「集中力は8秒しか続かず金魚を下回る」説について

「現代人の集中力は8秒しか続かず金魚の9秒を下回る」

・マイクロソフトがそう発表したんだと。ちなみにこの話、大抵「人間は金魚以下の集中力」というオチになる。

 

マイクロソフトの発表について

巷にある話としては以下。

・マイクロソフト社、カナダの研究チームが2015年5月に発表したレポート。

・2000人の参加者の脳波を測定した結果。

・人間のアテンション・スパンが8秒。金魚が9秒。ヒューマンの負け。

・2000年には人間の集中力は12秒あった。

 

これについて調べたものは以下。

・日本では朝日と日経がこれについて記事にしている。が、研究についての情報は巷にあるものと同レベル。

 

・タイム、ニューヨーク・タイムズ、USAトゥデイなど海外大手メディアでも紹介はされた。

 

・日本語サイトに限れば、どこを見てもせいぜい「MS社、カナダ、研究、2000人」程度の情報しかない。

一番詳しかったので上記+「112人に脳波測定」だった。
どの研究所の誰がやったのかが一切出てこない。

 

・有力な情報としては、MS社の研究ではなく、別のところだったと。たどってみたらとある研究者に行き着いたが、当人曰くそんなこと言ってねぇと。

 

発表自体はMS社が行ったのは事実のようだが、それは一次資料ではないらしい。実際の情報源はあまり信頼できるところではなかったそうな。

詳しいことはhttps://togetter.com/li/1111613で。ガチ勢が突っ込んでて面白い。

どうもネットミームというか、都市伝説なのが有力か。
はいおしまい。お疲れ様でした!

・個人的に面白かったのは、このミームは前座や枕詞として使われ、各々のサイトは本題に入っていくことだ。

スクリーン中毒、マインドフルネスなど。今回は見かけなかったが、例えば集中力を増やすサプリやら教材やらのセールスにも繋げやすいだろう。

問題は「人間は金魚以下だから○○をするべきでしょう」みたいなセールストークに使われてることだな。

 

肯定する材料

・いやまぁ信じてないけど。探したらいくつかあった。

デボラ・ザック

・マイクロソフトと別に同じこと言ってる人がいるらしい。
Devora Zack(デボラ・ザック)。「Only Connect Consulting」のCEOで、著書もいくつかあるし、日本語訳もある。
マルチタスク否定、シングルタスク推奨ってスタンスの人。

人間の集中力は平均8秒と言われています。Zackさんによると、「これは金魚よりも1秒短い」のだそう。

現代人は起きている間ずっと雑念に囲まれているため、ひとりで静かに考える時間が少ないのです。

https://www.lifehacker.jp/2015/06/150613stop_multitask.html

 

8秒ルール

・ウェブサイト上で、「8秒以上待たせると客は帰る」という経験則からそう言われているらしい。

 

8秒ルール(はちびょうルール)とはウェブサイトを構築する際のガイドライン・経験則の1つ。

利用者がそのサイトを訪れてから、ページ全体の内容が表示されるまでに8秒以上を要すると、利用者は待ちきれずに他のサイトに行ってしまい、再び戻ってくることが非常に少ないとされる。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/8%E7%A7%92%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB

 

・ただこれは、1999年には既にあった説なので、件の発表とは合致しない。
ADSL時代では取引サイトで8秒以上かかると、購入するつもりのあった客も帰ってしまい、戻ってこないということが多かったそうだ。

ISDNや光回線により今はそんなこともないが、代わりに利用者の「待てる時間」が更に短くなり、3秒やら6秒やらと言われるようにもなった。

 

・Googleも確か、検索結果からどのサイトを見るかの判断が0.2秒だか数秒だかって話はあったな。

特にネットに於いて、人がせっかちなのは間違いないだろう。

 

人間の集中力が秒単位しか持たないという点

・実はやろうと思えばそこそこ肯定できる。が、意味的には嘘に近い。

 

・集中力には種類があるとされる。実際ゾーンやフローなどのかなり特殊な集中状態から、蚊を叩き潰してやろうと身構えている集中状態まで色々あるだろう。

一説では広いと狭い、内側と外側の組み合わせで4種類とか、5種類あるとかって話もある。

今回の話、「どの集中力か」が語られていないので、割と途方に暮れる。
大人が集中できるのが20分とも言われることがあるし、集中までにかかるのが25分とも言われることがあるし、割とごちゃごちゃかもしれない。

少なくとも集中が秒単位しか続かないという話においての「集中」という言葉は、私達の普段使いとしての「集中力」という言葉とは別物だと思っていい。

 

・以前に書いたが、集中状態には一瞬の「タイムラグ」がある。遅延。

 

集中力の一瞬のラグ
集中力の一瞬のラグ ・パナソニック技報から。 同程度の認知処理時間が必要な認知タスクの問題を連続で実施していると,その処理時間が著しく延びる問題があることに着目している. 第1図は,難易度が同じ問題の認知タスクを連続的に被験者に与...

 

要点としては、数秒で解ける同レベルの問題を連続でやらせると、処理時間が10~30秒かかることがある。難易度には関係ない、という点。

簡単に言えば集中状態が続くと、脳が勝手に休憩取る。その間は非集中状態になり、情報処理は遅延する。どうも性能劣化ではなく、ストップしているらしい。

本来この集中についてのモデルは「知的生産性変動モデル」と呼ばれ、この自動休息は短期と長期がある。作業(集中)時間と短期休息はセットで「集中状態」と解釈されている。
長期休息が非集中状態。私達が「集中力が切れてきた」と感じる状態。

集中+短期休息が数セット続いたあと、長期休息が始まる=集中が続かなくなってくる。

 

・これを短期休息も非集中状態と解釈した場合、集中時間はかなり短くなる。短期休息に入るまでの具体的な秒数がこちらでは確認できなかったが。

まぁどっち道集中が8秒しか続かないってのは厳しいだろう。

 

金魚の集中力をどうやって測ったんだよ

・まぁ都市伝説だった場合、やってないんだからこのツッコミも空に消えるのだが。

 

・犬猫とでも遊んだ経験があればわかると思うが、熱中していたかと思ったらぶつ切りのように途端に興味をなくす、というのは動物では珍しくない。

魚にしたって、しつこく追いかけ回していたと思ったら途端に諦める、というのを動画か何かで見たことがあるだろう。

これらは確かに「集中力が切れた」ように見える。

 

・多分やったとしても、餌追いかけてる時間測るとかその程度じゃねーかな。

 

・これは先程の短期/長期休息のどちらに当てはまるのだろうか。
もしも短期休息だった場合、本来はそこで終わるのが自然ということだろうか。

だとすると、集中しない(またはすぐに集中を終了する)ためのシステムは生物に元からあり、その上で終了せず続行させるシステムも人間にはあるということになるか。

野生動物がゾーンやフローに入ったら多分死ぬ。「飽きる」って現象は、生存戦略的に獲得したものかも知れない。

 

 

集中するのに23分かかる

・これは「そういう話」はある。ちなみに途切れた集中を回復するのに25~27分かかるとされている場所もある。まぁ、邪魔は入らないに越したことはないようだ。

カリフォルニア大学、アーバイン校、グロリア・マーク(Gloria Mark)が発表した、とされている。

 

一般に、従業員の集中力は3分間しか持続しない。米国カリフォルニア大学のGloria Mark教授は、中断した仕事を再開するには最大23分間を要すると主張している(根拠3参照)。

この数値を単純に週40時間労働に適用すると、集中している時間は1週当たり約4.5時間となる。つまり、1日当たり1時間に満たない。

 

https://www.gartner.co.jp/b3i/research/140722_inf/index.html

 

 

中断から仕事のリズムを取り戻すまで平均して23分15秒。
ただ、中断の「質」によるそうだ。
具体的にはそれまでやってたことと関連がある中断なら問題ないのだとか。

機会的に処理できる、思考がそれほど必要ではない中断は大きな邪魔とはならないらしい。

参照:https://www.lifehacker.jp/2015/08/150820_job_productivity.html

 

3分に1回は邪魔が入る

・3分に1回とも、11分に1回とも言われるが、頻繁に邪魔が入り、現代人は集中どころじゃないという話。

 

・この話は大体「仕事中に声かけてくんな」というオチになるね。

 

・元々集中状態は当人の能力だけの話ではなく、外的環境との相関的な関係にある。

簡単に言えば
「集中する力」ー「邪魔」= +なら集中 -なら集中できない
みたいな。

加えて+値が多ければ多いほど集中できる。

例えば机が散らかってるだけで集中力が落ちる。
一見視界に入るだけで無関係に思えるが、脳は見る→無関係だと判断する→無視、という処理を常に行っている。当然負担は増える。

この必要な情報以外はカットできる能力が集中力かも知れない。

極論、何するかわかんねぇ奴が自分の後ろをうろちょろしてれば気が散るだろう。ある程度の警戒を自然としているから。

舌打ちや貧乏ゆすりや独り言が、害意がなくても嫌われるのは注意をひったくるからだろうな。

・普通人に話しかけられたら追い払うにしても何かしら喋らなきゃいけないわけで、無条件で「邪魔」が勝つ。ソフトな言い方をすれば「中断は余儀なくされる」。

つまり「話しかけられたら集中は終わる」ということになる。まぁ前述の通り、機会的に処理できるならそれほど大きな問題にはならないようだが。

それらも仕事のうちだろうし、なしってわけにもいかない。組織的な話になってくるが、まぁ質問していい時間と実行の時間は分けれるだけ分けたほうがいいだろうね。

 

・自分の内部に気を散らす要素があることも否めない。特にメールチェック、SNSチェックなどの「気になる」という気持ちが湧く場面。

メールチェックしない人はストレスレベル低いって論文も発表されてるらしく(これもグロリア・マーク)、程々のほうがいいのだろう。

自覚がほとんどないらしい。メールチェック頻度の自己申告の平均が一時間に一回だが、実際には5分に1回チェックしていたとのこと。サバを読むにも程があるな。

加えてメールチェックをやめると「孤立感」を感じるとかで、根が深いようだ。組織から切り離された感じ、機会を逃している感じがした、とのこと。

参照:http://jp.wsj.com/layout/set/article/content/view/full/466753

 

メモ

 

・ハーバート・サイモン曰く、「情報の豊かさは注意の貧困を作る」。

「わかりやすさ」を意識して作られたものは、その分「勝手に脳に飛び込んでくる情報」だとも言える。

わかりやすかった所で、対応するか無視するか、「判断」は余儀なくされる。注意は奪われやすい。

 

・過集中とフロー/ゾーンの大きな違いは選択的集中か否かであるとも言えるだろう。

集中力の本来の仕様がこんな感じだとすると、数時間くらい集中しているフロー状態がどれだけ特殊かよくわかるな。

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