やり抜く力とGRITについて


・例えば1時間勉強すると決めたら、1時間勉強できれば集中したと呼べるだろう。

この時使っているのは集中力か、と言えばそうでもないのではないか。欲求や余計な思いつきに脱線せずに、決めた進路を取り続け、自分を動かし続けるのは自制心ではないのか。

・集中力がない、欲しいという声はよく聞くが、決めたことをやり抜く力と、集中力と、どちらなのだろうか。

この2つ、まるで違う。集中力というとヒューマンエラー防止の確認作業とか、アスリートのメンタルとか、話がそっちに行きやすい。

簡単に言うと、「1つに集中する」ことと「集中力」は違う。前者は目的達成のための実行能力とそのためのマインドセットであり、後者は認知能力だ。

・大抵の人間は、集中力が欲しいのは「何か」をやり遂げたいからだろう。それは何かに気を取られてミスするようなことなく仕事をすることかもしれないし、途中でスマホをいじりださないで決めたことを終わらせることかもしれない。この場合、「集中力」を求めるのは遠回りで、ストレートに「やり抜く力」を求めるべきかもしれない。

・短期的に、つまりこれからやるタスクに対して「ここまでやる」と目標を設定しているか、時間が来るまで続けると思っているか。「やり抜いた」とフィードバックできるのは前者だろう。別に後者も悪くないとは言っておく。

GRIT

・GRITについて。以前にもやったが、TEDで紹介されてから広まったのかな、日本語でやり抜く力と訳されるGRITという概念がある。

  • Guts 度胸
  • Resilience 復元力
  • Initiative 自発性
  • Tenacity 粘り強さ

の頭文字を取ってGRIT。

ともかくこの4つは自身でコントロール可能なものだとされている。

そしてこの中に「集中力」はない。しかしGRITのある者は「1つに集中する力がある」とは言われる。ここでの集中は「専念する」という意味に近く、つまりは1つに集中することと、集中力とは違う。

私が言った自制心は、ここでは粘り強さに入る。これは何があってもそれをやり遂げる能力を指している。必要なのは集中力じゃなくて自制心とか意志力と呼ばれる「対象に注意を向け続ける力」となる。

GRITの場合は、「動機」を強く持ち、維持することによって自然な形でその状態を作る。

・GRITが面白いのは、計画通りにうまく行かないことが前提として織り込まれていることだ。だから「復元力」という概念が要素としてある。うまく行かない時に柔軟に道を変える、速やかに立て直すというアスリートのメンタルのような部分。

このためには大目標を見据えていなくてはならない。反対に目の前のことに集中する、というのは一見結構なのだが、失敗した時に非常に弱い。それが全てとなってしまうから、それがダメなら全部ダメってことになる。

GRITは前提自体がかなり長期的な視野となっている。目の前のことに全力を注ぐ、というのとは少し温度差があると言えるだろう。短距離走じゃなくて長距離走のスタイル。意識するのはタイムやスコアじゃなくて完走。

「動機」の重要性

・この4つは動機の持続性を作る。裏を返せば、やり遂げないことが確定した時ってのは、動機を失った時だ。
やる意味ない。やる必要ない。やりたくない。やらなくて良いんじゃないかな。これはやりたかったことと違う。やらなくてもなんとかなるかもしれない。元から無理だったかもしれない。別の目標探そうかな。etc。実際そっちで正解の場面もあるだろうけれど。

動機は行動の核であり、発生源であり、そして寿命だ。たとえその行動が順調だったとしても「思ってたのとなんか違う」ことは、やる気を削ぐ要素足り得るのはこのためだ。期待通りじゃないという意味で動機が損なわれる。

逆を言えば、動機がゾンビめいていれば、その行動はやり遂げられる。

コンフォートゾーン ストレッチゾーン

・GRITを育てるには、というのもいくつかあるが、大体4つの要素を踏襲している。
例えば自分で目標を持つとしているが、一方でそれは後から変えてもいいという柔軟性が見えたり。これは復元力、自発性あたりにかかるだろう。
かと思えば「区切りの良いところまでは続けること」と粘り強さの要素が、「何かしら今よりもハードな目標を立てて努力し続ける」という大きな範囲で「度胸」の要素はあったり。

・ハードな努力について。能力という分野においてコンフォートゾーンという概念が有る。
楽にできる、苦もなくできる、そのような範囲のアウトプット。例えばPCやスマホで知りたいことを検索するのはコンフォートゾーンだと言える。
逆に同じ行為でも、生まれてはじめてPCのキーボードに触ったとか、電源の入れ方がわからないとかそんな人がやるなら、これはストレッチゾーン(背伸びしないとできない)となる。

コンフォートかストレッチかは個人の能力に帰属する。重要なのが、コンフォートゾーンにあるスキルはほぼ成長しないということだ。
当人の中では「完成」しているから、伸びない。何万回やったところでせいぜいが慣れるだけで、技能的な意味での上達はしない。

一方でGRITは成長という要素をかなり重視している。「ハードな=ストレッチゾーンの目標を立てる」というのもそうだ。思うにこれの効果は、

  • 自主的な目標設定にこだわることで「自分で立てた目標」への粘り強さを育てる
  • 難易度の高い目標に挑戦することで度胸を育てる
  • 成長という実績、達成という成功体験を得る

このあたりだろう。

・コンフォートゾーンについてはTEDで紹介されてたが、その時の例としてはタイピングがある。私が今やってるキーボードで文字打つことだね。これが慣れてきたら成長が止まると。だが「今よりも早く正確に」と心がければまずスコアは伸びると。

恐らくよく聞く「能力の伸び悩み」は、ただひたすら繰り返すだけの努力でストレッチゾーンだったのが、それを習得しコンフォートゾーンとなったからではないか。
それより先は目標を立てた努力が必要なのに、まだ「ただひたすら繰り返す努力」を続けているからではないか。次の段階へ行きそこねた状態。

・要点は、「自分からストレッチゾーンに入る」という自主性だ。
いちいち試練を待っていては、部分最適化となってアンバランスになるか、あるいは何も起きずに平和ボケして鈍るかするだろう。なりたい自分とは程遠い。というかそのために何もしていない。

・どうも挫折するケースは、目標自体をまともに立てていないんじゃないかという疑いも有る。
夢に向かって努力する、というのは一見ご立派だが、その実行動内容がかなり不明瞭だ。何をどう努力するのか、という点ではぼやけている。

最悪「これで良い気がする」止まりの行動かもしれない。抽象的な青写真は、具体的な目標に落とし込む必要があるだろう。

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