HSPと発達障害

HSPと発達障害

・HSPは先天的なものであり、現状では加齢とともに緩和するだとかそういう話はないようだ。

 

・一部の発達障害とかなり類似している点は多い。HSPの提唱者であるエレインアーロンの所へは、HSPかも知れないが、自閉症やアスペルガーかも知れない、という相談は多かったそうだ。

 

エレイン・アーロンが言うには

 

・彼女自身は結構慎重というか、HSPを知った人へ注意点を3つ挙げている。

1:HSPを病気だと誤解する可能性

2:HSPではない別の病気、あるいは問題をHSPだと誤解する可能性

3:HSPと同時に別の病気、あるいは問題がある可能性

特に「全部HSPのせいにして安心しようとする」ことに警鐘を鳴らしているようだ。

安心したいのはともかく、偽りの安心によって対応可能だった問題が放置され、対応困難/手遅れになってしまうことを危惧している。

これを「原因不明の不安を抱えるよりも、何かしらの答えが欲しい」心理が邪魔をする。この気持はわかりやすいものに飛びつく傾向を高める。

 

・今回は2や3について考える必要がある。

HSPではない、別の問題がある可能性。あるいはHSPに隠れた、別の問題がある可能性。

 

・エレイン・アーロンは自閉症スペクトラム(以下ASD)とHSPについてはこう述べている。

 

・HSPとASDの誤診や誤判断はある。特に男性に多い。ASDは男性が多いため。

 

・HSPを「ASDの軽いもの」と捉えている専門家も多い。質的には同じであると。
後々わかるだろうが、質的に違う。

 

・確かにASDの子供も強い刺激に悩まされ、引きこもりがちにはなる。

 

・両者は刺激に対して敏感で、神経が高ぶりやすいという共通点はある。

ASDは情報を適切に処理できないため、すべて受け止めるかシャットアウトするかする。このため時に過敏だが、別の物事に対して時に「ニブさ」もある。あるいは気づきもしないことが。

HSP敏感さは情報の「過剰処理」であり、より深い意味を汲み取り、傷つく傾向がある(調べたが、逆にASDは深い意味を汲み取れない傾向が高い)。

 

・ASDなのにHSPだと思いこんでいる人、というのはいるらしい。「自分は正常である」という答えとしてHSPは求められてしまうのだとか。

 

・自閉症の専門家でも男性のアスペルガー症候群とHSPを区別するのは難しいだろうと述べている。

 

・HSPの男性がASDと誤診/誤判断される理由の一つに、家族(だいたい親)の影響を挙げている。

消極的であり、俗にいう「男らしさ」がない事への理由、さらに言えばそれが「自分のせいじゃない」という理由を親が求めるため、「軽いASDだということにしたい」心理が働くだろうと。

これはASD診断を「家族に対しての、自分がこうであるはっきりした理由」として欲しがっている、ということらしい。「生物学的な理由」だから。

まぁこれは「かもしれない」程度の言い方だったが。

 

・「こうだったらASDを疑ってください」としてこう述べている。

・幼い頃から目立った問題が有り、家でも家庭でも同じ様に見られた。

・感情的なサイン、他人への共感などを認識するのが難しい。

・また、「HSPかもしれない特徴」としては、

・周りからは問題行動はないと認識されている。

・なぜその行動をとったのか納得できる理由がある。
例:刺激を減らしたいから避ける。

また、その行動を取る過去の経験がある。

・騒々しい、競争させられる環境を避けたがる(我々の文化の殆どがそうだけど、とも言っている)

 

・また、「過去の経験」が元でそれを避けようとするのはASDでもHSPじゃなくてもあり得るとも言っている。そりゃそうだ。

ただし、これらが原因で「避ける」ことは、能力がさらに錆びつくともしている。

 

・ASDに向けたメッセージとして、「あなたのことを一番わかっているのはあなた自身です。もう一度勉強して、自身のことを調べることに挑戦してみてください」としている。

 

このHSPか発達障害かという問題は「専門家もはっきりとはわからんかも知れん」という五里霧中な状態かも知れない。実際エレイン・アーロンはセカンドオピニオン、サードオピニオンを勧めていた。

エレイン・アーロンの判断ミス

・彼女は「HSP」という概念を発表した第一人者であり、20年以上もその分野で活動しているわけだが、それでも間違えたことがあると語る。

 

http://hspjk.life.coocan.jp/FAQ-HSP-ASD.htmlから。

 

二人の親戚

・エレイン・アーロンの親戚にASDが二人いるそうな。この二人が子供の頃に刺激に過敏であることを見て、アーロンはこの子達がHSPではないかと「思い込んでしまった」と述べている。

特に親目線で見て「自分の子が自閉症とは思いたくない」というバイアスは働くだろう、とも。結果、より無難な「HSPだろう」という考えに至る可能性。

この上で早期にはっきりさせるべきだ、ともしている。複数の専門家に意見を聞くべきだ、と。

たまたま出会った親子連れ

・また、彼女は成人したアスペルガーの男性と出会ったことを語っている。

バックパック旅行に親子連れで参加した「彼」は、自分の子供が荷物を詰め込みすぎてしんどい思いをしていた。

彼は「それはお前が荷物を詰め込みすぎたからだよ」と無感情に告げたそうだ。思いやりも、苛立ちすら見せず。

見かねたアーロンの夫(社会心理学者。恋愛においてよく言われる「吊り橋理論」を発表した2人のうちの1人だったりする)がその子の荷物を持ってあげても、感謝もなく、驚きもなく、そこに至るまで自分がどうするべきだったのかわからないようだった。

 

・この上で「いい人」だったらしく、アーロンが怪我をした際には適切な手当をしてくれた。その時、「この人はHSPでは?」と思ったそうだ。

その後「彼」は旅の終わり際、自分がアスペルガーであると告げた。共感性がないのが理由で離婚していたそうだ。

この時アーロンが気づいたのが、「彼」もまた敏感であり、感情もあるが、他人が感情を体験していることを理解するのは難しい、という点。ここが、ASDとHSPの違いだと。

 

・総じて非常に紛らわしい。ご覧の通り、特にASDとの混同は第一人者でもあり得る。

 

・一応フォローしておくが、エレイン・アーロンは長年HSPの分野で活動してきた自負もあるだろう。その上でHSPかASDかと悩んだり、間違った道を進む人の無いように、この話をしてくれたのだと思うよ。

 

改めてこちらで調べた上では

・ASDは反復行動や同じ質問を何度もするなどの「繰り返し」が多い。一度関心が向くとそれしか関心がないかのようにしつこかったりもする。HSPはそのような行為は見当たらない。

 

・「自閉」は現実生活から引きこもることを指すらしく、その点では大体のHSPはこれには当てはまる。消極的だったり引きこもりだったりがASDと別の理由であるのと同じくらい、HSPと別の理由であることもある。

 

・ASDは相手の感情を察知する、表情を読む、雰囲気を感じ取ることが苦手とされる。逆にHSPは感じすぎて圧倒される。

俗に「コミュ障」と呼ばれる中には、空気読めないのと、空気読みすぎて消極的になるのがいる。前者はASD、後者はHSPの可能性は高そうに思えるが。

 

・ASDの対人コミュニケーション上の障害には会話のやり取りが苦手、隠れたメッセージを読み取るのが苦手、独り言、距離感が近いなどがある。少なくともHSPは距離感はむしろ遠すぎる方が問題だろう。

 

・感覚刺激に対しての「過敏」はASDにもある。ただ、同様に鈍感さ、異様な関心などもあるとされ、一定しない。

例えばシャツのタグが不快だから切り取るような面もあるが、痛みや熱さ、冷たさなどへの無関心もある。これは「1人の人間が」である。

良くも悪くも全部顔面キャッチしてしまうHSPとは違うな。

 

・どうも人の顔を見る時、ASDは目よりも口を見る傾向があるらしい。

 

・ASDとは違うが、シャワーが「痛くて」泣き叫ぶ子供、というのもいるらしい。「触覚過敏(防衛)反応」と呼ばれる、これも発達障害の一種だそうだ。炭酸が飲めないとかそういうレベルじゃない。

これは聴覚にもあり、周囲のなんてことない雑音が、黒板に爪立てて引っ掻くレベルの不快さを伴うそうな。

 

・なお、ADHDとの関連について語っているものは見当たらなかった。ただ、後述するが類似する点は多い。

 

・病名を区別する必要があるのは、対応や治療法が違うからだ。

強調しておくが、病名が違うからと言って、同じことは感じない・同じ悩みは持たないというわけではない。

逆を言えば、同じ悩みに対して、「答え」は人それぞれ異なる可能性がある。銀の弾丸は存在しない。

 

・総じて「HSPと発達障害は症状が相当かぶっている」ことは否めない。

理由としては、HSPは「過敏さ」が中心だからだろう。もう一つ大きな特徴である「感情的」というのもそうだ。範囲が広すぎる。

だから過敏さや過剰反応が症状として出るものは全部疑わしくなる。極端な話、潔癖症だってそれっぽいって言えばそれっぽい。

感情的なことに至っては環境やら気分やら何から何まで当てはまる。

細かく見ればやっぱり違いはあるのだが、HSPのテストだけして自分はHSPだ、発達障害のテストだけして自分は発達障害だ、とするのは早計かもな。
両方かもしれないし、どちらでもないかもしれない。

 

・個人的にHSPは「感受性」に着目した視点だと思う。一方発達障害などはASDに限らず主に児童が注目される「行動」に着目した視点に思える。

これは内面と外面というお馴染みの二極であり、切り口が全く違う。

別物だから、「両方」ということもあるだろう。もちろん両方違うこともあるかもしれない。

 

発達障害の定義

・さて、生来のもの、という意味ではHSPは発達障害の条件は満たす気もする。
具体的に発達障害の定義はなにか。

と思って調べたんだが、どうも各発達障害それぞれの定義しかないのかなこれは。

参照:

文部科学省:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/008/001.htm

 

発達障害情報・支援センター:http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B/%E5%90%84%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9/

 

・個人的な感想だが、「先天的だけど『障害』じゃないよ」って意味で「HSPは発達障害ではない」って言ってるんじゃないかな。

他にはHSPは人間の15~20%いるとされており、「異常とするには数が多すぎる」と言われている。

 

新規追求型/刺激追求型HSP(HSS)

・ADHDが語るには、「周囲の環境音、物音などで気が散る」とのこと。人よりもね。この点はHSPでも共通するだろう。

 

・既に敏感さ、気の散りやすさについては共通する点は多々あるわけだが、もっと露骨にADHDとかぶりそうなのを見つけた。

 

新規追求型/刺激追求型HSP(HSS)テスト

http://hspjk.life.coocan.jp/HSS-Test.html

 

敏感さと衝動性を併せ持つとされる。衝動性はADHDの大きな要素だ。衝動性ないケースもあるけど。

 

・「強い刺激(スリル・新鮮さ)を求める」という感じ。その分退屈を嫌う。

 

・30%程いるとされる「HSPかつ外向性」の人間がこれに当てはまるという。

 

ちなみに男性で13、女性で11項目以上該当だったらHSSの疑い有り、とのこと。

私はバートルテストではエクスプローラー(探索者)、ビッグファイブでは新規追求性が高めな性格してるんだが、面白いことにこのテストやったら3つしか当てはまらない。

 

メモ

・HSPと発達障害との違いについては、区別するには「第一人者でも直感的な判断では間違えるくらいに慎重を要する」。正直な所はこれが現状だろう。かなりの範囲でダブることが多い。

あと、日本では医師免許は取ったら取りっぱなしで、更新の必要が現状ないらしい。これは、「HSPの存在を知らない現役の医師」が存在する可能性を示す。「区別できる人間が少ない可能性」の示唆でもある。

また、自己判断に於いてはかなりバイアスがかかりやすい。特に一つのことしか調べてない状態は非常に危険だと言える。

「こうとしか思えない」じゃなくて「それしか知らない」状態。この上でそうだと思いこむ、というのは実は多い。

 

・発達障害よりも精神障害の方がHSPの症状に近いものが多い。

ただこれは「親がハズレだった」ケースも当てはまる。これを発達障害とは呼ばない。毒親だとか、アダルトチルドレンだとか、愛着障害だとか、その辺りの話になる。

アダルトチルドレンの他者への過度な気遣いや過敏さも似ていると言えば似ている。

 

・先天的なもの、あるいは発達段階に於いて得た「生きづらい理由」という意味では、どちらも違いはないだろう。

恵まれた環境ならば伸びる、というのも別にADHDも同じなのだし。というか誰だってそうだ。まぁHSPの方が素直に伸びる傾向は高いらしいが。

そして、非常に重要なことは、別に誰もその「恵まれた環境」を演じてやる義務はないことだ。ここを取り違えると、簡単に現実逃避として世の中を恨むようになる。

「周りが自分に合わせてくれればいいのに」なんて考えは、誰もがそう思ってるから、誰も合わせない。

そもそもこれ、受け取り方に依っては「自分は変わらない=成長しない」って意味だからな。だから口にもしない事の方が多い。

まぁHSPやADHDとは無関係にいい年こいた中年がそういうこと言ってたりもするが。特に自己愛。過敏型も誇大型も両方に言える。

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何らかの形で「合わせてしまう」アダルトチルドレンは、親がある側面で幼稚であることが多い。この親に「適応」した結果の自己犠牲。特に「偽親」とも呼ばれるイネイブラー、カウンセラー的なプラケーターに言える。

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→完璧主義関連のメインページへ・アダルトチルドレンは現在は「機能不全家族で育った子供」というような意味で使われている。この6つはタイプ、役割、性格などと言われるが、細分化すればもっとあるだろうし、一つに留まらないとも言われている。ま...

 

そういった意味でも、HSPの抱える悩みのある程度は、それ以外の人間にも他人事ではない。

自分の特性、周囲への適応、自分の癖や弱さをどう扱うか。恐らく全ての人間が、自分なりの妥協点を手探りで探さなければならない。

 

・ADHDは本来子供に見られる症状だった。「大人でADHD」は確かに存在するが、通常成長とともに目立たなくなる。

ADHDの薬を売りたい製薬会社の病気喧伝の疑いも存在する。ADHDの診断基準が下がったこともこの噂が信憑性を増す追い風となった。

 

・また、エレイン・アーロンも述べていた話だが、HSPと別の症状との誤解、あるいは併発しているのにHSPに目が行き、他に目が行かないことは危惧しなければならない。

ただ、この話にしても別の問題、別の症状だとして、その上で「関連している」こともある。HSPが「病前性格a)(特定の症状になりやすい性格。例えばメランコリー型うつ病は真面目、責任感や義務感が強い性格がなりやすいなど)」のように、非常に大きく影響を与えるだろう。

 

どの道、症状としてピンポイントな見方とは別に、「自分」という単位での全体的な見方もした方がいいかもしれない。

脚注

脚注
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