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ヘミングウェイ方式について

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・作家であるアーネスト・ヘミングウェイが行っていたとされる仕事スタイル。

 

執筆や勉強など、長期に渡り数時間の作業をするなどに向いている。短期的なタスクでも可能ではある。

 

 

・効果:学習性無力感や苦手意識の発生の抑止、改善。

 

「やらなきゃいけないことを嫌いにならずに繰り返しやるための方法」と言えばいいだろうか。なげーか。

 

 

ヘミングウェイ方式とは

 

・数字(量)と時間、2つの達成目標を立てる。

モチベーション管理でもあり、集中法とも言える。

特にクリエイティブな作業向け。

 

1:「どれだけの量をやるのか」決める

2:「どれだけの時間やるのか」決める

3:「どちらか」満たしたら終わる

 

 

終了条件は両方を満たすことじゃなく、「どちらか」。ここ大事。

 

 

人の目標のたて方、実行についての問題点

 

・人が自然と行う目標のたて方には、タスクに対しての苦手意識や何をやっても無駄だという気持ち(学習性無力感)が発生する余地がある。

 

簡単に言えば「失敗」の余地が多い目標のたて方をしている。結果、「自分はだめだ」となりやすい。

 

・ここでいう「失敗」はほとんどが「できなかった」ではなくて「予定通りに物事が進められなかった」という形。

 

実際にはタスクは完了していることが多いが、その上で失敗した感覚が生まれている。

 

リソースを使い潰す傾向

 

・「パーキンソンの法則」というものがある。組織の傾向だが、個人にも結構当てはまる。

 

 

・第一法則は「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というもの。

 

時間を設定すると余裕があってもその時間を「食いつぶす」可能性があるということ。

 

実際、残業ゼロにした会社の社長が「売上げ落ちたでしょ?」とよく聞かれることに対してむしろ上がった、と語っている。

 

 

・第二法則は「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」というものだ。

 

身近に話を移せば、PCやスマホの容量が挙げられる。これも「限界まで増え続ける」という傾向がある。

 

 

予測は甘い

 

・人は「明日の自分」を信じすぎている、と言われている。

 

「楽観のバイアス」と呼ばれる認知バイアスがある。リスクや脅威などを過小評価し、自身の行動選択や能力は過大評価する傾向。

 

簡単に言えば「出来ないのに出来ると思いやすい」。

あるいは「大丈夫じゃないのに大丈夫だと思いやすい」。

 

何らか災害に見舞われた際、人はパニックを起こすよりもむしろ「ただちに避難行動をしようとしない」傾向があることが問題だとされている。

そのくらい人は「何かしないといけない」気持ちになかなか切り替わらない。

 

 

・このような「楽観視のバイアス」が計画立案、あるいは実行中に浮上しやすくなる。「計画錯誤」と呼ばれる。

 

この言葉は認知心理学者のダニエル・カーネマンが作ったが、彼自身それを体験した。

 

彼はイスラエルにいる頃、教科書執筆の機会を得ました。執筆は順調で、1年ほどで全体のうちの2章分を書き上げました。

 

この時、彼は執筆チームのメンバー全員にこの教科書が完成するまでにあと何年かかるかの予想を聞きました。全員の予想は2年を中心に最短で1年半、最長で2年半というものでした。

 

結果はどうかと言えば、教科書が実際に完成したのはずっと後の8年後でした。予測の4倍オーバーの期間を要したことになります。

 

そう、もうおわかりのとおり、カーネマンを含めたメンバー全員は目の前の進捗がスムーズだったため、楽観バイアスによる「計画錯誤」に陥っていたのです。

 

楽勝だと思ったら、全然そうではなかったのです。

 

https://president.jp/articles/-/18216

 

・前提情報の間違いもある。普通いちいち数分で終わるような細々したことの時間は計らない。タスクは大体それらの積み重ねだ。少しのズレが大きくなる。

 

加えて対象が一定じゃないこともある。例えば勉強において、テキストの1ページを終わらせる時間がどれくらいか。

 

テキストの全てのページが同じ問題数とも限らない。

問題の一つ一つが同じだけの時間で処理出来るとも限らない。

時間がかかるものも、かからないものもあるだろう。

 

この上で「毎日30分で5ページやろう」と決めていたなら、まぁ結構雑とも言える。出来るなら問題ないが、出来なくても別に不思議じゃない。

 

 

・不得手な分野で張り切ると、度が過ぎた目標に決めやすい。

 

例えば運動音痴が自分の体力わかってないから無理な距離のランニング計画立てたりだとか。だから仮に走れても長続きしないことのほうが多い。

 

時間をかければ出来るかも知れない。ただ、時間とタスクのセットで目標を設定した場合、この見通しの甘さは失敗の主たる原因となる。

 

逆を言えば「時間が足りなくて失敗となる」形が非常に多い。ほとんどが楽観視によりスタートするタイミングが遅いことによる。

かと言って早めにスタートした所で、時間を「食いつぶす」傾向がある。詰んでる。

 

 

 

人の能力は一定ではない

 

・思っている以上に人の処理能力は変動している。脱線していることに気づかないことと、集中力に依る変動の問題がある。

 

 

・脱線は大抵自覚がない。メールを1時間に1回チェックすると答えた者が、実際には一時間に12回チェックしていたという話もある。

 

遅れて当然なだけ脱線しているのに、「真面目にやってこの実力」だと思っていることもあるということ。

 

 

・特にクリエイティブな作業は、生産工場のような作業とは違う。掛けた時間が必ず形になるわけでもない。これは予測時間がほぼ当たらないことを意味する。

 

 

・集中力の話としては、特にマルチタスクで効率がガタ落ちすることが知られている。

 

マルチタスクとは要は「ながら作業」。メールの話もそうだし、スマホは大体「気を散らせるツール」として人に依っては超警戒する。

 

マルチタスクは効率を落とす。効率が落ちているのだが自覚は殆どない。学習性無力感とは反対に、やったつもりになってほとんどやってないという最悪な事態になる原因となる。

 

 

・睡眠不足に依る性能劣化も挙げられる。これも自覚がほぼ無い。たちの悪いことに普段どおりに出来る時間帯もあるため、一日中問題はないと思いやすい。

 

 

これらの結果としての苦手意識や学習性無力感

 

・既存の目標の立て方は計算が間違ってる事が多い。そもそも正確な計算は無理だろう。
この上で完了&時間どおりを目指すのは、失敗の要素も多いことを示す。

 

連続で失敗すれば「自分には無理だ」と思うかも知れない。

いつもギリギリで間に合っているようでは、不要な緊張感が生まれるだろう。

 

こうしてタスクは「嫌なこと」であると脳は覚える。自分がやりたいことでも。

 

・本来これは過程において味わっても不思議ではない気持ちだが、特に自分が好きでやっていることは、利益ではなく「達成感」に価値を感じているとされている。

 

「失敗」となるなら、達成感はありえないな。

 

 

ヘミングウェイ方式についての考察

 

・全体としては、「時間までやる」「完了する」、この2つの「どちらかで達成」とする状況を作っている。

 

それに比べると、私達の普段の目標の立て方は、「時間内に」「完了する」という2つの「必須条件」を備えていることが多い。

 

比較すれば「失敗と認識する」可能性が高いのがどちらかは一目瞭然だろう。

 

・達成目標だから「完了しなければ意味がない」というのも事実だ。

 

ただ、学習性無力感のような「失敗」が続くことからの無力感を避けようと思うなら、毎度毎度「成功」として終わりたい。

つまりヘミングウェイ方式は精神衛生上いい。

 

 

・私達は普段の方法により自信を無くし続ける可能性を持っている。

裏を返せばヘミングウェイ方式は「自信がつく」ということでもある。毎回やり遂げているからな。

 

人によってこの点は、自分を騙しているだとか、なんかズルいとか感じるのだろう。ただ、脳は人の価値観から見ると馬鹿だから。脳に従順過ぎてもろくでもないことになる。

利用する側に回ったほうがメリットが有るだろう。

 

 

・事実として「達成感」を味わっていい場面だとは言える。

 

手はつけた。

決めた時間やり通した。

 

この点は肯定されなければならない。「予定実行」としては成功している。

「終わらなかったから失敗だ」とするのは、この点を無視していることになる。

 

 

・タスクが完了してないってのは確かに気になるが、はっきり言って目標設定が正しかったとも限らない。

 

「最初から無理があった」のに「能力・努力不足で失敗した」なんて思ってたら、目標のたて方というスキルは上達しない。

むしろ目標を絶対値としているから「失敗」になる。自分の目標のたてかたを疑わない。

 

 

時間について

 

・ヘミングウェイも「33分33秒」のユージン・シュワルツもそうだが、彼らは物書きだった。

 

クリエイティブなものは全てそうだが、アイデアを捻り出したり試行錯誤などで時間が経過し、「形に見える成果」が出ないまま時間が過ぎる事がある。

 

結果を求めての行動でこれだと「無駄な時間を過ごした」と感じ、自己嫌悪に陥りやすい。実際には完成に近づいていたとしてもだ。

 

両者が経過時間を消費されるリソースではなく「目標」の一つとしたことは、必然的な発明だったのかも知れない。

 

 

・決定した時間より早く終わった場合、「余った時間は報酬」としている。

 

これはパーキンソンの第一法則を抑止するギミックになる。「予定より早く終わらせる動機」になる。

 

このため時間については長めに取り、早く終わらせ、浮いた時間を「報酬」とする、というのがベターとされている。

 

また、短すぎると「ただ時間が過ぎるのを待つ」みたいになることを危惧されている。

長めの方が良いだろう。

 

 

治療的ダブルバインド

 

・「どちらを選んでも正解」な選択肢を与えることを治療的ダブルバインドと呼ぶ。逆にどちらも不正解なのがダブルバインド。

 

説明しろ→説明する→言い訳するな!とか。

この上で説明するまで「説明しろ」の無限ループとかね。

 

 

・今回で言えば、「既存の目標設定」はダブルバインドの属性が強い。

 

時間と完了の2つの目標は相反してはいないが、「どちらも達成しなければならない」となれば難易度は加算される。

 

時間難易度10 + 作業難易度10 = 難易度20

 

乗算だったら難易度100。

 

・ヘミングウェイ式も実質両方を同時に試みることに違いはないが、片方を達成したのにもう片方がまだだから駄目、ということもない。目標の難易度は据え置きである。

 

時間難易度10 or 作業難易度10 = 難易度10

 

 

・何度も言うが、「同じこと」をやって気持ち的にこれだけ違うのだとしたら。ヘミングウェイ式が良いと言うより既存の方法が酷い。

 

自分にプレッシャーをかけることを人は結構やるんだが、長期的に見ると特に「次から嫌になる」ようなリスクが高い方法と言える。

 

人はそれを我慢してやるのが真面目だ大人だと言うから、計画の立て方がヘボいまま成長しない。

 

 

「既存の目標設定」について

 

・既存の方法がなぜこんな鬼畜仕様なのかは、まぁ自分を怠けさせないためだろう。

 

例えば同僚が仕事をしている側でただ座ってぼーっとしているだけで同じ給料を貰って良いのか、と言えば駄目だろう。

 

この時点で「やらなきゃいけない」ことは分かる。

 

 

・加えて人の営みは時間によって制御される。時間は有限であり、有効に使いたいものだ。

 

大抵自分の遅れは他者にも影響を与える。社会的に具合が悪い。このため「期日」と言う要素もある。

 

依って「時間内に」「やり遂げる」という目標構築のスタイルは社会的に自然と形成される。まぁ大体はそれで成果はでているわけだ。負担はともかく。

 

 

・既存の目標の立て方は「仕事のやり方」に近い。言い方を変えれば「金が出なきゃやらねーよ」というものだ。

 

そして自分の目標だと金が出ない。メリットやリターンはあるのだろうが、長期的抽象的なものであり、即時性や具体性はあまりないことが多い。「将来への期待」に近いか。

 

自主的な目標に対しては「教育的なやり方」が望ましい。興味、関心、達成感、これらを維持、上昇させる要素が求められる。

 

仕事のやり方 = 燃え尽きるようなフルスペックでの実践

教育的なやり方 = 繰り返し出来るようなペース配分と動機付け

 

 

・今回の場合、ヘミングウェイ式に限らず集中法/モチベーション管理を求めるというのは、「やるべきこと/やりたいこと」に対して、それこそ「時間を有効に使いたい」表れでもあるはずだ。

 

やる気はあるし、時間をムダにするつもりもない。既存の方法は必要ない。

 

そうすると、「仕事のやり方」のデメリットだけが残る。「無駄にハードルを上げている」状態になる。

 

ヘミングウェイ式は自主的な行動に対して向いていると言えるだろう。

 

 

ヘミングウェイの執筆スタイル

 

・彼は早起きだった。毎日5時30から6時ごろに起床、正午まで執筆。大体6時間。

 

・書いた語数を毎日記録していた。「自分をごまかさないため」だそうだ。
「やったつもり」になることを警戒しているようにも見える。

 

 

・次がどうなるかが分かる所でやめる、ということを心がけていた。翌日はまずそこを読み直し、どう書けばいいかすぐ分かるように。

 

また、やる気があるうちに終わっていたらしい。「なんとか我慢して翌日まで待ち、また取り掛かる」と語っていたそうだ。

 

やる気を使い果たさない。「まだやりたい」と思う状態をキープしている。

 

これは翌日の初速を出しやすい工夫に見える。ゲームで言えば「セーブとロード」がスムーズになるよう意識している。

 

 

・正直なところ、「ヘミングウェイ方式」をヘミングウェイがやっていたような証拠は見当たらない。特に予定より早く終わった時の挙動は、今回見つかっていない。

 

ただ、ヘミングウェイ自身の執筆スタイルは「モチベーション管理」としては注目に値するとは思う。

 

「完了する」「成果を出す」だけではなく、「これだけの時間、手を付けた」という事実をちゃんと評価している。

 

 

まとめ

 

・一つ言えることは、これは既に染み付いた苦手意識や学習性無力感からの「リハビリ」にかなり適していることだ。

 

私達が自然に行う目標設定とその実行は、苦手意識や学習性無力感への入り口となりやすい。

 

ヘミングウェイ方式は「必ず達成できる」ため、これらを防ぐ効果がある。

 

 

・最も秀逸なのは、「やること自体は大して変わらない」ということだ。この方法で変わるのはものの見方であり、マインドセットやパラダイムシフトに近い。「視点を変える」。

 

 

・最大の利点は「手を付けやすい」ことだと思う。

 

既存の計画立案は「次から嫌になる」要素が満載になる。
ヘミングウェイ方式はこれがない。

 

 

ユージン・シュワルツの33分33秒は、「最悪、椅子に座っているだけでもいい」という緩いものだった。一見甘いが、「始めることに対してプレッシャーを掛けない」という意味では優秀だろう。

 

ヘミングウェイの方も、「時間で終わることができる」という保証がある。

 

 

・実際の生産性は別に犠牲になってない。決めた時間、決めたことはやるんだし。

 

 

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