個人固有の作業テンポ
・簡単に言ってしまえば「自分のペース」。精神作業や動作に於いてちょうどよいと感じる速さ。
各種領域がある。精神作業とは知覚や思考など。歩く速さと話す速さが共通で早いとも限らず、どちらかが遅くてもう片方が早いなど。
「自然体」のスピードであり、それより上でも下でも無理ってわけではない。
・12、3歳で成熟し、以降安定するとされる。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/42/3/42_3_144/_article/-char/ja/
「極めて恒常度が高い」とされている。あまり変わることはないよということ。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/22/1/22_1_12/_pdf
男女差は認められない。
・遺伝的な要因もあるが、地域を初めとした生活基盤が精神テンポの形成に関わっているとされる。土地柄とか、県民性とかが関わっているということ。
都会の人は話し方と歩き方が早く、地方の人はそれが遅い、という話がある。この論文でも、「集落」の規模が大きいほど速いテンポに、小さいほど遅いテンポになる傾向が認められている。
秋田の大学生が上京しても、県内の中高生と精神テンポが同じままだった。環境の影響はかなり大きいと見ていいだろう。 https://core.ac.uk/download/pdf/144565278.pdf
変動する精神テンポ
・比較的新しい研究では、精神テンポは気分や環境で変動しうると推察されている。
ベースのようなものはあるだろうが、今はもっと早い方がいい/遅いほうがいいという気分の要素もあるということ。
https://ci.nii.ac.jp/naid/110004500192
・そのテンポの快不快は、自分の脈拍との関連がある。
快テンポは安静時脈拍-40%テンポ,不快だと思うテンポは250bpmと回答するものが多かった。
この時脈拍数、平均血圧、呼吸数も変化している。
これはそのまま、お気に入りの音楽や作業でも「今はそういう気分じゃない」という時がある説明にもなる。自分のテンポが変わっているからと。
コンディション次第では、自分自身の精神テンポが不快に感じることもあるかもしれない。ワーカホリックとか、即時フィードバック中毒とか。
自分の精神テンポを知る方法とその誘導について
・身もふたもない事を言えば、自分のテンポより遅いとのんびりだと感じ、自分より早いとせっかちだと感じることになる。快不快とは別だけどね。
相対的な話で、自分が遅いと感じる対象より自分のテンポは早い。自分が速いと感じる対象より自分のテンポは遅い。
単純に、対象を早いと感じるか遅いと感じるかは「自分のテンポと比べている」ということ。
相対的にならそうやってすぐに知ることができる。いつも見ている物が今はどう見えるかで。秒針だとか。
・音楽による誘導効果もあるが、単純に作業用BGMとしてBPM高い曲を聞けばいい、というのは通じないだろう。前述の通り差がありすぎると不快感が先走る。
「波長」が違うものをぶつけると人は心理的にかなり抵抗感がある。イライラしてたり元からせっかちな性格をしている人は、落ち着いた曲は大抵嫌がるものだ。「温度差」といえば伝わるだろうか。
・カウンセリングやらコーチング方面の話で、ペーシングという概念がある。まずは対象とペースを合わせ、それにより受け入れやすくするというもの。今回の話も同様で、まずは「現状のテンポ」に近いものから初め、徐々に目当てのテンポに変化させて行く方が有効だろう。