり身体に影響はあるようだ。アレキシサイミアというよりは、感情労働を日常的にしている状態だろう。アダルトチルドレンを彷彿とさせる。
・ロバート・クリーゲルという博士がこれとは別にA型、B型、C型の性格分類をしていたという話がある。
この場合AとBは今回と似ているが、Cは理想形とされる別物らしい。ストレスに強く、プレッシャーがあっても最高のパフォーマンスを発揮するだとか。
参考
http://fanblogs.jp/psychological/archive/4/0
https://tocana.jp/2018/01/post_15603_entry.html
http://www.nrec.sakura.ne.jp/type%20A.htm
https://ameblo.jp/ricorico1214/entry-11731667092.html
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2014/003314.php
http://www.aurora-net.or.jp/life/heart/kikeninshi/77/index.html