ダークトライアドとは
・特定の性格を指す言葉。反社会的、他人を操作したがる。
・ナルシシズム、マキャベリズム、サイコパスの3つの性格的傾向があるとされる。
3つあるためTriad(三和音)。論文では Dark Triad からDT、或いはD3と略されることがある。
この3つは全て短期的、搾取的な対人方略(はかりごと)と関連するとされる。人間関係に於いて長く続けることは考えないし、平等や公平でいるつもりもないということ。
・これらは人格/性格の「特性」或いは「傾向」とされている。後述される個別に診断されるようなサイコパスやナルシシズム(自己愛性人格障害)とは違うと現状では見られている。
・ダークトライアドの中でも皆同じではないようだ。一部は神経質さなどがあったりなかったりする。
・論文に依ってはこの3特性は「社会的に嫌われやすい特性」としっかり書いてある。
一言で言えば性格が悪い。アッパー系コミュ障の最上級だと思えばいい。向社会的サイコパスや過敏型の自己愛ならまだしも、ダークトライアドに関しては同情・共感の余地は見当たらない。
ナルシシズム
・特徴は誇大性、自尊心、エゴイズム、共感の欠如。特権意識があるとも。
・一般にナルシストと言えば、自惚れか自分大好き人間のことだが、ここで言うナルシシズムは上記特性を見る限り誇大型の自己愛性人格障害のことだと思われる。
マキャベリズム
・特徴は対人操作、搾取、道徳観に対する冷笑的無視、自己中心、欺瞞。非道徳性とも。
・政治思想家マキャベリの考えから。目的のためには手段を選ばない、権謀術数主義者。
・これは価値観的なものであり、これだけでは病気とはされていない。「対人操作性が強い性格的特徴」のような扱いで、論文もあるし、それを測る尺度もあるが。
・1976年の段階でサイコパス傾向との類似は指摘されている。
・自己中心的な目的のために手段を選ばず、かつ長期的なプランを立てるので、長い目で見れば一番危険かもしれない。
サイコパス
・特徴は継続的な反社会的行動、衝動性、利己主義、無反省。良心の呵責の欠如も。
最大の特徴は共感能力が自然には働かない(意識すればやれる)ことか。
・以前はシリアルキラーなどの性格特性を指すものとして扱われてきたが、現代では研究が進み、その分意味合いが変わってきている。
少なくとも従来どおりの反社会的サイコパスと、そうではない向社会的サイコパスの区別は付けたほうが良いだろう。
・念を押しておくが、ダークトライアドに於いて言われるサイコパスとは「性格的特性」のことである。実際のサイコパスはほぼ先天性のもの。結構数が多く、100人に1人くらいはいると言われている。
実際のサイコパスは脳科学者のジェームズ・ファロンの提唱した「サイコパスの三脚スツール」理論に依れば、遺伝的な理由、脳的な理由、幼少期の虐待の3つが揃わないとサイコパスではない。
遺伝的な理由、脳的な理由だけにするとかなりの数になる。関連する戦士の遺伝子=MAO-A遺伝子は死の危険がある紛争地帯などの地域で生まれ育てば異変が起きる。このためそのような地域で世代を重ねれば遺伝的にそうなる。
後は生まれや体質よりは言動で見るべきだって個人的価値観もあるが。
拠って個人的には脳的、遺伝的にサイコパスだが普通に暮らしている人間(向社会的サイコパス)よりも、今回のダークトライアドのような言動的に反社会的サイコパスの方が危険だと思う。
まぁ、向社会的サイコパスもナチュラルに周りがぎょっとするようなことを言ったりやったりするかも知れんが。
ファロンはサイコパスについて自由意志の重要性を説いており、ダークトライアドは自由意志として積極的にそれを「活かす」方向に向かっている。
・ちなみにジェームズ・ファロン自身が自分の脳のレントゲンを見たらサイコパスの脳をしていた。
後に遺伝的に自分を調べた所、攻撃性、暴力性、低い共感性の遺伝子も持っていたらしい。
加えて1892年に実父と継母を殺害した罪に問われた(後に疑問が残る無罪判決)リジー・アンドリュー・ボーデンは彼の家系の者だったそうな。この事件は有名で、マザーグースの1つとなった。
ジェームズ・ファロン本人は虐待がなかったから(数回に渡る流産の後に産まれたため、慎重に育てられた)自分は反社会的サイコパスにならなかったのだろうとしている。
3つに共通する特徴
・この3つの要素はそれぞれ対立し合う部分がある。例えば衝動性はマキャベリズムは低いが、サイコパスとナルシシズムは高い。
誇張した自己が脅かされる時(例えば見栄を張るための嘘が見破られそうな時)に攻撃的になるのはナルシシズムだけともされている。
・不誠実さ、冷酷さ、攻撃性、衝動性に於いてこの3つは共通するとされる。
・共感性、情動処理、高度な認知機能に纏わる脳の各部位の機能的、構造的な特異性。
脳の可塑性(粘土のように形を変えること)といって、脳は使う部分は発達する。後天的な変化の可能性もある。
・これら共通点があるため、ダークトライアドを要素3つに分けるのではなく、包括的に捉えようとする動きもある。
また同じく共通する点があるため、潜在的に共通した何かがあるのではないか、とも見られている。
・これら3特性は共通してビッグファイブの「協調性」と関連がある。
・また、進化論的な観点からダークトライアドの性格の悪さは利益追求、目的達成のための方略を取るという点で「社会的適応」なのではないか、とする意見もある。
彼らのやり方で得をしてしまう世の中は、確実に「隙」がある、ということになるな。
逆にダークトライアドではない人間は、意図的に(?)社会と適応しすぎないようにしているか、相対関係にある「何か」に対しても志向性を持っている可能性がある。
ダークトライアドはモテる?
・バカジャネーノ
・一応、女性相手にそういう実験が行われたらしい。
イギリスのダラム大学とティーズサイド大学の研究(1)では、ダークトライアドが女性を魅了することを明かしました。
被験者128人の大学生の女性を対象にこんな実験を行っています。
2つの紹介文のうち1つを見せる
1つは、普通の性格の男性。もう1つは、ダークトライアドの男性
2人は同じ顔の男性とし、6点満点で魅力を評価する
紹介文には、ダークトライアドだとはっきり分かるように書いてありました。その結果、同じ顔の男性の紹介文を見せたにも関わらず、ダークトライアドの方が魅力的だと評価されました。
具体的な点数はというと、ダークトライアド魅力は約4点、普通の男性は約3点です。1点以上の差がついたということですね。
https://www.psychological-skils.com/entry/dark-triad-attractive
・写真同じで、違いは普通だとする説明文と、ダークトライアドと説明するものとだけ。で、こうなったそうだ。
・論文著者の考えとしては、この女性たちの判断は「短期間の交際に関しての判断」だとされる。チンピラがモテる的なアレらしい。
・まぁ、これだけ並べて尚そう思うんだったら、もうそれでいいんじゃない。お幸せに。こっちくんな。
・たちの悪い事にリーダーシップというか、実力に関係なく自信がある人間に惹かれる心理は人間にはある。この辺りをくすぐるのかもね。
・ダークトライアド自身は短期的な恋愛関係志向があるとされる。
日本語版Dark Triad Dirty Dozen(DTDD-J)
・今までは3つの要素それぞれでテストしていたらしく、質問数が90を超える事態になっていたそうだ。これを圧縮し、精度も問題ないものにした日本語版。
http://www.f.waseda.jp/oshio.at/research/scales/DTDD-J.pdfから。
項目は以下。
1.私には他の人を操っても自分の思い通りにするところがある
2.私は,あまり自分のあやまちを認めることがない
3.私は,他の人から立派な人物だと思われたいほうだ
4.私には他の人をだましたり嘘をついても自分の思い通りにするところがある
5.私は,自分の行動の善悪にはあまり関心がない
6.私は,他の人から注目してほしいと思いがちだ
7.私には他の人にお世辞を言っても自分の思い通りにするところがある
8.私は,どちらかというと冷淡で人の気持ちを気にしない
9.私は,高い身分や名声を手に入れたいと思いがちだ
10.私には自分の目的のために他の人を利用するところがある
11.私は,どちらかというと疑い深くひねくれた人間である
12.私は,他の人からの特別な好意を期待しがちだ
これを「全く当てはまらない」が1、「非常に当てはまる」が5の5段階評価で採点する。
リンク先に何がどの要素に加点されるのかは書いてある。ただ、何点以上だったらダークトライアド、という基準はここにはないようだ。
・毎回思うんだが、該当してても自己採点以外で素直に答える奴いるのかこういうの。
メモ
・ネットスラングに於いてはDTは別の意味になるため、やめたほうが良いと思われる。みうらじゅんと伊集院光が流行らせようとしたとかなんとか。
・ダークトライアド+サディズムでダークテトラッド。つまり、もっと酷いのがいる。
インターネットトロール(日本で言う『ネット荒らし』)はこの傾向があるとされる。つまり、割と身近にいるかも知れない。