ブアメードの血・ノーシーボ効果

ブアメードの血(ブアメードの水滴実験)

 ノセボ(ノーシーボ)効果、つまりマイナスのプラセボ効果の例として扱われることが多い。

まず最初に言っておくが、ブアメードの血は「都市伝説」の可能性が高い。少なくとも実際に行われたかが不明である。

話としてはだいたい以下のようになっている。

1833年のオランダ。ブアメードという政治犯がおり、死刑宣告を受けた。

生還したら釈放することを条件に実験の協力をすることになる。
その実験は「人間は体重の三分の一の血を失うと死ぬというのは本当か」を試すというものだった。

目隠しをされ、手足を固定され、台に寝かされる。徐々に出血するように足首に軽くメスを入れ、経過を観察する。

医師たちがブアメードにも聞こえる声で「どのくらいで死ぬか」を語り合う。
(事前に「どの様な過程を経て死に至るのか」の説明をされたとも)

ブアメードの耳には自らの血が溢れる音が聞こえ続け、徐々に顔色が悪くなる。定期的に助手が何分経ったか、出血はどのくらいか、致死量から見て何%か報告する。

助手が出血が致死量に到達したことを伝えた途端、ブアメードは息を引き取った。




実際には足首は全く切っておらず、メスではなく薄い鉄板を当てただけ。
(あるいはごく浅くしか切っておらず、出血はしたもののすぐに止まっていた。)

助手の報告する出血量も、予定された嘘だった。血の滴る音は、用意された水滴の音。

実験は初めから「思い込みで人は死ぬか」を調べるものだった。

つまりブアメードには死ぬ理由がないし、死ぬわけがない。拠って、思い込みにより死んだことになる。


ブアメードの水滴実験の真偽について

 ここが詳しい:http://transact.seesaa.net/article/435836966.html
かなり丁寧なページだったので、そっち読んだほうが早いかもしれない。

ざっとまとめると、

1886年英国の医学雑誌であるLancet誌に掲載されたのが初出と思われる。同じく1886年に複数の雑誌で掲載されている。

この時点では傷をつけられるのが首だったり、具体的に「6分が経過すると死亡する」と宣告され、実際死ぬなど細部が違う。

この時点で執筆者、実験自体の年代が不明。場所も英国だったりして、オランダじゃない。

Lansetは現代では査読制の医学雑誌であり、世界五大医学雑誌ともされている。「現代では」。
wikiを見ると創刊号が1823年、面白いことに出版国が「オランダ」になっている。

1887年には「フランス皇帝ナポレオン3世が、フランスの医師に実験の許可を出した」という記事が出ている。

この後はインドを経て、この間にインドの医師がやったことになったり、椅子に縛り付けられてることになったりと二転三転。

そして、日本にたどりついた。


「ブアメード」という死刑囚の名は、日本に輸入されてからつけられた可能性がある。

「ブアメード」という名は、笠巻勝利(1998)以前に見当たらない。

http://transact.seesaa.net/article/435836966.html

日本内でも多数の書籍で紹介されているようだが、失血量が10%だったり三分の二だったり、血を少しも抜いてなかったりちょっと抜いたりと全く安定していない。


この伝言ゲームから察するに、ブアメードの水滴実験は都市伝説だろう。

これだけ長い間各国を渡り歩いた話で、明確に「追加された」と言えるのが死刑囚の名前だけだというのも興味深いが。しかも日本で。


参照先にあったが、ブアメードの血と同じパターンの「冷凍室と作業員」という話があるらしい。

  1. 作業員が冷凍室に閉じ込められた
  2. 一晩経って発見されたが凍死していた
  3. 冷凍室の電源は最初から入っていなかった
  4. つまり思い込みで死んだ

という話。

ノーシーボ効果

 ブアメードの血自体は、時の試練に打ち勝った都市伝説ということでまず片付いたが、思い込みに害がないというわけでもない。

ブアメードの血は、ノーシーボ効果によるものと説明される。プラセボ(偽薬)効果の逆。半偽薬効果、ノセボ効果とも。

簡単に言えば、「有害な暗示や思い込みによりその通りになる現象」といったところか。

例としては、薬の副作用を気にしすぎると副作用が強く出てしまうなど。

  • 副作用どころか、出るわけがない作用がでることもある。

分かりやすい例としてこんなことがあります・・・

「この薬の副作用として眠気がでる場合があります」と説明してカフェインを処方します。

するとあら不思議、一定数の患者さんは次の診療日に

「先生、あの薬を飲んだら眠くなっちゃいました」

、こんなことが実際に起こり得るのです。

https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/1055/

  • 「偽薬」と名がついてはいるが、アイテムがなくても起こり得る。

例えば自分の体質に「思い込み」があった場合にもこれは起こりうる。

1996年にレベッカ・フェルカーが発表した研究によれば、「自分は心臓病にかかりやすい」と信じている女性の死亡率は、そう信じていない女性の4倍にのぼったということです。

https://toyokeizai.net/articles/-/77748?page=2

裏を返せば、暗示の効果は日常的にそこら中に有る。

VRギロチン

・VR空間で生活するゲームに於いて、VR上のギロチンを体験してみよう、としたプレイヤーがいた。このゲーム自体はかなり長時間プレイしていたらしい。

同意の上でギロチンに固定され、他のプレイヤーが刃を落とす。

「Battle of Camlann」では、ギロチンの歯が見えるようにユーザーは仰向けにさせられ、斬首のタイミングは他のユーザーに一任されています。

最初は未知の体験にワクワクしながら待っていたnarihara氏でしたが、友人たちの言葉から、段々と「死」を意識してしまったとのこと。

そして、「静寂の中で時計の音がカチコチ鳴り響いて、首を動かせないまま、これから落ちる刃を見つめていると、VR空間であることを忘れて『死にたくない』と心から思ってしまった」とその時の気持ちを語っています。

刃が身体に触れた瞬間は、「ぐえっ」という声と首元への強烈な触覚と共に、意識が遠くなってしまったとのこと(ワールド側の仕様で、アバターの首から血が流れるようになっています)。

全く動けなくなってしまったnarihara氏を心配した友人たちが駆けつけ、声を何度もかけたところ意識が復活。しかし、手足は痺れた感じがし、冷や汗が止まらず、立とうしても立てなくなってしまったそうです。

https://www.moguravr.com/vr-guillotine/

・意識を失い、気づいてからも身体が言うことを聞かなかったと。

息苦しさ、意識が飛ぶ時の感覚、ボーっとするなどの症状が30分ほど続いたとのこと。次の日には心身ともに回復。

・次にこの話を取材した記者が体を張った。なぜやった。
こちらもかなりの長時間プレイヤーだったそうだ。

危険性は重々承知しています。今回は友人2名の付き添いのもと、断頭台で処刑を実行してもらうことにしました。

断頭台は使用すると自動的に寝そべった状態に体勢を変えられて刃の下に行く仕様ですが、この時点で汗や呼吸が早くなっていることを自覚していました。

また、筆者はVR環境で体験したのですが、無意識のうちに手を顔の横まで上げ、自分から「拘束されている状態」にまでしていたようです。

そしてフレンドに声をかけ、いよいよ刃を落としてもらいました。

刃が落ちてくる様子そのものは迫力があるわけではないのですが、問題は自身が処刑されたという“事実”があったこと。

筆者には明確に冷や汗や気持ちの乱れが起き、そして一番顕著だった症状は一緒に切り落とされた左手に痺れが発生したことです。

幸いにそれ以上に酷い症状は発生しませんでしたが、30分ほどはこうした状態が続きました。

https://www.moguravr.com/vr-guillotine/

・こちらも症状が30分ほど尾を引いたとされる。症状が比較的軽かったのは、前例のおかげで「どうなるか」をある程度予測できていたからではないだろうか。

・VRでは触覚や嗅覚など、視覚ではない感覚を感じるのはそれほど珍しい話ではないらしい。

プレイ時間に比例して、アバターが触れられれば自分もそう感じるなど「感触」を知覚するプレイヤーは多いようだ。

「魂の適応度」などと呼ばれているそうな。一見大げさな呼び方に見えるが、今となっては妥当かも、という印象。

この点からVRに対して脳が何らかの学習/適応を進めていると思われる。実際の皮膚感覚よりも視覚が優先されていることにもなるか。

・五感は相互補完の関係にあり、この場合視覚情報から他の五感が自主的に「錯覚」を発するそうだ。

VR以外でわかりやすいのは、例えば海岸の写真を見て潮風や波の音が自然と思い浮かんだりなどが挙げられる。

特に視覚は他の感覚より優先度が高いため、視覚を他の感覚が補助する形になりやすい。

・個人的な経験としては、結構昔にヘッドマウントディスプレイで主観視点のダークファンタジーなARPGやったことがある。

まぁモニターでやるのと勝手が違うから雑に進めてたんだが、雑に進めすぎてスケルトンに頭かち割られて死んだ。

額の部分がかなりムズムズするような違和感があったのを今でも覚えているな。死ぬ夢を見た時の感覚に似ている。
古いゲームで画像が荒かったからまだマシだったのかも知れない。リアルだったらもっと強い衝撃だったのだろうか。

銃で撃たれると死ぬ

実はそんなでもないらしい。

ストッピングパワーとは拳銃などの小火器が持つ「人を行動不能にする能力」を指す。wikiでは中枢神経の破壊だとかえぐい話が載っている。流石に人間撃って数値化するなんてできないため、具体的な数値で表されることはない、概念的なものだ。

この記事で面白いのが、「銃で撃たれる衝撃は実は大きくない」とされていること。
そしてその上で「撃たれると即座に行動不能になる人間が多い」こと。

アメリカの銃撃事件の被害者に対する調査によると、実に40-50%のケースにおいて、撃たれた箇所が致命的な部位でもないにもかかわらず、即座に行動不能になったという事実が確認されている。
これらは一般人が、世間のメディアやエンターテイメントに流通する過剰な銃の威力の表現に対し、刷り込みをされているからだといわれている。

映画等では小口径の、実際には威力の低い銃で撃たれたにもかかわらず、演出のために吹き飛ばされるように倒れる表現が目立つ。
しかし銃で撃たれた事による衝撃は、実は大きくない。44マグナムでさえ人が歩く1/20の仕事量しか発揮できない。
その刷り込みのため、「撃たれたら死ぬ」との強い思い込みから致命的な部位に銃撃を受けなくとも、行動不能になってしまう。

これは心理的なものなので、実際の効果については個人差が大きい。事例では、銃を向けられて発砲音を聞いただけで撃たれたと勘違いしてしまい、急に苦しくなり、即座に立っていられなくなったというものもある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%91%E3%83%AF%E3%83%BC

・ドラマや映画などで日常的に摂取している「情報」から、「銃で撃たれたらどうなるか」を学習する。しかしそれは誇大的な表現であるようだ。

つまり実際には事実ではなく、間違った情報をそのまま採用してしまっている。

・実際に撃たれた時、脳はその情報を「採用」する。「死ぬような衝撃だ、きっともう動けない」。
極めつけは「当たってないのに苦しくなって立っていられなくなる」点だ。

ただこれは「撃たれたと思ったから」なのかもしれないが、同時に「撃たれた前提での体の反応」のせいで苦しくなったのかもしれない。

経験者は「苦しくなった」とは言っているが「痛みを感じた」とは言っていない。

ギロチンの例でも「痛み」の話は出ていない。私が個人的に経験した前述の時も感じたのは「強烈な違和感」であり痛みではなかった。

「イメージ/暗示通りの結果が実現された」のではなく、ギロチンや銃が事実だった場合の「身体的反応」が起きただけに見える。この場合、暗示の効果は身体のポテンシャルの範囲に収まる。当たり前といえば当たり前だが。


催眠術で「これは熱した鉄だ」と告げてペンとか押し付けると水ぶくれができる、なんて話がある。真偽は知らんが、事実だとしても水ぶくれの中身は血症に近く、自前でできそうっちゃできそうだ。

キリストの生誕祭だか命日だかに手足から痛みはないが出血する聖痕・スティグマと呼ばれる現象も、信仰心による暗示であり、出血は毛細血管が破れてるだけだとかなんとかいう説もあったかな。

ブードゥー死

・ギロチンと銃による撃たれた錯覚は「一瞬」で終わる。症状も後に引く。

ブアメードの血はどうだろう。

身体から流れ落ちる血により「徐々に命を失っていく」とする認知状況。その状態で拘束され、好転の展望は見えない。

認知的には「死に至る状況」が刻一刻と悪化しながら(失血しながら)ずっと続いている状態。

ひょっとしたら、死ぬかも知れない。


・ブードゥー教は西アフリカの民間宗教であり、呪術師と言ったイメージの方が近いだろう。「奴隷の宗教」として案の定キリスト教にボコボコにされた歴史がある。

一部は大好きな「ゾンビ」という概念はこのブードゥー教(の源流の精霊信仰ヴォドゥン Vodon)が元ネタである。

そんなブードゥー教には普通に「呪い」がある。とんでもないことに割と本当に死ぬとされている。日本で言う所の丑の刻参り、藁人形に五寸釘打ち付けるアレに近い。

「ブードゥー死」と呼ばれ、医療人類学(近代医療がない地域での医療と宗教の結びつきなどの研究)の分野では割と大きな研究対象らしい。


・有ろう事かウォルター・B・キャノンが確かに効果があるとの論文を発表した。まぁそれが1942年だから見直したら粗があるのかもしれないが。

ただしこの論文で挙げられているらしいトゥピナンパ族は今では絶滅したか、それに近い状態だとされる。

この「呪い」もどうも特に信者に効果があり、信者が「自分はタブーを犯したから罰が下る」あるいは「神官に呪いをかけられた」と自覚してから死ぬ流れのため、「思い込みによる死」だと思われる。「宣告」はほぼ必須のようだ。

このためブードゥー死は文化依存症候群として扱われる。なおこの論文自体はブードゥー死を一種の「ストレス死」として説明しているようだ。
(参照:ヴードゥー死するネコについて

・ブアメードの血とだけ共通するのは「このままだと死ぬ(と思っている)」こと、そしてその状況から「開放されない」ということだ。呪いという概念は、大抵解呪される他には「達成」される。
この状況認識自体が、更に暗示を強くするだろう。

つまりギロチンや銃は暗示としては一瞬で「終わる」、やり過ごすことができるが、ブアメードの血やブードゥー死の場合「終わらない」。

これはギロチンで語られた「ショック状態」がすぐ回復するか、しないで継続し続けるかに分かれるかもしれない。

キャノンは呪われている状態とは、闘争か逃走か反応(FIGHT OR FLIGHT反応)が持続する状態だとしたらしい。前述の参照した論文に寄ると、脳の一部を切除したネコが「見せかけの激怒」と呼ばれる常に興奮した状態になり、やがて死んだらしい。

人間でもタイプA、つまり短気で勝ち負けにこだわり常に時間と争っている性格をしていると心血管系の病気になりやすいとされる。厄介なことに闘争心は一部の人の原動力でも有るため、彼らはその気質を手放したがらないところがあるが。


天敵を目の前にした動物のような、パニックや興奮のような緊張状態がずっと続くということ。「呪い」は、解呪の条件を満たさない限り永続する概念と言える。ブアメードの血同様に「終わらない死に至る状況」の永続。

ブロークンハート症候群

  • ヴードゥー死や闘争か逃走か反応に関連した話。
  • この状態は緊張状態であり、心臓によろしくない。
  • 性格として競争的、闘争的な「タイプA」も、心臓や血管の病のリスクは高い。

 話としてはよくあるのが、「長年連れ添った夫婦の片方が死んだら、翌年もう片方も死んだ」という話。まぁ「連れていかれた」なんて騒いだりする者もいる。

・この現象はブロークンハート症候群と呼ばれ、存在する。
突然の強い胸痛や息切れをもたらすなど、一般的な心筋症や心臓疾患と同じ症状なのだが、それに見られる動脈の詰まりがないのが特徴。
ここまでだと呪いやらなんやらに見えなくもない。

・ブロークンハート症候群はカテコラミンというホルモンの分泌が原因だと考えられている。
これはブードゥー死同様に闘争・逃走反応を引き起こす。

この状態が心臓に負荷を掛けるため、最終的には心筋梗塞で死ぬ可能性もある。心臓が「蛸壺」のように肥大化するそうだ。

・ブロークンハート症候群の原因としては、近親者の死、恋人との破局、解雇、虐待などが挙げられている。
ただ、些細なストレスでも、反対にポジティブで幸せな瞬間でも(これも刺激ではあるから)、外傷が原因でも起こり得るとされている。

要するに「急激な感情の変化」が起こった後でなるらしい。

・高齢の女性に多いため、エストロゲン(女性ホルモン)のレベル低下が関係しているのでは、とも考えられている。

参照:https://logmi.jp/business/articles/265432

・また、同時に癌である数が多かった。

Templin氏らは今回、欧州8カ国および米国の医療機関(計26施設)で登録されたブロークンハート症候群を有する約1,600人の男女を対象に研究を実施した。

このうち、がんも診断されている患者は、平均年齢が70歳で、88%は女性だった。

その結果、男女を問わず全ての年齢層で、ブロークンハート症候群の患者では、一般の人と比べてがんの有病率が大幅に高いことが分かった。

例えば、がんの有病率は、44歳以下の一般女性の0.4%に対して同年齢層のブロークンハート症候群の女性患者では8%、

45~64歳の一般男性の2%に対して同年齢層のブロークンハート症候群の男性患者では22%だった。

65歳以上の男女でも、ブロークンハート症候群患者ではがんの有病率が2倍以上に上昇していた。

https://www.carenet.com/news/general/hdn/48443

・癌になりやすい性格として「タイプC」が挙げられる。
事なかれ主義、自己犠牲的で我慢強い、ストレスに対処できない、感情を押し殺す、など言われている性格。これはガンの進行も早い。総じてストレスのダメージを受けやすい性格と言える。

当人の性格がタイプCかどうかは知る由もないが、ブロークンハート症候群になった状態は、この性格による精神状態と似ているのかもしれない。

特定の病気になりやすい性格の分類 タイプA B C D
フリードマンとローゼンマンによる性格分類 ・アメリカの医師、心臓専門医のメイヤー・フリードマンとその同僚のローゼンマンにより定義された性格分類。 それまでも特定の性格が虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)になりやすい傾向にあるとされてい...

メモ

・予言の自己成就という概念がある。嘘の情報でも、信じた人間がそれを前提とした動きをするため結果的に本当になるという話だ。
豊川信金事件は、「あの信金は潰れる」との噂を信じた人間が預金を引き下ろしに殺到して実際にピンチになった例だ。

「人が信じた」結果「社会がそうなる」ということ。

「ブアメードの血」という概念で言えば、これは「脳が信じた」結果「身体がそうなる」という点で類似すると言えるだろう。

・もう一つ興味深いのは、少なくとも身体上は「回復は早い」ことだ。VRギロチンのケースでは死を強烈に想像させ、身体がその様に反応した上で、次の日には治っている。

最初のプレイヤーと次の記者両方が、30分ほど身体的に混乱状態だった。身体の「とりあえずの反応」だったのかもしれない。30分をかけて身体の「本当の状況」を把握して落ち着けたのだろうか。

・これは悪夢を見て飛び起きて、夢であったと知れば安心できることに似ているように思う。感覚はしばらく残るところまで。

現実と仮想現実で、仮想現実が優先される、というのは実は珍しい話ではない。現実と仮想の境界は、見方次第では曖昧であるとも言える。例えば今、あなたの頭の中で私が「喋っている」ように。

現実よりも自分の感じた架空の現実を現実だと思いこむことは認知フュージョンと言って、人間は元からこの様な状態に陥っているのが常だとすら言える。つまりはブアメードの血のような直接的な形ではなく、世界観や人生観と言った形での「緩慢な毒」もあり得る。

全くの余談

なお全く余談だが、医学誌などが査読制(簡単に言えば論文のチェックをする制度)であることがどれだけ重要であるかを軽く説明すると、

  • 「デタラメでわざと間違えまくった、出版社に都合のいい論文」を寄稿したら大喜びで掲載し、後でデタラメだと著者に暴露されたソーカル事件
    (なおこの出版社は「著者でさえ意味がわからず、しかも無意味と認める「論文」を掲載した」としてイグノーベル賞を受賞した)
  • ショウヨウシティでコロナがアウトブレイクしたのはズバットの食用消費と関係がある」とポケモンの用語を列挙した(ピカチュウも出てきたらしい)論文を全く査読せずに掲載する捕食出版(ハゲタカ出版とも)の問題。
    なおこの論文は、著者の名前もポケモンの登場人物だった。

などがある。これらが自称専門誌に掲載されてしまうのは、まぁ怖い。それを見た人が更にノーチェックで信じる、という連鎖が起きる。実際、ズバット論文は他の論文に引用された。

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