・先延ばしをするとミスが増える。
いざ行動を起こしても、焦燥感や罪悪感のせいで視野が狭くなり、物忘れも増え、よく確認しない、と三拍子揃った結果ミスが増える。
・一方で先延ばしをする動機が「課題への不安感」であることも多く、失敗の経験により次にやる時にさらに不安感が増し、先延ばしが強まる余地もある。
先延ばし→失敗→もっと先延ばししたくなるという悪循環。
失敗傾向の3種類と先延ばしの関係
・山田(1999)による失敗傾向の3種類は以下。
- アクションスリップ:注意不足による物忘れや失敗
- 認知の狭小化:ストレスに影響されやすく適切な行動が取れない、認知が狭く硬直化し、処理できる情報の範囲が狭まるための失敗
- 衝動的失敗:状況の見通しが悪く、よく確かめないで行動するために起こる失敗
要するに、ヒューマンエラー、周りが見えない、衝動性の3種類。後述するが、共通して「よく考えなくなる(熟考戦略を使わない)」。「せっかち」「慌て者」って言ったほうが早いかも知れない。
・先延ばしの傾向は、3つ全てに中程度の相関がある。中でもアクションスリップが一番高い。
また、先延ばしをよくする人ほど3つの失敗傾向全てが高い。[efn_note]先延ばし行動と失敗行動の関連について[/efn_note]
・先延ばしが原因で失敗するのか、失敗するから先延ばしするようになるか。いわゆる「卵が先か鶏が先か」は気になるところだが、後述するように負の連鎖が始まった場合、割とどうでも良くなる。それどころじゃなくて。
失敗への恐れ
・「失敗したくない」という不安感で先延ばし癖が出やすくなる。反対に先延ばししないことが、自信をつけることに役立つとされている。
・「どうして先延ばしするのか」については、時間管理能力のなさや性格的に怠け者であるなどが挙げられている。
しかしそれ以上に課題への動機づけ、つまりやる気やモチベーションに関わる要素が大きいとされている。
少なくとも大学生が先延ばしをする理由の大部分が、課題に対しての不安、完全(完璧)主義、自信のなさであり、これらを「失敗への恐れ」と呼ぶ。[efn_note]完璧主義にもタイプが有る。このように先延ばしの原因ともされるが、反対に「完璧主義だから先延ばししない」というタイプもいる。[/efn_note]
大学生は社会人と違い、多少質が悪い仕事をしても大事には比較的ならない。だから他の原因だろうとする意見もある。
しかし大学生あたりから周りの目を過度に気にする傾向も増え始めるため、怒られたくないとかじゃなくて「自分が失敗したくない」という内的理由での失敗恐怖は十分にあるだろう。
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・先延ばし癖がある人は、他と比べて特性不安(環境や課題と無関係に、本人が不安になりやすい特性)や抑うつが高い。また自尊感情が低い。
これら全てが、「失敗への恐れ」から来た性格だとされる。[efn_note]不安や抑うつが全く無い場合は、「トラブル」って言葉が服着て歩いてるような存在になるが。[/efn_note]
・反対に「自分の行動を効果的に調整する」ことは、好奇心、持続性、自尊心として学習結果に強力な影響をもたらすとされる。
焦りによるミスとさらなる先延ばし
・「先延ばしをする/しないと英語の勉強の仕方に違いがあるか」を調べた研究がある。[efn_note]森(2004)[/efn_note]
英語の学習方略(戦略)には、
- 推測方略(全体の流れからわからない文の意味を推測する)
- 熟考方略(間違えた箇所を、なぜ間違えたのかを考える)
- 作業方略(これまで習ったこと同士の関係を整理する)
がある。この内、先延ばしが多い学生は、熟考方略を使わない傾向が顕著に高かった。
これは先延ばしの結果、期日に間に合わせるために「時間をかける」ということができないためだとされ、これが理解の遅れに繋がると指摘されている。
・ところで、先延ばしと約束事の遅れは別物とされている。[efn_note]先延ばしと期日遅延。期日遅延の方は確信犯もいるし、計画的なタイプもいる。「明日できることを今日やるな」という言葉もある。[/efn_note]
大学生は先延ばしを行うタイプは多いのだが、課題の期限を守れなかったものは少ないという報告がされている。[efn_note]Goda et al.(2015)[/efn_note]
先延ばしは悪化することがあり得ると考えると、着手は遅れるが課題の期限は守っている状態が続く。熟考方略を取らないなら質は良くならないから、当然出来は良くない。
この状態は先延ばしを克服するか、限界が来て壊れるかまで続くことになる。大分ストレスだろう。
・おさらい。
- 課題を先延ばしにする
- ぎりぎりになって慌てて課題に取り組む(熟考方略を使う状態じゃない)
- アクションスリップ/処理できる情報の範囲が狭まる/目先を優先して衝動的になることで失敗する
- 失敗への恐怖でさらに先延ばしをする
これは無限ループする可能性がある。
ちなみに日常生活で起こる失敗にも課題先延ばし行動が影響しているとされる。
メモ
・「一度貧困になったら抜け出すのは簡単ではない」なんて言うが、それに近い。先延ばしとそのせいでの失敗、さらなる先延ばしへ、とドツボにはまる余地がある。
・失敗傾向の3種類は全て、自分のことをバカだと思うのに十分な内容だ。不注意、視野の狭さ、衝動性による失敗。失敗だけでなく迷惑にもなるだろう。
ただし先延ばしが原因の場合、それは状況へのプレッシャーによる「焦り」から来るものだと言える。これが常となると「時間があっても熟考戦略を行わない」となる。
要するに、焦り癖がつくと負のループになりやすい。
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・今回の「負のループ」は、リベンジ(報復)夜更かしが分かりやすい実例かも知れない。
今日一日が不満足で、満足を得ようと夜更かしをしたくなる心理はリベンジ夜更かしと呼ばれる。これも「寝るというタスクの先延ばし」と表現されることがある。
実際に翌日に悪影響しか残さないため、翌日も不満足に終わりやすい。負のループ。
良いことなんにもないと散々言われている。「自傷行為」とも称される。それでも結構な数のリベンジ夜更かしがいるそうな。
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・先延ばし関係のまとめ
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