・自信とか、自尊心とか、自己評価とか。
たいてい消極的だと自認する者が、「これがあれば積極的になれるのに」と思うモノ。
時にこれは気持ちの問題だとして、自信だけを持とうと「思い込み」を初めたり。
願いが叶ったとしたら、願い「だけ」が叶ったとしたら、どうなるか。
肯定的な方向に認知を傾かせる精神的活動
・存在すると言われている。良かったね。やったね。
ポジティブ・イリュージョンと言う。おめでたい方向への認知の歪み。
3つの領域で成り立つとされるa)【https://imidas.jp/genre/detail/L-104-0093.html】。
1:自己を過大に肯定的に知覚する
2:自己の将来を非現実的なほど楽観的に想像する
3:外界に対する自己コントロール力を過剰に高く評価する
まぁこの時点で嫌な予感が超する。
数値化が難しい“コミュニケーション能力”などでは、特に自惚れ具合が強いらしい。否定的な要素が認識しづらいからだろう。
・日本においては何かしら目立つ能力と言うよりも「真面目」「誠実」などの要素に対してこれが働きやすいとされる。結果「自分は真面目で誠実なのに報われていない」と思いやすいのだとかb)【https://diamond.jp/articles/-/150825?page=2】。
これは一部の人間がかなり気楽に他人に「ずるい」と言う理由でもあるだろう。
・この心理は過敏型の自己愛の特徴である、「潜在的特権意識とそれによる傷つき」に似ている。
周りの人の態度を見て、自分への配慮が足りないと感じることがある。
周りの人に対して「もっと自分の気持を考えて欲しい」と思う時がある。
周囲の人がもっと私の能力を認めてくれたらいいのにと思う。
他の人が自分に対して丁寧な態度ではないので、腹が立つことがある。
周りの人に対して「もっと自分の発言を尊重して欲しい」と思うことがある。
やぁまぁ、誰だってたまにはこう思う時はあるだろうけどね。頻度と強さが問題だね。
実際ポジティブイリュージョンの1と3の領域は誇大型の自己愛を彷彿とさせるのに十分だろう。
・なお、抑うつ者は逆方向に認知を歪める傾向があるとされる。
ポジティブ・イリュージョンのメリット
・精神的健康に繋がるという研究報告はあるc)【https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep1953/54/3/54_361/_pdf/-char/ja】。
大学生活4年間を追跡した研究では、初めは効果があった。
が、時を経て減少し、最終的には適応的とは言えなかったらしい。
このような「短期的に効果あり、長期的に逆効果」という報告が今回は多いようだ。
・小学生が対象の、ポジティブイリュージョンを持つ者の仲間との社会的関係では、仲間関係に対してポジティブな結果を出した。
が、前提条件がある。効果があったのは元々ストレスを感じやすい子だけ。
・両親の離婚などに対しての子供本人のポジティブ・イリュージョンは、攻撃的な行動やストレス反応などを減少させている。
・どうも「痛み止め」のような効果しかないように見える。その場しのぎと言うか。それだけに頼ると後で嫌われ者になっている。後述。
ポジティブになれるバイアス
・「認知を傾かせる/歪ませる」というのは、バイアスをかけるということだ。
元々「認知バイアス」として、自分に都合がいい認識をするバイアスは色々ある。
・自己奉仕バイアス:すっぱい葡萄と甘いレモン。
いい結果なら自分の実力、悪い結果なら人のせいなど。
太鼓持ちとか慰め役が頭の中にいると思えばいい。
・自己高揚バイアス:自分が自信を持っているものについて自惚れるバイアス。
例えば自動車のドライバーは殆どが「自分は平均より運転がうまい」と思っているなど。
・ダニングクルーガー効果:能力が低い者のほうが、高い者より自信を持っている現象。
チャールズ・ダーウィン曰く「無知は知識よりも自信を生み出す」。
・オプティミズム:楽観主義。頭お花畑。言わずもがな。
【前向き】と【楽観的】とは違うと心得るべきだ。
楽観主義は「問題は起こらない/存在しない」と思い込むことに近い。取り組むこととは違う。
また、予期しているものしか目に入らないこと自体を確証バイアスと呼ぶ。これは思い込みを強化する。
・一応言っておくが、これらは全く不要とは言えない。ストレス軽減には役に立っている。
逆にこれらが全く無く、身に降りかかる全てを顔面キャッチしてたら速攻で病むだろう。
これらの傾向がある程度人々に存在していることから、ポジティブ・イリュージョンはおそらく他よりも癖になりやすい。
精神的な安楽を得られるのだ。この世に生きていて、これが全くいらないものはそうはいない。強化される機会は多い。
やりすぎると酷い
・度が過ぎると精神的健康にネガティブな影響を与えるという研究報告がある。
・前述の小学生対象、仲間との社会的関係のポジティブ・イリュージョンでは、「極端すぎるポジティブ・イリュージョン」だった場合に、6ヶ月後に攻撃性の増加と関連があると報告されている。
(そう言えば大人でもポジティブを謳いながら攻撃性が高いのが結構いるな)
ここの「攻撃性」とは、
腹を立てやすい
そうなると手を出したり叫んだり怒鳴ったりしやすい
友達に受け入れられていないと思い込む傾向
気に入った人だけを相手にしてそれ以外を孤立させようとする
などを教師に依頼して4段階評価してもらったもののようだ。やっぱり大人でもいるな。
・ちなみに攻撃的、かつポジティブ・イリュージョンの傾向が強い(これもう自己愛じゃないのか)子供と、同じく攻撃的で、現実的なモノの見方をする子供の人間関係についての報告がある。
30ヶ月後には、ポジティブ・イリュージョン傾向が強い子供のほうが、現実的な味方をする子供よりも仲間に嫌われていたそうだ。
・元から攻撃性の高い子供の場合、ポジティブ・イリュージョンの影響は「攻撃行動の促進が見られた」となっている。
元々攻撃性の低い/中程度の子供の場合、これは見られなかった。
要するに元からクズいのがポジティブになるともっとクズくなる。
大人でもこういうのいるが、こういうのに限って自己啓発とか大好きなわけで、最悪の組み合わせかもしれない。
・裏を返せば、ネガティブなイメージはその者の“社会性”に一役買っている可能性が高い。ぶっちゃけてとりあえず大人しければ事件を起こす側ではなくなるからな。
もちろんこちらが強すぎたら、今度は自分のためでもなんにもできなくなる。
ポジとネガといった認知はアクセルとブレーキのような関係ではないか。
メモ
・やりすぎるわけにはいかないのだが、ポジティブ・イリュージョンが必要な者は自尊心やら自己評価が低い状態(ここでは「状態」であり、性格ではないとしておく)だろう。
自己評価がこうなりやすいタイプは、元々ゼロイチ思考/白黒思考/100点か0点かみたいな完璧主義によく見られる思考パターンを持っていることが多い。
良く言えば、まぁ、頑張りすぎる傾向を元から持っている。
つまり、必要な者ほどやりすぎる傾向があるかもしれない。「100点」を目指して。
“一切不安を感じることがない無敵の精神状態”を夢見て。
・ポジティブイリュージョンの効用が、元からストレス反応が高い児童においてのみ見られるとなっている。
言い方を変えれば、自分に自信のない、消極的な、ネガティブな子供の場合、ポジティブイリュージョンは効果がある。
この「痛み止め」が効いてる間に成功経験を積んだほうがいいのだろう。
痛み止めっていうかアレルギーの薬みたいな感じだが。薬効いてる間に抗体作ろうみたいな。
・少なくとも、「一般的な人間が想像するポジティブ」にはある程度のリスクがある。
自信や自尊心さえあればいいってのは、アクセルとブレーキの話で言えば、「スピード出せば全部解決する」と思ってる運転だ。危なくてしょうがない。