感情や認知が間違っている余地について

  • 少しは自分を疑えよという。

ヒューリスティクス

・まぁ、割と間違えます。脳は元から精度よりも早さという価値観な所がある。ヒューリスティクス(発見的)とも呼ばれる。

結構な知名度となったが「バイアス」または「認知バイアス」というのも、結構な数がこの早さ優先の認知が原因になっている。

認知バイアスについて:心理的効果
認知バイアスとは 広くは、勘違い、早とちり、思い込みなどの間違いをしている状態を指す。事実と異なる認識。あるいは適切ではない材料に依る推論・結論。「バイアスがかかる」等の使われ方をする。ここでの認知とは理解・判断などの知的...

ちょっとした思い違いから狂った盲信まで、程度は人それぞれ。

・ヒューリスティクスは精度としてもなかなかのものなんだが、さすがに盲信することはできない。

なので元から感情や直感の忠実な下僕でいてはならず、それが現実的なことか、有効なことかは気にしたほうが良いことだったりする。

ボイドの呼び声

・感じたことの「解釈」が間違っている例。

例えば高い所にいる時の「飛び降りてみたい」との考え。あるいは車の運転中に「対向車に突っ込んだらどうなるだろう」など。

これは突発的な死の衝動と解釈されることが多いが、実際の所ただの「勘違い」の可能性が強い。

自殺願望と関係なく1、多くの人間(2人に1人)がこの考えを経験している。これは「ボイド(虚空)の呼び声」と名付けられた2。フランスでは元から「l’appel du vide(虚空の呼び声)」と、これを指す言葉があったようだ。

この現象は、「脳が発する危険信号を脳が誤解した結果」だと仮定されている。高所の例で言えば、「危ないから離れろ」というシグナルを「『飛びおりたらどうなるか』と自分は考えた」、と解釈する。

自殺願望とは正反対と言える、生存本能を自殺願望と勘違いしているということ。瞬間的には、人間はここまでアホなことがあるということ。

・まず信号が発せられる。次に脳が当人に分かるように解読する。ここの間違い。

「無意識を意識が読み間違えた」とか言えば伝わりやすいだろうか。

侵入思考

・ネガティブなイメージが繰り返し勝手に湧くことを侵入思考と呼ぶ。これもボイドの呼び声と同じく「誰にでもある」そして「中身が洒落になってない」。

・「健全な大学生」を対象のアンケートでは、性的な衝動、暴力、虐待、加害などの内容が多い。面白いのが「失礼」または「不適切」な内容。

つまりこれ、「社会的に弁えるべき要素」の正反対を向いている。

・同じく侵入思考で今度は「子を持つ親」を対象にした場合、窒息、事故、誘拐、攻撃されるなど「乳児になにかあること」が多くなる。侵入思考をこちらは89%が体験しており、ボイドの呼び声よりも多い。

産後うつに至っては「乳児を害そう」という侵入思考が「一般的」だとされる。

・「気をつけるために意識しているからしつこく思い浮かぶ」というのがダニエル・ウェグナーの皮肉過程理論。「子を持つ親」に侵入思考が多かったのは、「重要ごとだから」かもしれない。

ただそのしつこさにやられたり、中身を誤解したりしたら、逆効果になる。

・本来の意図は「悪いことを発生させない」であるはずだが、ご覧の通り当人は「やりたいという気持ちが湧いたのだ」と解釈していることがある。ボイドの呼び声と同じく、これはおそらく思い浮かんだ理由は真っ当で、その解読が失敗なのだろう。

嫌な考えが頭から離れない 侵入思考について
例えば、刃物を持った時に怪我をする、あるいは誰かを刺す。車の運転中に人の群れに突っ込む。今外出中だが、実は火を消し忘れていて、今現在家は燃えている。あるいは鍵をかけ忘れていて、空き巣に入られている。などのイメージ。他には人...

自己治療仮説

・人間は「不調」や「問題」に対して、基本的にはなんとかしようとする。そりゃそうなんだが、ここにも本能が絡むため、手段が間違ってることがある

依存症の原因として挙げられるもので、「自己治療仮説3」がある。その名の通り自分で治療をしようとする(本能的なものを含める)行為を指す。セルフケアの一種。

人間での身近な例としては、「眠気覚ましにコーヒーを飲む」ことは自己治療仮説に該当する。低い覚醒レベルへの治療として、カフェインを処方するわけだ。

・ただし本能的な自己治療の場合は、目前の問題しか見ていない。つまり後でどうなるかはこの時考えに入っていない。

結果、ニコチンやアルコールへの依存、処方された薬でも乱用する、あるいはもう大丈夫だと思って勝手に辞める(医者が大体怒る案件)などのリスクがある。

中でも精神疾患を持つ者がこの傾向が強い。うつ病やトラウマの持ち主ではアルコールやタバコなど向精神作用があるものを服用する傾向が強い。今の「気持ち」をどうにかしようとして、とのこと。

・まぁ要するに、人間は自分に対してヤブ医者だったりする。
この上で(社会を気にした心理により)自分でなんとかしようとする傾向もかなり高いため、自分に対して熱心に迷信的/疑似科学的なことをやりかねない。

ヤブ医者つながりで、人間は野生の心理学者(ヤブ)だ、常に人の心を推論している(決めつける)、なんて話もあったな。

することモード

・ぶっちゃけて問題意識そのものが間違ってることもあるし、対処しようとすることが間違っていることもある。

・マインドフルネスの分野では、意識状態が2つに分けられることがある。

  • doing mode(することモード)
  • being mode(あることモード)

・通常はほとんど「することモード」であり、これは以下の特徴がある。


  • 理想と現実のギャップに注目する(問題を探す)
  • ギャップを埋めようとする(問題を解決しようとする)

「なんとかしないと」と思うネタを探して、見つけたらなんとかする感じ。


  • 半自動的である
  • 論理的な解決に使われる
  • 心の中の出来事に反応する

このため感情を論理で解決しようとする所がある。無理だと無限ループする。


  • 物事を勝手に評価(ジャッジ)する
  • しつこい
  • 思い浮かんだことと事実の区別ができない

でしゃばりな無能みたいな所がある。帰れ。


以上から最悪なパターンとしては、どうでもいいこと(またはどうにもならないこと)を極度に問題視し、それが現実だと思い込み、解決を試みるが、不可能だから思考が無限ループする。

完全に精神を病んだ状態であり、一部の精神を病んだ人間は実際こんな状態だったりする。

また仮に解決した所で元からどうでもいいか、あるいはいじってはいけない部分であるため、余波が迷惑すぎてただの破壊者になる。


とまぁ、出番じゃないのに出しゃばると、することモードは厄介となる。そして人間の通常モードがこれだとされている。

大抵の人間がこれほど酷くないのは拮抗や制御としての機能が働いているからであり、それが弱いとやりかねない。

マインドフルネスの「今ここ」あることモード:普段の意識のすることモード
・マインドフルネス認知療法(MBCT)のシーガル、ウィリアムズ、ティーズデールによれば、意識は2つのモードがあるとされる。 doing mode(することモード)とbeing mode(あることモード)。・することモードは実行を意識して...

答えのでない事態に耐える力

・ここまで挙げたものの殆どの原因は、早計に結論を出そうとするからだと言える。

だからこそやらかした後では自覚もしやすい。これによる失敗は「考えれば分かるはずだった」「もっと慎重になればよかった」と後悔も多い。

かといって、やらかす前に慎重になれるかといえば、まぁできてりゃ苦労しねーよって感じか。
脳的には早計なのが「仕様」のため、わかったと思って飛びつくか、分からんと思って全否定するかの二極に元からなりやすい。

正直ここまではそういうもんだとしてスルーで良いと思う。問題は、このようなヒューリスティクスを「結論」として採用し、実行する部分にあるだろう。

なぜ裏目に出ることを何度も経験してなお、安易な結論(笑)に飛びつき、すぐ動きたがるのか。大体じっとしていられないから。怖いから。不安だから。気に食わないから。

・詩人のジョン・キーツは、「短気に事実や理由を求めることなく、不確かさや、不可解なことや、疑惑ある状態の中に人が留まることが出来る力」を、ネガティブ・ケイパビリティと呼んだ。

「答えのでない事態に耐える力」ともされる。

・脳は「わからない」という状態をかなり嫌がり、焦燥から早計に結論を導き、失敗したりもする。

キーツが言うところの「短気に事実や理由を求める」のは、実際の所は(行動方針のために)短気に結論を求めることに近い。

情報がないなら手持ちの情報だけで判断するか、やりなれた方法でゴリ押ししようとする。

せっかち上等な価値観であり、これが大抵、人間の目的と価値観にはそぐわない。

・スピード重視の世の中ではあるが、急いでも良くならないことに急げば、やはり裏目には出る。

焦りはかなり失敗を呼びやすい。そして焦りは身についてしまうことがある。そうなると時間があっても熟考しない(よく考えなくなる)傾向が強くなる。

先延ばしをすると失敗しやすくなり、失敗すると先延ばししやすくなる
・先延ばしをするとミスが増える。いざ行動を起こしても、焦燥感や罪悪感のせいで視野が狭くなり、物忘れも増え、よく確認しない、と三拍子揃った結果ミスが増える。・一方で先延ばしをする動機が「課題への不安感」であることも多く、失敗...

焦りが失敗に繋がりやすい大きな原因は、今ある情報だけで結論を作ってしまうことにある。つまりほとんど脳による創作であり、それを現実と混同してうまくいくわけねーだろと。

・自己治療仮説もまた「そもそも自己判断が間違っている可能性」がリスクとしてあげられている。こうなるのも焦燥と軽率が大きな理由となるだろう。勉強も必要だとされる。つまり知識。

せっかちで慌て者だと自認するなら、いくらか焦りが身についているかもしれない。耐える力は養うことができる。せめても急いで得するか損するかくらいは判断した方がメリットがあるだろう。

メモ

・改めて、世間で言うところの「自信がある人間」の胡散臭さが半端ないなと思った。

・これに加えて「帰属」などの約束された思い込みもある。

「帰属」と「自分が悪い」
なんでも「すぐに」自分のせいにする人と、帰属やバイアスについて。全部自分のせい・自分が悪いと思ってしまう人元記事。帰属とは、原因や責任の所在を考えること。既に起きたこと(結果)から逆算して原因を見つける心理的機能。...

・何れにせよ、直感レベルの思考や判断は「間違っててもいいから早く」なので、盲信ではなく叩き台として利用するのが妥当だろう。

・似たような話でリベンジ夜更かしがあるが、こちらは感じるものは正しいが、対処がよろしくない例と言える。このため、「(気持ちへの)間違った自己治療」と言えるだろう。

もったいないから寝たくない心理:報復性夜ふかし リベンジ夜ふかし
・日中のストレスを夜ふかしで発散しようとする行為。・報復性夜ふかし、リベンジ夜ふかし、リベンジリラクゼーションとも。報復性夜ふかし/リベンジ夜ふかし・ を参照。いいネーミングだ。今日...

日中のストレスを夜ふかしで発散しようとする行為であり、裏目に出るので「自傷行為」と指摘されていたりもする。

日中が不自由なのは大体そんなもんであり、ストレスも不完全燃焼な気がするのも間違いではないだろう。ただ睡眠不足になれば、次の日マイナスにしかならんのでよろしくはない。

・明日が怖いから寝たくないというのも、まぁ時間は止まらないので何やってもどうしようもないことではある。
明日が怖くなくなることしか解決法はないが、まぁ大体これも無理なことが多い。

となると万全を期して寝た方がマシなのだが、気持ちとしてはそんな気にはなれず、と。

明日が来るのが怖いから寝たくない人:毎日の中にあるストレス
2つに分ける。 1:「明日が来る」のが怖い人 2:「今日が終わる」のが怖い人「今」に未練があり、寝たくないのは同じ。どちらも結論から言うと、「気持ちはわかるが、寝ないことは全くの逆効果になるから寝ろ」となる...

・裏を返せば、「気持ちの問題」を解決しようとするとドツボにハマる可能性がある。特に不安感と呼ばれるものの一部は「悪い想像」であり、これが消えることはあまりない。

  1.  大学生431人を対象に自殺願望の有無を調べた上で調査している 
  2.  https://gigazine.net/news/20211220-call-of-the-void/ 
  3.  セルフメディケーションまたは自主服薬とも。 https://ja.wikipedia.org/wiki/セルフメディケーション 
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