夢にうなされる人
・歯が全部抜ける夢、落ちる夢、閉じ込められる夢、迷子になる夢、怪我をする夢、追いかけられる夢、屈辱を感じるような夢、死ぬ夢、或いは殺す夢。悪夢にも色々あるが、なにか意味はあるのか。
・例えば身体的な苦痛により、それが夢に反映されるとかもある。寝相が悪すぎて苦痛を感じ、それが夢に反映されるとか。病気で寝込んでいる時は決まって悪夢を見るだとか。
・身近な例としては「遅刻する夢」が挙げられる。
時計を見る。
もう間に合わない時間だ。
慌てて支度をしようとする。
大体ここらで目が覚めて、再び慌てて時計を見ると十分間に合う時間だったりする。
こういった「気にしている/避けるべき悪いケース」が反映されることもある。
・以上のように、精神状態、身体状態は夢に反映されることが多い。単純に「今日あったこと」のダイジェストが流れるという人もいる。
・悪夢を見る率は子供のほうが高く、10~50%は「親が心配になるほど」強烈な悪夢を見るという。
成人では2~8%が悪夢に悩まされるそうだ。
ただ、夢の内容を悪夢と判断するのは個人差がある。このため研究はなかなか捗っていないらしい。
・今回は、夢を脳の情報処理、或いは精神のメンテナンスとして扱う。
日中の記憶の「消化/整理作業」のような。
或いは傷ついた精神のバランスを取り戻すような。
補償夢/逆補償夢
夢の分類も複数あり、例えば心理学者のカール・グスタフ・ユングはいくつかに分類している。
その中には補償夢と逆補償夢というものがある。
補償夢
・シンプルに「起きている時に叶わない願望を夢の中で叶える夢」とされることが多い。経験したことがないことをやっている夢などもそうだろう。子供が見る「車を運転する夢」だとか。
・意識的な(起きている時の)体験が不足/未完のものの補償。あるいは意識の(起きている時の)態度の補償とされる。
・また、「嫌いな人物と仲良くしている夢」などもこれに該当する。人によってはこれも悪夢かもしれない。
この場合は普段の物の見方とは違うシミュレートをすることで、価値観の修正や変換に貢献する。この場合、自身の頑なな態度に対して無意識では違和感を感じているのかも知れない。
・総じて「補償」という名だが、実質的には欲求の解消、異なる視点の可能性など、「バランサー」に近いだろう。
逆補償夢
・シンプルに「想像されうる嫌なこと、起きて欲しくないことが起きる夢」とされることが多い。拠って悪夢はほとんどがこちらに該当するだろう。
・「否定的な補償」とされる。意識の(起きている時の)態度を引き下げようとしているとも。
一見獅子身中の虫のようだが、そうでもない。例えば何か/誰かに依存しすぎている状態で、その人に失望するような、或いはその人が離れていくような夢などが該当する。具体的には恋愛においては浮気されるとか、片思いの人に自分ではない恋人ができるだとか。
これらは当人の依存心が強く、主体性が失われているためにそのバランスを取ろうとしていると考えられる。
「その人」を過剰に美化/神格化してはいないか、依存してはいないか、甘えてはいないかなどを考えるべきだとも。
・そうなる不安/恐怖があるからそんな夢を見るのだ、と捉えがちだが、そうなることへの不安/恐怖を過度に感じている自分自身に対しての警告。
婉曲的な表現
・フロイトは夢分析の対象として「欲求や願望などの無意識の内容」と「心の防衛機構により夢の表現を歪める傾向」を挙げた。
抽象的な、意味のわからない、それでいて不快な夢だったとしたら、それには隠れた意味があるかも知れない。
まぁフロイトもいまどき古いが、この「表現を歪める」というのは起きていたって認知バイアスによりありえる。夢の中では尚更だろう。つまり夢の中の抽象的な出来事には「元ネタ」がある可能性。
離婚とうつ病と悪夢と癒やし
・悪夢についての、非常に興味深い実験結果。
心理学者のRosalind Cartwright氏は離婚を原因とする「うつ」の兆候がある人々が見る夢について調査しました。
1年にわたる調査の結果、うつ状態から回復した人は最も長期にわたって惨めな夢を見ていたことが判明。
反対に、うつっぽくない夢を見ていた人は長期にわたってうつ状態に苦しむことがわかりました。
・誤解の無いよう改めて、「うつ状態が治った人」が「長期に渡って惨めな夢を見ていた」ということ。
反対にそうでもない夢を見ていた人はうつ状態に苦しみ続けたことが判明した。
後は「離婚でうつ状態」であって、「うつだから離婚」ではない。
・さて「惨めな夢」つまりは恥を掻くような、馬鹿にされるような、悔しいようなネガティブな夢を長く見続けた人のほうが、何故かうつ状態からの復帰が早かった。
・逆補償夢とも考えられる。離婚というのは捉え方次第だが、人によっては(恐らく特に男性にとっては)社会的なドロップアウトに匹敵する場合がある。
或いはシンプルに「あなたとはこれ以上一緒にいられない/いたくない」ということでもある。一緒に暮らしていた人間からそう言われるのは、自分の日常的な部分、「素の部分」への否定だろう。
つまりは相当なアイデンティティの危機であり、自分、他者、世間との接し方なども「今までよろしくなかった」ことの痛烈な指摘ともなるだろう。
もっと単純に、今後の人生設計が大きくルート変更することは確定している。つまりは今まで自分が描いていた人生設計は崩壊した。
逆補償夢、つまりはここで言う「惨めな夢」は睡眠時にそれらの変更・修正を行っていた可能性。
・うつ状態が治らないグループとの違いだが、問題(=離婚という事実やうつ状態であること)に対しての捉え方に違いがなかったかが気になる。
どちらが受け止めようとしていたのか。どちらが克服しようとしていたのか。どちらが解決しようとしていたのか。どちらが傷ついていたのか。