デイヴィッド・リースマンの社会的性格分類

デイヴィッド・リースマンの社会的性格分類

・完璧主義は自己志向型、社会規定型、他者志向型に分けられる。恐らくはこの分け方のモデル。

デイヴィッド・リースマン(1909-2002)はアメリカの社会学者。精神分析学にも通じていたようだ。父親はドイツ系ユダヤ人。

ちなみに弁護士をやってたこともあるし、大学で教鞭をとっていたこともある。

加えて精神分析学を教わった相手がエーリヒ・ゼーリヒマン・フロム(同じく社会性格分類を行っている)とハリー・スタック・サリヴァンらとされている。

社会性格分類について

・一種のステレオタイプ。同一の集団、社会層に属する者たちが共通して示す性格。
カテゴリは多岐にわたり、その数だけの分類が可能ではある。例えば国民性、例えば年齢、例えば性別、例えばブルジョアと労働者。

・現代では表立ってこれらの区別というのはしない。ほぼ「差別/偏見」に当たるため。

だが、実際に「カテゴリ」に依っての社会性格の差ははっきりとあるだろう。年金暮らしの老人と大学生とでは、社会性格は同じではない。

加えて言えば、若者が言う「老害」と、老人が言う「最近の若い者は」の若い者ってのもイメージが一定だろう。

「最近の若い者は」って言葉の歴史が笑うほど古く、

・5000年前のエジプトの遺跡からそのような象形文字が見つかった

・紀元前1680年頃のヒッタイト王国の粘土板にも「最近の若者は」

・プラトンが「最近の若者は目上の者を尊敬せず、親に反抗、法律は無視、妄想にふけって(以下略)」

とまぁ対して変わらない。

これは裏を返せば、老人を代表とした若者がそう見える奴ら、若者にそのような対応をされる奴/モノ、これらもまた大して変わっていないと考えられる。はいブーメラン。

・一方、同じ階層でもタイプが違うこともはっきりとあるため、「自己認識している立ち位置」、あるいは「自己設定している視点」の影響が大きいと考える。

「社会」の階層、或いはカテゴリの分類/所属が元ではあるだろうが、やはり個人差はあるだろう。

総じて現代では、自己認識する社会的な「立ち位置」と経済的な「環境」による部分が大きいだろう。そしてそれらは「性格」に間違いなく影響を及ぼす、と。

結局の所、自分をどの様に認識するか、周りにどう扱われるか、その果てだと思う。これが顕著なのは幼少期だが、成人後もずっと続くのだろう。

・3つのタイプはそれぞれと対比の関係にある。

内部志向型

・完璧主義の分類の自己志向型のモデルだと思われる。

・伝統や慣習、一般的風潮や他人の意向にも強くは拘束されず、自身の信念や良心に従い、それを行動の方向とする。

・個性的であるが、悪く言えば我が強く、独善や頑固、他人への感受性の欠如や不寛容、利害的な執着なども現れる。

伝統志向型

・完璧主義の分類の社会規定型のモデルだと思われる。

・他の2つに対して、歴史的には先立つものとされる。

・所属している社会の伝統的な行動様式、要するに礼儀、マナー、エチケット、etcに忠実に従うことを自身の行動基準とする。

・家族、血縁への依存度が高い。物事の価値がかなり固定的な社会ではこうなりやすい。

・既存の物事に従うには向いているが、反面新しい物事にはうまく適応できない。

他人志向型

・消去法で考えれば完璧主義の分類の他者志向型のモデルだと思われる。…のだが、これだけ「完璧主義の他者志向型」とは一見、だいぶ違う。

・「自分の理想像が他人」の状態。周囲の他人、マスメディアに登場する同年代の他人を行動の指針とする。

・自分の信念よりも、他人とうまくやっていく、他人に受けいられることを求めるとされる。このため自分の年代の流行などに気を配っており、それに自分を合わようとする。

・心理的機能が周囲に敏感な「レーダー」にたとえられる状態になっているとされる。

・個人的に思うのだが、特に中高生くらいか? その年代は「年代規模」で明らかにこのような「空気」があるな。

創作においては、中高生が主人公でさらに気質的には内向的な場合(外向的な主人公を見たことないし見たくもないが)、このような文面を見かけることが多い。

「周りに合わせるために、興味のない流行に詳しくなって(以下略)」

これがマンネリもせずに未だに一種お約束として通じる辺り、「多くが思っていること」なのかもしれない。

サメ映画でジョックが食われるようなもんだろう。お約束。

・どちらかと言えば過敏型の自己愛の方が似ているように見える。内面が「レーダー」になってりゃそりゃ過敏にはなるな。

 

・「他者志向型の完璧主義」とは一見だいぶ違うのだが、内面的にはほぼ同じだと思われる。

代表的な著作『孤独な群衆』(1950年)において、現代社会に支配的な社会的性格を「他人指向型」と規定し、

“工業化に成功し、豊かさと利便さに浸った都市生活を享受するアメリカ人の想像力の枯渇と砂をかむようなむなしさ、そして資源と時間の浪費、偽りの人格化、欲求不満と阻害といった特徴を持つ”

と表現した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%B3

・欲求不満と「空っぽの自分」。

・リースマンは、歴史が流れるに連れ、(西洋社会においてだが)伝統志向型から内部志向型へ、さらにそこから他者志向型へと推移していくと考えた。

実際にどうかと言えば、どうだろうな。表面上は確かにそうだが、振る舞いレベルでの「最低限の社会性」の基準として流行り廃りはわかりやすいだろうし。

特に「偽りの人格化」についてだが、実際現代では主に学生生活に於いて、パーソナリティではなく何らかの「キャラクター」を演じることで適応しているとする指摘もある。
もはや「個性」という言葉がキャラクターを指すことすら珍しくない。

むしろそこら変適当に模倣して、自分のことやりたいって願望持ってる人のほうが多いように見えるが。

その分、現状の具体的な問題が金と時間に集中しているようにも。まぁどっちも欲しいね。誰だって。

完璧主義の分類について

・ケント大学、ヨアヒム・ストーバー教授が率いた研究チームが行った完璧主義の調査で、社会的行動とユーモアのセンスの違いの調査がある。

大学生を相手取った「どのようなユーモアを好むのか」という調査。
この調査で完璧主義のタイプとして既に自己志向型、社会規定型、他者志向型に分けられている。結果は、

自己志向型:やや自己中だが他人にも関心があり、親和的なジョークを好む。

社会規定型:自虐的なジョークを好む。劣等感が高く、自尊心は低い傾向。

他者志向型:攻撃的なユーモアを好む。他者、或いは社会規範をないがしろにする傾向。ストーばー教授曰く「完璧主義者の中でも暗黒のタイプ」。

となっている。

この段階でこの3つの分け方はあったようだ。リースマンの社会的性格分類にも類似しているとは言えるだろう。

ここでの他者志向型も「その年代で悪目立ちする奴ら」のテンプレとしても通ると見ることもできる。要はクズを演じている可能性は否定されていない。

この調査をサラリーマンでやったら他者志向型がワーカホリックの意識高い系ブラック社員みたいな感じになるかどうか見たい。だとしたら彼らの問題は「空っぽ」なことだろう。

・2008年に日本で執筆された論文でも同様の分類が為されており、結構前からだとは思われるが、誰がリースマンと同じような分類を完璧主義に行ったのかは、こちらでは今の所不明。

・「そっくりだから当てはめてみた」とかそんな感じだったのかもしれない。

 

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