サイコパスと扁桃体

サイコパスの扁桃体

・扁桃体は脳内の一つ。感情の処理に重要。他に危機察知、仲間の認識。

・自身もサイコパスだと判明した科学者ジェームズ・ファロンの「サイコパスになる要素(三脚スツール)」の1つに、脳機能の異常がある。扁桃体を始めとした脳の一部の機能低下。

サイコパスになる要素 ジェームズ・ファロンの三脚スツール
サイコパス特性を持つ者自体は多い。遺伝的な要因、脳的な要因も疑われている。 非犯罪的サイコパス、成功したサイコパス、向社会的サイコパスなどにカテゴライズされる者たちがいる。要は社会とある程度親和性があるサイコパス特性を持つ者。 ...

・「感情の欠如」と言われることもある。ポジティブな感情もそうだが、恐怖、不安なども欠如する。

・あまり知られていないようだが、「英雄的行動」をするサイコパスと見られている人物もそこそこ居たりする。

いち早く災害現場に、私財をなげうってでも駆けつけて支援・救助、など。これらも「恐怖・不安」がないからだ、とされる。

他にも緊張やストレスをほぼ感じないとも言われている。

・ただ、この恐怖を感じないということは大抵の場合は勇敢さとしてではなく、社会性の無さに一役買っている状態。

眼窩前頭皮質は、相手に対する共感を持つことで、衝動的な行動にブレーキをかける。
一方、内側前頭前皮質は良心によるブレーキをかける。

人間は成長するにつれ、このような社会性を司る前頭前皮質と、恐怖や罰を痛みとして受け取る扁桃体のコネクションができてくる。

サイコパスは、恐怖や罰から社会的文脈を学習して、罪や罰の意識を覚えることができない。いわば、良心というブレーキがない脳を持っている。

http://zundam09.hatenablog.jp/entry/20170212/1486872203

サイコパスの扁桃体は不活発

・神経学者のケント・キールが過去二十年にわたって受刑者の脳をMRIで撮影して研究、サイコパスだと判断された者は扁桃体の活動が通常の人よりも弱いと判明。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/020600055/?P=2

・道徳的に問題がある写真をサイコパスと判断された受刑者に見せた場合、道徳的に問題があることは分かるそうだ。つまり「(道徳的に)悪いことかどうか」は分かる。ただしそれを補助する部分は活動が弱い。これは善悪を軽視する傾向に繋がる。

・情動に関わる認知を「熱い認知」、合理的/理性的な認知を「冷たい認知」と呼ぶことがある。サイコパスは熱い認知に関わる脳の機能の活動が低く、それを補うためか冷たい認知に関わる部分は活発な傾向がある。

https://toyokeizai.net/articles/-/60647?page=2

このサイトにサイコパスの脳スキャン画像があるが、脳の前の部分は殆ど黒=不活発。また、図に書いてあるが熱い認知の部分はほぼ黒であり、逆に冷たい認知の部分は活動している。

・サイコパスは扁桃体を始めとした脳の一部の機能障害を他で補うため、通常感情的な部分で処理される善悪は、彼らは冷たい認知を司る部分を使って「考えて」処理しているとされる。

つまり善でも悪でも「気持ち」が湧かないか、湧きづらい。彼/彼女達が合理的である理由だろう。

扁桃体が過活動なら

・一方、逆方向でも問題は出る。「通常の人間は善悪を感情的に処理している」ことについて。
自称正義が「暴力」になり得るのはこのためだろう。特に「程度を弁えるつもりが全く無い正義」に言える。

見方を変えれば、善を為し、悪を糾弾することは「社会において感情的に振る舞える唯一の方法」だと言える。

「やりすぎの正義」は免罪符付きのヒステリーってことだ。合法的に発狂できる。中毒者が出るわけだな。それを行うために他者への理不尽な悪人認定から始める者もいる。

重ねて言うが、この点は「通常の脳の人間」についての話だ。尤も、脳がまともでも精神おかしい奴なんていくらでもいるという事でもある。その内脳の形も変わってくるけど。

もちろん反対に、この「気持ち」により冷淡・残忍なことができないというのが大多数だろうが。
だがこれはこれで度が過ぎれば凶悪犯罪者にカモにされるか、共犯者になるなどにも繋がる。或いは「責められてて可哀想だから」というだけの理由で庇ったりなど。

結局情動的か合理的か、どちらが正解か、どちらで考えるべきかはケースに依ってそれぞれであり、切り替えられなければしょうがないだろう。

・また、扁桃体の過活動も問題を発生させる。

扁桃体注5)は、不安や恐怖などの感情を感じた時に活動することが知られています。過度な不安や恐怖が症状であるうつ病、不安障害やPTSDといった精神疾患においては、扁桃体の活動が過剰であること知られています。

反対に統合失調症や自閉症に認められる感情や対人コミュニケーションの障害が扁桃体の活動の低下と関連していることも知られています。

https://www.jst.go.jp/pr/announce/20100224/index.html

いつもどおり、程度の問題。超えない方がいいラインがあるようだ。

脳の可塑性とサイコパス

・可塑性とは、粘土のように形が変わること。

対義語には弾性が挙げられる。こちらはゴムボールをイメージすればいいか。押しつぶしても、元に戻る。
可塑性はその逆。戻らない。形が変わる。

・脳は可塑性がある。といっても脳の可塑性とは大体の場合「シナプス可塑性」のことを指す。
一種の学習能力だと思えばいい。何かを繰り返し経験すると、それに適応し始める。シナプスが新しい接続を作り出す。

まぁめんどくさい話を放り投げて「使えば鍛えられるし、使わなければ劣化する」という認識でいい。

・今回のサイコパスでは扁桃体の機能が弱いということだった。他の部分とひっくるめて「共感能力がない/低い」とされることもある。
ちなみにミラーニューロン(共感回路)と扁桃体は密接に結びついている。

共感能力と騙されやすさとサイコパス
サイコパスは相手を持ち上げてから「ハシゴを外す」という手を普通の人間より抵抗なくできる。それができる自覚がある場合、心の底から共感し、相手の感情を汲み取って操作し、その後で自分の都合だけで利用するということが可能になる。つまり嘘が上手い。...

・サイコパスに「思いやり」をもたせよう、という研究もあるそうだ。

社会神経科学者のタニア・ジンガーは、その分野の先駆者だ。

人の痛みを感じ、それを和らげてあげたいと思う「思いやり」の気持ちを育てるにはどうすればいいのか。ジンガーらは、さまざまなトレーニングを行って、その効果を比較した。

なかでも優れていたのが、仏教の伝統から生まれた方法だった。被験者に、両親や子どもといった自分の大切な人物を思い浮かべさせ、その人への親愛の情を胸の内で温めてもらう。

そして、その温かい思いを向ける対象を、知人から見知らぬ人々、さらに敵にまで、徐々に範囲を広げていくというものだ。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/020600055/?P=2

これは一部の瞑想する際に思い描くイメージとして古くからあるな。今回は対象の拡大だが、対象の「スライド」なら他でも見かけたことがある。結構使えるのかも知れない。認知療法に近いか?

・2~3日このトレーニングをやった後、辛い思いに苦しむ人々を題材とした動画を見せて脳内回路の観察。結果、トレーニングを受けていないグループよりも比較的強い同情心を抱いたそうだ。

・3日で効果があったという話だが、脳の可塑性は意外と早く起きる(知ってる限り最短で2時間のトレーニングの直後に起きている)が、その分戻るのも早い。定着するには数週間ほど繰り返す必要がある。

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