インポスター症候群とは
・自力で成功や達成をして、それらを周囲が高く評価してくれている。この状況に感じる居心地の悪さ。
「インポスター」は詐欺師を意味する。「自分は周囲から不当に高評価を得ている」と、周囲を騙しているような感覚。実際には嘘はついていない。
自分の成功を、他人に対して能力があると自分が「思い込ませた」結果手に入れたものだと認識している。つまり評価を不当に得たと。
総じて、実力があるのに自己評価が低く、「自分はこの場に/この人達の集まりにふさわしくない」と感じる心理。
・一般には「社会的に成功した女性」に多いと言われている。が、掘り下げて行くとそうでもない。
インポスター症候群は女性に多いと言われているが、男性にもある
・株式会社ヴィエリスが自社の社員に行ったアンケートでは、確かに男性は自身がインポスター症候群かという質問に対してYESと答える率が圧倒的に低かった。男5.5%、女は46.3%。
面白いのが、ストレートな「あなたはインポスター症候群だと思うか」という質問に対しては5.5%だったのだが、自分の能力や評価されることについてなど「直接的でない項目」での結論としては3~4割は当てはまったという点。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000100.000026568.html
ここにそれぞれの項目の回答があるが、5.5%はかなり浮いて見える。他が35%程度はあるので。
これは、「男はインポスター症候群を恥だと思い、隠そうとしている」との疑いが持たれている。質問がドストレート過ぎて身構えさせたのではとも疑えるが。それにしても顕著では有る。
・ある日、英国人作家のニール・ゲイマンは、著名な人達の集まりに招待された。アーティスト、科学者、作家など。
この時、自分はなんて場違いなんだ、と感じた。彼自身が多数の文学賞を受けている、その「著名な人たち」の一員であるのに。
そうしていると、ある男性にこう話しかけられた。
「ここにいる人たちときたらどうだい、俺はここで一体何をやっているんだ?みんな、すごい実績がある。俺なんか送られたところに行ってきただけだよ。」
ゲイマンは慌てて
「何をおっしゃっているんです!あなたは人類で初めて月に行った人じゃないですか!」
と言ったそうな。
相手はアポロ11号船長ニール・アームストロングだったというオチ。ゲイマンは「彼すらそう思うなら、もうみんなそうなんじゃないかな」とか思ったそうな。
裏を返せば、自己評価が他者評価と比べて低いのは一般的なことかもしれない。
インポスター症候群は優秀な人に多い傾向
・優秀な人間を一箇所に集めると、大体これは発生する。
すごく頭のいい人たちばかり・・・でも、何もしないでここに入った人はほんの数人だけ。どうして私はここに入れたのかしら?みんなは私を受け入れてくれた?自分はきっと間違って紛れ込んだに違いないわ。
https://karapaia.com/archives/52283518.html
騙しているとか此の場にふさわしくないという感覚の正体は、疎外感にも見える。これは周囲と自分は「同じじゃない」という認識でも有る。客観的には同じなのだが。
・タイミングは「人目に触れる時」だと考えられる。
“私はこれまでに11冊の本を書きましたが、その度ごとに、「ああ、これで私がみんなを騙していたことが、ばれてしまう」と考えました” — 作家マヤ・アンジェロ
https://ja.wikipedia.org/wiki/インポスター症候群
「発表」や「人目に出すこと」のタイミングでの萎縮は結構多い。他者評価を意識するタイミング。ゲーム作ってて形になってくると有ると言われる「これ面白くないんじゃないか病」とか、イラストや文章などでも。
インポスター症候群では環境/状況が対象となる。作品を提出するような「人目に触れる時の緊張」が永続している状態。
インポスター症候群の原因
・ゲイマンとアームストロングのやり取りから考えられるのは、自身の成功は受動的で、他者は能動的だったという認識。つまり「自分は頑張っていない」という認識が疑える。
「俺なんて送られたところに行ってきただけだよ」というのはただの自虐かもしれないが、本心だと捉えるなら。
・その他の例も「周りはすごい、自分はそうじゃない」という認識がかなり多い。客観的な評価として同レベルでこれだ。
インポスター症候群は自然な心理であり病気ではない
・インポスター症候群の症例は個人の特性に寄らない。つまり性格や精神的特徴が原因ではない。特定の環境/状況と自分との間に発生するものだとされている。
このためインポスター「症候群」と呼ぶこと自体が不適切だったと、当の名付け親が言っている。
インポスター症候群は、別名インポスター体験とも呼ばれるが、これはクランスの提案によるもので、彼女は後に「もし最初からやり直せるなら、私はインポスター体験と名付けただろう。それは症候群や精神障害ではなく、誰もが経験するものだからだ」と述べている[4]。
用語を変えることで、自分の経験を特別なものと見なさず、より正しい理解ができるようになるとしている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/インポスター症候群
つまりゲイマンが言う「みんなそうなんじゃないかな」というのは大体合ってる。
仲良くなってくると人付き合いがめんどくさいと感じる人との類似点
・空気読んで、相手に合わせて、それで気に入られて仲良くなるのは、「見せたい自分」が気に入られたということになる。
それで気に入られても、それ以外の自分が発見されやしないかと落ち着かないということはある。このため距離が縮まるとめんどくさく感じる人はいる。
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・インポスター症候群は仕事や大学などで多いが、これも自分の「特定の面」を更にちょっと無理して(頑張って)来た結果、周囲に認められ、その様な環境に取り上げられた面が大きい。
殆どの場合が「選ばれた」「認められた」という他者からの肯定で環境を移っている。単に他者から認められるだけでも周りの目は変わるため、殆どの場合はこうなる。
自身はその様な背伸びをしてきたと知っている。他人の努力を推論することに失敗した場合、他人は「自然体」でその場にふさわしい存在に見える。
自分だけが山勘の一点張りで「成功してしまい」この場にいる。他人は実力で正当にこの場にいる。という認知は考えられる。
一方で、「その努力で得られる成果/名誉」が恐ろしく脳内でインフレしているようにも見える。現実以上に。「この努力じゃまだ足りないはずだ。それなのにもう評価されてしまった、落ち着かない」みたいな。
それだとなにかの間違いじゃないのか、いつか没収されるんじゃないのか、正体を暴かれるんじゃないのか、などと思っても不思議はない。
しかし努力というか作業に手を付ける最大のコツは「何も考えないで手を動かす」だと言われることもあり、そうしていた場合あまり「努力」の言葉の持つ苦痛や苦労の覚えはないかもしれない。案外自分の努力や作業量こそをわかっていない可能性。
インポスター症候群と帰属理論
・帰属、つまり物事の原因が何だったのかと推論することにはパターンがある。いくつか分類はあるが、例えば自分の能力、努力、タスクの難易度、時の運などに帰属されやすい。
今回は明らかに自分の成功を「自分の能力や努力」には帰属していない。騙している、不当に高評価を得ているという感覚は「運」に近いと言える。
自分の成功は運が良かっただけ、実力じゃない。だから自分はこの場にふさわしくない、みたいな。
これは散見される「他人はすごい、頑張っている」という他者への評価とも一致する。
・人は自分の能力/努力を過小評価し、他人の能力/努力を過大評価する傾向があると考えることが出来る。
一方で人は自分の能力/努力を過大評価する面も確実に持っている。
インポスター症候群の場合、「周囲が優秀な人ばかり」という環境/状況的要因により、過小評価する面が表出しているように見える。それとも他者の過大評価か。
インポスター症候群の克服/改善
別にそのままでいい説
インポスター体験は、キャリアの道においては健康な反応であり、有益であると考える研究者もいる。これは、「誰もがコンフォートゾーンを持つが、成長とはそこから一歩踏み出した時に起こる」という考えから派生している[11]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/インポスター症候群
・コンフォートゾーンとは自分のやりなれた、居心地のいい空間/環境。そこから出るのはストレッチゾーンとか、ラーニングゾーンと呼ばれる。
コンフォートゾーンでは成長が期待できない。「できること」しかやらない傾向がある。ストレッチゾーンなど「ちょっと無理する必要がある」領域の難易度が最も成長する。
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・しかしメンタルヘルス的にはよろしかないので、耐えられないなら緩和する必要は有るだろう。克服のための提案として、以下のようなものが有る。
以下に挙げるのは、インポスター体験を克服するための提案である[12]。
自分自身に優しくする
https://ja.wikipedia.org/wiki/インポスター症候群
サポートを求める/自分の感情を人に話す
自分の挙げた成果に関して、「どうせ」「ただの」という表現を使わない
間違いと思われることに対しても、謝罪しない
最後のはちょっと首をかしげるが、元から周囲を騙していると思っているなら謝りグセがあると推測できる。その様な人向けの話だと思っておいたほうがいいか。
「部外者」に認められること
・アメリカ・ブリガムヤング大学の研究グループの発表によれば、インポスター症候群の改善には、「他人からの感情面でのサポート」が有効だそうな。
https://karapaia.com/archives/52283518.html
ただし、身内や仲間に励まされると悪化する。「赤の他人」からじゃないとダメなようだ。「自分の所属していないコミュニティの他人」からだと、改善に有効。
そうしたネガティブな気持ちを抱くようになってしまっても、外部の人間から感情的なサポートを受けると緩和されることがわかった。
実験では、15人中10人で自分が詐欺師であるという感覚が和らいだ。
一方、同じクラスの仲間からサポートを受けた場合はまったく別の結果になった。14人中12人が、自分が詐欺師であるという感覚が消えないばかりかそれがいっそう悪化してしまったのだ。
学生のコメントの中には「穴があったら入りたい」や「トイレで吐きたい」という激しい自己嫌悪を表すものもあった。
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悪化した側の心境は、「恥」の感覚にかなり似ている。自分を惨めに思っているような。
少なくとも下手な慰めや熱血は、この場面ではお呼びじゃないだろう。
・今回は「実力」への疑いが当人の中にある。このため、同じコミュニティの者から認められようが褒められようが「同情や慰め」だとしか受け取れない。
逆に赤の他人による評価、縁もゆかりもない者からなら「事実としての実力の肯定」と受け取れる余地がある。
・よく聞く話で「人を褒める時は第三者を経由しろ」というのは正しいと言える。