・すぐに出来るなら目標にはならない。それなりの手間と時間がかかる。目標達成には我慢と忍耐は付き物だろう。
途中で心が折れることもあるかも知れない。
グリット=やり遂げる力はIQよりも成功に影響するという。目標達成まで我慢できる人、できない人。待てる人、待てない人の違いはなにか。
ADHDと報酬系
・ADHDと非ADHDに、それぞれ金銭的報酬を獲得するゲームをやらせた実験がある。報酬が高い、低い、無い、の3パターンで。
脳波を測定した所、ADHDは報酬が高いときのみ報酬系が活性化した。非ADHDは報酬にかかわらず全てに於いて報酬系が活性化した。
また、ADHDが薬に依る治療を受けた場合、非ADHDと同じ反応を示した。
どうも報酬系が鈍いらしい。反応するには強い刺激でないといけないようだ。このことはADHDが依存症になりやすいことの説明にもなるとされている。
参照:http://neurophys11.hatenablog.com/entry/2016/07/01/235010
・報酬系は嬉しい時に活性化される脳の一部。
ドーパミンを放出して歓喜の感情を作り上げる。依存性薬物などはこの部分を活性化させる。ドーパミン神経が刺激される物事に対して、人は依存する可能性がある。
・報酬系がADHDと非ADHDに差があるように、同じ非ADHDでも差はあるのではないか。
まぁ要するに個人差あるよねと。報酬への反応度。敏感さと言ったほうがいいか。自分がどのくらいでやる気を出すかは、把握しておきたい所。
・また、愛着障害児は報酬系の機能が低下していることが発見されている。
待てない
ADHDを持っている大学生のグループと持っていない大学生のグループに、fMRIスキャナーの中で簡単な作業をしてもらい、報酬を待っている間、および報酬が与えられた際における線条体の活動を測定しました。
結果として、ADHDのない学生の線条体は、報酬を待っている間に活性化することが明らかになりました。
そのため、報酬を期待することで、その場でやるべき課題への集中の強化につながる可能性があります。
これに対してADHDを持つ学生は、逆のパターンを示しました。報酬を受け取るときのほうが、報酬を待ち望んでいるときよりも、線条体がより強く活動していたのです。
このことから、ADHDがある子どもたちは、すぐに報酬が出ない場合は、集中力の持続が困難であることが示唆されます。
・なんかさっきから現金な印象を受けるな。逆に非ADHDは「楽しみ」を「とっておける」とも言える。
実際節制というか、自己コントロールと言うか、「達成した自分へのご褒美」とか「これをやるまではお預け」とか普通にやるしな。無意識に報酬系を利用してモチベーションを操作していると言える。
・ただ、スモールステップが教育で有効なように、即時フィードバックがあった方が誰だってやる気が出るし、長続きもするだろう。この点も別にADHDに限った話ではないと考えられる。程度の差はあるだろうが。
ドーパミンが出る感情
・報酬系を動かすのはドーパミンなわけだが、どういう時にこれは出るのか。
「がんばるぞ!」 意欲が出ているとき
「うれしいなぁ!」 誉められて気分が爽快のとき
「やった!」 合格して喜んでいるとき
「素晴らしい!」 絵を見て感動しているとき
特に「新しい刺激」、「始めての感動」がとても有効だとされている。ミーハーって大体テンション高いけど、ドーパミンのせいかも知れん。
「生きる意欲を作るホルモン」とも言われているそうな。
報酬と忍耐
・「報酬」というものは「後払い」であり、それを受け取るまでに時間差がある。
自身で決めた目標でも、手が届かないように見えてしまうこともあるだろう。
基本、達成=報酬の受け取りまでの労力と時間差が大きければ大きいほど「絵に描いた餅」となり、「報酬」としての機能は薄れてくる。要するに現実味がなくなってくる。自制心が必要だ。
・自制心のテストとして有名なのがマシュマロテスト。皿にマシュマロのせて、子供を座らせて、「私が戻ってくるまでマシュマロを食べなかったらもう一つマシュマロをあげよう」というもの。
未来の報酬に期待して、「今」、我慢ができるか、という話だね。
・それの大人版として、デューク大学で行われた研究がある。
今すぐ5ドルもらうか、一週間後に10ドルもらうか。
まぁ大人でも、我慢ができない人がいるわけで。結構別れたらしい。尤も我慢する必要性も特にないといえばないのだが。a)(余談だが、善良な人間が不慮の事故に巻き込まれたという話を聞かせた後にこのようなテストをやると、「すぐにもらう」を選ぶ傾向が高まったという別の話がある。未来の存在を信じられるかどうかも選択に関わると思われ、マシュマロテスト自体が「自制心のテスト」として機能しているのかどうかちょっと疑わしい。ちなみに悪人が事故に巻き込まれたという話の場合変化はなかった。)
・迷わず「一週間後に10ドルを」と答えた人間たちには「時間を気にしない」という特徴があった。
そこに至るまでの忍耐を考えず、最終的に手に入れる報酬だけを意識した、とされる。
これは忍耐による苦労を無視した決定を下した、とも言える。見方によれば軽率でもある。実際「金額だけ比べて経験則で選んだ」と見られている。無視できるのはメンタルタフネスなのか、考えなしなのかよくわからない。
・反対に「今すぐ5ドルを」とした者たちはどう考えたのか。
「バランスよく考えた」らしい。時間と金額の相関などを、データを分析しながら。
結果裏目に出てるわけだが。
・一見すると、納得いかない結果だ。アホが得して考えた奴が損したように見える。ただ、「目標」にフォーカスを当てる、という違いと考えたらどうだろうか。
片や即効で手に入れると決めた。片や手に入れるべきかどうか最後まで悩んでいた。
ドーパミンが「意欲」になるって話はさっきしたが、「選択=決断」するのにも意欲は必要ではないだろうか。
5ドルを選んだ組は、10ドルを「選べなかった」ようにも思える。一週間待つ意欲が湧かなかったのではないか。
・「決断疲れ」のようにも見える。10ドルを選んだ組とお題は同じなのに、必要以上に悩み、疲れ果て、無難なものを選んだかのような。
この問題、考える余地なんて実際には殆ど無い。金額の比較ならすぐ分かる。金は多い方がいい。本質的には「10ドルのために一週間待てるかどうか」しか問われていない。ぶっちゃけ「やるかやらないか」とも言える。
・なんというか、考えれば正しい道は分かるかも知れない。ただ、考えすぎた結果それを「選べなくなる」こともあるのかも知れない。
どこか間違ってはいないか、なにか損はしていないか、私達はその辺りを探しがちだが、もっと直接的に「目標」を気にするべきなのかも知れない。
脚注
本文へ戻るa | (余談だが、善良な人間が不慮の事故に巻き込まれたという話を聞かせた後にこのようなテストをやると、「すぐにもらう」を選ぶ傾向が高まったという別の話がある。未来の存在を信じられるかどうかも選択に関わると思われ、マシュマロテスト自体が「自制心のテスト」として機能しているのかどうかちょっと疑わしい。ちなみに悪人が事故に巻き込まれたという話の場合変化はなかった。) |
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