・多くの認知バイアスの根源にあるものとされる。
・処理流暢性にかなり近い。
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アインシュテルング効果/構え効果とは
・簡単に言ってしまえば、「成功体験に固執する心理的メカニズム」。
・ドイツ語。Einstellung effect。
・『Einstellung』は姿勢、態度、設定などの意味。物事を認知する際に、すでに「どう見るか」を決めてしまっていること。
日本では「構え効果」と呼ばれることが多い。
・身近な言葉で言えば「先入観や固定観念」が一番近いだろう。思い込み、決めつけなども。
これらがほぼ自覚なく行われる上に、それ以外の視点、意見は排除する傾向も含める。
・今回認知の話なので、「思考」よりも先に無意識に脳内処理される領域の話であることに注意。
要するに意思や思考より早く結論出される。気をつけてなんとかなる話でもない。
せいぜいが後から、「自分がさっきまでどういう視点でものを見ていたか」に気づけるくらいだろう。それで十分立派なんだが。
アインシュテルング効果の概要
ルーチンスの水差し問題
・アメリカの心理学者アブラハム・S・ルーチンス(1915-2005)。
彼は成功した先行経験(=以前の成功経験)が、目の前の問題に対しての「構え(=アインシュテルング)」を形成し、目の前の問題に対しての柔軟さを抑制すると考えた。
・1942年。ルーチンスの水差し問題、または水がめ問題と呼ばれている、容量の異なる複数の容器を使って指定された量を測る課題を設定した。
例えば3リットル、5リットル入るそれぞれの容器があり、これを利用して4リットルの水を測れ、みたいな微妙にめんどくさい問題。
今ではそれほど珍しくないパズルの形態の一つ。
イメージ湧かなきゃダイハード3見りゃいいだろう。確か公園の水汲んでそれやってるシーンがあったはず。あれはリットルじゃなくてガロンだったかな。
・ルーチンスが用意した課題は全10問。容器は3つ。指定された量の水を得る。
10問の並びに仕掛けがあって、最初の5問くらいは同じパターンで最適解を得られるようにしていたらしい(構え形成問題)。
その後「もっと楽な手順で解ける問題(判定問題)」が並んでいる。
実際にやらせるとまぁ案の定というか、楽な手順で解けるはずの問題を構え解(それまでどおりの解法)で行った被験者が多かったという。
・被験者の数が、全部で1093人。ただ、内訳がはっきりしない。
この内、構え形成問題をやらないでいきなり判定問題をやらせたグループは、構え解(判定問題に対しては余計な手間がかかってる解法)で解答したのは0.6%しかいない。
つまり99.4%の人間が初見で最適解が「分かる」簡単な問題だ。
「構え形成問題」を5問経験した場合、判定問題に対して「構え解」を行ったものは83%。
本来0.06%しか出さない「余計な手間がかかる解答」を出した数がこれだ。
約1383倍。かなり強力な物だと思われる。
ルーチンスの水差し問題は、本来は大学生レベルでほぼ100%適切な回答が得られる問題だとされている。
答えを出す能力があったとしても、アインシュテルング効果に邪魔された形になる。
ある社会心理学者はこの例を取り上げ、「時として経験は最悪の教師である」と言ったのだとか。
チェスにおけるアインシュテルング効果
私たちは近年,熟達したチェスプレーヤーの目の動きを測定することによって,この謎を解いた。
この認知的近道をたどっているときには,より効果的な解につながりうる細かな手がかりが文字通り目に入っていないことがわかった。
また,心理学者が長年かけて発見してきた様々な認知バイアスの多くが,実はアインシュテルング効果の一種であると考えられる。
・まずチェスの熟練者に盤面を見せ、最少手で解決するよう指示する。
この時に使った譜面は、一見すると定石(最善とされる決まった打ち方)が最適解だが、実際にはそれより少ない手でクリアすることが可能だった。
チェスプレイヤーの目線をカメラで追跡すると、定石に関わる部分しか見ていなかった。そこしか見てないから、本当の最善手には気づけなかったようだ。
・これは「最初からその手法でやる気でいる」と言える。盤面からよくあるパターンを検索し、もう実行する気でいる。脳内活動はしているが、「思考」とは呼べないだろう。これは直感に近い。
チェスや将棋が趣味でも普通にボケるって話がある。頭使う趣味があってもボケるように一見見えるわけだが、実際には頭使ってはいないわけだ。できることをやっているわけで。
逆にボケ防止には「新しいことを始めろ」って方が有力だね。
上級者が格下に負けることがある理由の一つともされる。定石しか見えてないから言葉通り「足元がお留守」になり、「足元をすくわれる」わけだ。
色々な分野で「初心者相手の方が何してくるかわからんからめんどくさい」って話はあるだろう。
参照:https://stage.st/articles/E8pC2
また、これと類似した流れで誤診や誤判断も危惧されている。
・総じて、「答えを知ってるから思考フェイズすっ飛ばして実行フェイズに入っている」と言えるか。
注目する場所を変えれば、
答えを知っている = 考える気がなくなる。
「認知的近道」とはうまいことを言うな。ヒューリスティクスより意味が伝わりやすいかもね。
処理流暢性との比較
・まず、アインシュテルング効果も処理流暢性も、共に本来は素早く判断、解決するために役立っていることは言っておかなくてはならない。
・処理流暢性の方は、アインシュテルング効果と同様に「処理が楽なものを好む」傾向ではある。
ただ、処理流暢性が高い(=簡単な)ものは飽きやすく、退屈であるともされる。
・また、好き嫌いにかなり関わる。というより好き嫌いの判断に帰属させる結果になりやすい。
処理流暢性が高いほうが第一印象は好感触になる。まぁ変なコンプレックスでも持ってない限りはね。
顔面偏差値で言えば、処理流暢性が高い=美形に感じられるわけだし。「個性的な顔」は美醜で言えば全く褒め言葉じゃないわけで。
・思うに処理流暢性は「刺激や情報」の処理だろう。ぬるま湯ばかりでは退屈になるのも自然だと思われる。
また、経験とともに処理流暢性は上がる。ブスは3日で慣れる、美人は3日で飽きるってやつ。
・一方、アインシュテルング効果で言われている内容は、「自身の能力による課題の解決」に範囲が限られているように見える。
これはもちろん「アイデアをひねり出す」などの場面も含める。
何かをやるつもりじゃなければ、自身の能力は関係ない。危険に対しての緊張だって「身を守る」という目的を果たそうとしてだ。
まぁ何らかの目的はかなり簡単に湧く。その分アインシュテルング効果の影響も受ける機会が多い。
・総じて処理流暢性はより受動的、アインシュテルング効果は比較的能動的である。
「解決」という目的意識が無い限り(まぁ無意識でこれはあるんだが)、発動はしないのではないだろうか。
アインシュテルング効果のトリガーは問題意識、解決意識の可能性。
逆を言えば自分が先入観でものを見た場合、対象を「問題」だと認識しているし、それを「解決」するつもりでいると言える。
処理流暢性の場合は「知っていることと勘違いした」、もっとストレートに「騙された」みたいな感じになるだろう。
メモ
・これは「しつこさ」がかなり危険であることを示唆するだろう。
・機械学習で言えば過学習だよなこれ。適応しすぎて融通がきかなくなる。
・これは限定的な練習をしすぎて実践で不適応を起こす可能性があることを示す。
個人的に見たことがあるのが、同じ模擬テストやりまくって全部100点、実際のテストはズタボロだった奴。
・問題は「1つの答えを知っていると、それ以上考えようとしない」ことにある。
マズローのハンマーとか、ハンマー釘病とか、専門バカとか、馬鹿の一つ覚えとか。
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