・まぁ論文とかだと「完全主義」って表記するのがベターみたいだけど。
2つの完璧主義
・
完璧主義というのは皆同じではありません。
良い完璧主義すなわち適応的完璧主義と、問題が多い完璧主義すなわち不適応的完璧主義があるという研究結果が明らかになりつつあります。
ただこれは比較的新しい区分だと推測できる。論文も昔のだと不適応的完璧主義も「完全主義の特徴」として挙げられていたりすることから。
・3つの分け方もある。自己志向型、社会規定型、他者志向型。ただ、自己志向型のみが完璧主義で、他は違うのではないかという意見も論文内で見たことがある。
確かに社会規定型完璧主義は義務自己からの強迫観念に見える(ただしこのタイプが一番多い)。
他者志向型完璧主義はダークトライアド(サイコパス+ナルシシズム+マキャベリズム)が多いと言われている。この上で「他人に完璧を求める」ので、一見すると完璧主義と言うよりも支配的、操作的な言動のほうが目立つ。
・今回の2つの分け方は、自己志向型(一般的なイメージ通りの完璧主義)のみと見ていいだろう。これは4つの要素がある。
完全欲求:完全であることを求める。
高目標設定:目標を高く設定する。
失敗過敏:些細なことでも「失敗」と捉える敏感さ。ミスを過度に気にする。
行動疑念:自分の行動を疑っている。漠然とした疑いを持っている。
行動疑念は例えば「何かやり残しはないだろうか」などの不安。
完全欲求と高目標設定はどちらも共通して高い。
失敗過敏と行動疑念は適応/非適応で違いがある。
つまり適応/不適応の分かれ目となるのは「完璧でない自分をどう捉えるか」になる。自己評価と、失敗に対しての認知の仕方。
・念の為。適応/不適応で今回分けてるが、実際にはこの4つの要素は多層的に存在し得る。実際にはきれいに2つのタイプに分かれるわけじゃない。
適応的完璧主義
・立てる目標は高く、当然失敗や挫折も多いのだが、抑うつや絶望感には陥りにくいとされる。
完全欲求と高目標設定だけなら積極的な努力に通じる。
・不適応タイプと比べると失敗過敏と行動疑念は低い。簡単に言ってしまえば「失敗を(それほど)恐れない」ということになる。少なくとも過剰反応ではない。
これは些細な失敗で止まる不適応タイプとは違っている。
・完璧主義が病みやすい理由が失敗過敏と行動疑念のため、これらを押さえれば不適応タイプもこちら側になるのではないか。
・ただ、先程の引用ではこちらは「良い完璧主義者」なんて言われていたが、それに諸手を挙げて賛成かと言えば微妙。度が過ぎて良いものなんてほとんどないね。
不適応的完璧主義
・完全欲求と高い目標設定。これは適応的完璧主義と同じ。
目標を高く、完璧であろうとする「動機」が違う可能性がある。
抑うつ、不安、強迫症状、摂食障害など、不適応的な完璧主義は様々な精神的症状があり得るが、彼/彼女たちが完璧さを求めたり、高い目標を定めるのは、「少しでも失敗から遠ざかりたい」という恐れの心理からくるものだとの指摘もある。
目標そのものではなく、「失敗の反対だから」という理由での高設定。
強い行動疑念もまた、「正解がよくわかっていない」状態を連想する。これでいいのかわからない、だから思いつく限りやっておこう、それでも不安だ、そんな風に見える。
結果、全てを完璧にしようとし、「水準」そのものが高くなり、背伸びしなくては届かず、それが当たり前でなければならず、まぁ色々病んだり。
・強い失敗恐怖。うまくやろう、いい出来にしようではなくて、失敗してはいけない、ミスは許されない、というような感覚。
これは極度に人目を気にしているからだともされる。この点が社会規定型と被る。
全てを完璧にしようとする考えは、アルバート・エリス曰く「非合理信念」である。まぁ平たく言えば無理なことやろうとしてる。
無理であることを受け入れられないと、責任転嫁、逃避、破綻した言動などの理由となる。
・失敗した場合は極度に自分を責める。自己批難。
また、この状況を避けるため、なかなか手を付けないいわゆる「先延ばし」の傾向が出ることもある。
・完璧主義が自殺のリスクファクターであることは、知られているだろうか。
この時、完璧主義者は「世界に対して助けを求める傾向が低い」とwikiには書かれている。
これは裏を返せば「助けてくれる人はいない」という世界観で日頃から暮らしていると取れる。
強い失敗過敏と行動疑念は「他者にスキを見せないため」にも見えてくる。
この人間観、世界観が元からで、そのせいで完璧主義になったのか、あるいは完璧主義だから人を当てにする思考をしなくなったのか、どちらだろうか。
人間不信?
それこそ自己愛や他者志向型完璧主義者のような、「他人のミスを責める/弱点を好んで突く、攻撃的な人間」を想定した心理に思える。
メモ
・適応か不適応かは単純にGRIT(目標達成までの粘り強さ)の有無で決まっているようにも見えるが。
GRITは成功のためのキーワードとも呼ばれ、度胸、復元力、自発性、執念の4つの要素。これと不適応タイプを並べてみると、
復元力は無いね。凹みっぱなしだよね。
執念はないね。一度失敗したらおしまいだからね。
自発性と度胸もないね。学習性無力感でここらへんポッキリ折れてるよね。
一見するとこれが問題なんだが、この上でなお「やらなきゃいけない」でやろうとしてたら誰だって病むと思う。
ただ、GRITがないから不適応的完璧主義なのか、不適応的完璧主義のせいでGRITが失われたのか判別できないな。
・理想像を改めて並べてみると、適応タイプは「目標を完璧に達成すること」なのだが、不適応タイプは目標が「自分の振る舞いが完璧であること」であるように見える。
後者の場合、適応的であるとも、不適応的であるとも言われている。研究者に依って結果が違ったらしい。
ただ、自分の振る舞いが完璧であることが目標の場合「何か」が一つでも失敗である場合、その時点で目標は果たせなくなったことになる。
シューティングゲームで言えばノーコンティニュークリアとノーボムノーミスクリアの違いだな。難易度跳ね上がってるね。
で、後者はいわゆる「魅せプレイ」や「縛りプレイ」なわけで、やっぱり「最初から最後まで自分が完璧であるように」という意識があるように思える。
これは「失敗の許容度が初めからゼロ」であることを示す。
反対に「目標を完璧にやり遂げよう」の場合は完走を目的とし、アドリブの許容度も比較的高い。比較的には。
フレームの違いか。視点というより視野。余計な物事まで「完璧」の対象に入っていると、理想像が「不合理信念」に近づいていく。
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